動画全盛の今だが、「聞くだけコンテンツ」も利用者が増え、盛り上がりを見せている。"ながら聞き"可能なゆるいものからタメになる教養系まで、ゼッタイ聴くべき優良コンテンツをご紹介!
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■国内リスナー数は1000万人以上
ネット上の音声配信コンテンツが活況を呈している。とりわけ盛り上がっているのがポッドキャスト。音声広告会社のオトナルが2020年末に朝日新聞社と共同で行なった調査によると、国内の推計リスナー数は約1123万人に達するという。
昨今では「Spotify」や「Amazon」といった巨大プラットフォーマーがオリジナル番組を配信し始めたほか、TBSラジオやニッポン放送といったラジオ局も既存の番組から派生したポッドキャストを制作している。
また、独立系の音声配信プラットフォームも好調だ。その雄である「Voicy(ボイシー)」は20年末から3ヵ月で月間リスナー数が2.5倍の250万人に。快進撃を続けている。
なぜ今、音声コンテンツが人気なのか。その理由について、Voicy代表の緒方憲太郎氏はこう分析する。
「やはり"ながら聞き"できるのが大きい。多忙な現代人が目を留めて情報を得る時間には限界があります。仕事や家事をしながら楽しみたいという需要が増えているのでは。
また、ワイヤレスイヤホンの普及もその一因です。外部音取り込みモードとノイズキャンセリングモードを簡単に切り替えられる『AirPods(エアーポッズ)』のような製品を常につけている人も少なくなく、そこで音楽以外のコンテンツにも手が伸びたのでしょう」
こうした背景から、音声コンテンツは広告媒体としての期待も集まっている。オトナル代表の八木太亮氏はこう話す。
「日本のインターネット音声コンテンツの広告市場は25年に420億円に至ると予想されており、その成長率は21年の50億円から比較すると4年間で8倍。ちなみに先行するアメリカでは、20年に媒体社が得た音声広告収入の総計が3300億円を超えています。日本でもマネタイズモデルが整備されれば、音声コンテンツはさらなる飛躍を遂げるでしょう」
■安楽死を決めた女性にインタビューする番組
ここからは、今年必聴の人気番組をいくつか紹介する。
まず、押しも押されもせぬ人気番組といえば『歴史を面白く学ぶCOTEN RADIO』だろう。歴史を愛するスピーカーふたりの話を歴史素人が聞く構成で、時代背景や社会情勢をわかりやすく解説しながら現代人の抱える悩みまでをも読み解いていく。
1エピソードあたり20~40分程度で知識と気づきの両方を得られるところが人気の一因で、19年にスタートしたジャパンポッドキャストアワード第1回で大賞に輝いている。
「Spotify」が手がけるオリジナル番組もクオリティが高くオススメだ。なかでもイチ押しは、音楽や映画などのポップカルチャーを扱う『三原勇希×田中宗一郎 POP LIFE:The Podcast』。世代の異なるふたりのナビゲーターと、多彩なゲストの視点がぶつかり合うのが魅力だ。
このほか、テレビ東京の人気番組からスピンオフした『ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision』も見逃せない。右翼団体、特殊清掃員、パパラッチなどと飯を共にするドキュメンタリーで、食事を通じて彼らの生きざまに迫る。幼い頃から神経の難病を患い、1ヵ月後にスイスで安楽死を遂げる女性に迫る「安楽死飯」回は、生について問いを突きつけてくる必聴回だ。
ポッドキャスト以外の番組も紹介しよう。まずは「Voicy」の『探偵小沢の探偵ラジオ』。浮気調査を得意とする現役の私立探偵が、「探偵という職業を通じて見てきた世間の裏側」を話す。ディズニーランドでの浮気調査の苦労を語る回などが人気だ。
同じく、独自の配信プラットフォームである「Radiotalk」からは『そんなことないっしょ』を紹介したい。パーソナリティはいたって普通の50代男性で、日常の出来事を語るゆるい番組。
と、ここまで聞いても魅力が伝わりづらいが、10年以上配信を続けるパーソナリティの人柄が徐々にファンを獲得し、ライブ配信では毎回異様な盛り上がりを見せる。リスナーから贈られたギフトは月200万円を突破することもあり、熱量の高いコミュニティを醸成している有数の番組である。
★今後の注目ポイント
リスナー増加を受け、広告市場も拡大中。企業が制作するハイクオリティな独自番組はさらに増えるはず。