最近の自動販売機には、これまであまり見かけなかった変わり種の商品が数多く並んでいる。特に気温の下がるこの季節は、王道のコーンスープ以外にも真新しい商品が並び、「あたたか~い」のコーナーがにぎやかに。なぜ、この数年スープ系ドリンクが続々誕生しているのか? 冬のホット缶ドリンクの謎を調査した。

* * *

■小腹を満たすホットドリンクが人気

10年ほど前、自販機のホットコーナーに並ぶのは、お茶やコーヒー、紅茶などが中心で、その他のホット専用商品といえば、コーンポタージュとおしるこぐらいだった。

だが、この数年は、ふかひれスープにカレースープ、ラーメンスープなど、これまでになかった商品が続々リリースされている。なかでも特に話題なのが、今シーズンの新商品「コクと旨味の一風堂とんこつラーメンスープ」だ。

2021-2022シーズン最大のヒット作「コクと旨味の博多一風堂とんこつラーメンスープ」 実はこちらも期限までに納得いく味が完成せず、発売を1年延期した。なくなり次第販売終了 2021-2022シーズン最大のヒット作「コクと旨味の博多一風堂とんこつラーメンスープ」 実はこちらも期限までに納得いく味が完成せず、発売を1年延期した。なくなり次第販売終了

この商品の主な販売場所は駅のホームや構内に設置されたacureブランドの自販機。そこで、この自販機を展開するJR東日本クロスステーションの小室 塁氏に、開発の経緯を聞いた。

「駅構内では主力商品であるお茶、水などの売り上げが午前中は非常に高いものの、午後になると落ち込む特徴があります。一方、スープ飲料は昼過ぎから徐々に売り上げを伸ばし、深夜まで高い数字をキープします。そのため、自販機全体の売り上げを伸ばすためにはスープ系ドリンクが欠かせません。

そこで、こちらから『エキナカの販売機にはこういう需要があるので一緒に作りませんか』とメーカーさんに提案して、共同でオリジナルのスープを開発しています」

そんな流れから誕生したのが、一風堂ラーメンスープ。開発のヒントは「以前にふかひれスープを販売した際の『このスープ、シメのラーメン代わりになるよね』というSNSのコメントだった」(小室氏)そうだ。

発売直後からネットなどでも話題となり、売れ行きも好調というが、その味はどうか。購入者に感想を聞いてみた。

「ひと口目から、豚骨のうま味がガツンときます。販売機で初めて見たときは『マズかったとしても、友人との会話のネタになるから買ってみよう』という感じでしたが、今ではすっかりヘビーユーザーです」(20歳・学生)

「コクがすごい。具は入っていないけど、これだけうま味が強いと、小腹が満たされる」(28歳・会社員)

「カレーな気分 中辛」 おにぎりやパンに合うスープ。スパイスが底にたまっているので飲む前によく振ろう 「カレーな気分 中辛」 おにぎりやパンに合うスープ。スパイスが底にたまっているので飲む前によく振ろう

また、10種のスパイスを使った「カレーな気分 中辛」も今シーズン話題のスープだ。

「キャップを開けたら、普通のカレーの色。スープなのでサラサラしてますが、味はまさにカレー。空腹で家に帰るまで持ちそうにないとき、このスープとコンビニの塩おにぎりでしのげます」(33歳・会社員)

■コカ・コーラ参入で注目の「和のスープ」

焼きあご、昆布、シイタケなど6つの素材からうま味を抽出 焼きあご、昆布、シイタケなど6つの素材からうま味を抽出

ラーメンやカレースープと並び、話題となっているのが「だしドリンク」。大手のコカ・コーラがこの冬から販売を始めて注目が集まるこのジャンル。なかでも人気の商品が、2015年に販売を始めた「うまだし」だ。

実は「うまだし」は、発売開始からしばらくの間は、羽田空港の中にある自販機で試験的に販売されていた、知る人ぞ知る商品。だが今シーズンから、東京、横浜、大阪、福岡に2000台を展開するスキマデパートの販売機にラインナップ。その味を多くの人が知るようになった。

「うま味の塊という感じ。口に入れた瞬間の和のうま味がたまらない。白飯にこのだしをかけてかっ込むと最高です」(24歳・フリーター)

うまだしを売る「スキマデパート」ベンディング事業部の村田翔太氏も驚きの声を隠せない。

「弊社は『いろんなスキマから世の中を面白くする』というのがモットーの会社。だしドリンクは以前からSNSでじわじわと話題になっていたので、面白そうだなということで販売することにしました。

うちの自販機は500ミリリットルのペットボトルが100円と、格安の商品が主力。なので、185gで130円の『うまだし』は明らかな高額商品。にもかかわらず、これほど人気が出るとは思いませんでした」

人気の理由をこう推測する。

「うま味が濃くて満腹感があるのに、1缶たったの2kcal。そんなところが支持されたのでしょうか」

「GO:GOODゴクっ!と旨い和だし」 カツオや昆布、トビウオのエキスを使用しただしスープ。キッコーマンが監修 「GO:GOODゴクっ!と旨い和だし」 カツオや昆布、トビウオのエキスを使用しただしスープ。キッコーマンが監修

一方、注目を集めるきっかけとなったコカ・コーラの「GO:GOODゴクっ!と旨い和だし」を飲んだ人の声はというと......。

「体を動かす仕事の自分には正直、ちょっと薄味だけど、上品な味わいのだしが、疲れた体に染み渡る。見かけたらついつい買ってしまいますね」(30歳・建設業)

■来シーズンもエッジの効いた商品が?

今シーズンはヒット商品が豊作だが、今後はどんなスープ系飲料が新たに登場するのか。

「ラーメンスープのヒットは、会社にとってはいいことですが、反響が大きかった分、次に販売する商品に対する皆さまの期待がいっそう高まったと思います。その期待を超えるためにもさらにアイデアを練らなければなりません。

とはいえ、冬の駅の自販機はスープ系ドリンクが売り上げアップのカギを握るアイテムですから、今後も新たな商品の開発を続けて、コーンスープのような定番が生まれるよう頑張ります」(前出・小室氏)

ラーメンスープのヒットでさらに可能性が広がったスープ系飲料の世界。定番への道のりはなかなか険しいが、来シーズンも「それを出すか!」というような意外性のある商品が登場するに違いない!