こんにちは、旅人マリーシャです。
みなさん、コーカサス3国のひとつ、アゼルバイジャンという国を知っていますか?
油田開発によるオイルマネーで都市開発が進み、"第2のドバイ"とも呼ばれる期待大の国ですが、特に首都のバクーで見た建築「ヘイダル・アリエフ・センター(ザハ・ハディド設計)」は、未来そのもの。私が世界で見てきた建築の中でも最も先進的でSF感が強く、アゼルバイジャンで一番「来て良かった!」と思わせる印象的なものでした。
そんな国で食べた唯一の料理は、このクールな近未来感に反してとっても素朴なもの。さて、今回の「旅人でも簡単に作れるおうちで世界飯」第28回は、アゼルバイジャンの料理「ドルマ」に挑戦したいと思います!
私がアゼルバイジャンのバクーに着いてまず感動したのは、想像以上に整備の整った空港。旅人が必須とするフリーWi-Fiが飛んでいて、待合フロアには十分に仮眠の取れるソファとコンセントが完備。フライトで疲れた体とガジェット類をゆっくり充電してから、この町での旅を始めることができました。
宿に着くと小声の宿主(パキスタン人)に迎え入れてもらったが、小声なのもそのはず。当時ラマダン中だったため、きっと空腹で極限状態だったのだろう。
彼は厳格なモスリムだったため、煙や水すら口をつけてはいけないと教えてくれた。なまじ「私もちょっとラマダンチャレンジしてるんだ」なんて挨拶をしてしまったもんだから、後には引けない。私は近所のレストランで隠れて夕飯を食べることにした。
困ったのは全く字が読めないこと。メニューには英語の説明もなく、なんとなくわかるのはジャンルと値段程度であった。店員さんを呼び、貧乏旅だけど世界を味わいたい私の希望を伝えてみる。
「アゼルバイジャンらしいものを。高くないやつで......」
すると一言、「ドルマ」と言われた。「ドルマ!」聞いたことがある。というか、私はウズベキスタンでこれを食べたことがあった。
それは葡萄の葉っぱにひき肉や玉ねぎ、お米などが巻かれ葉巻のような形をした小さなロールキャベツ風のもの。少し酸味のある独特な味とスパイスが美味しかったのを覚えている。私はぜひそれをくれと頼んだ。すると、私の目の前に出てきたのは......。
「なにこれ! ピーマンの肉詰めじゃん!」
想像していたものとは違った。挽肉の詰まったピーマンやなすが熱々の湯気をあげている。でも、実はこれもまたドルマの姿だったのである。
ドルマには「詰める」「包む」という意味があり、その姿は地域によってさまざま。日本ではトルコ料理として紹介されていることが多く、ロールキャベツの起源とも言われています。
ほかにも中東諸国、中央アジア、旧ユーゴスラビア圏などで食べられていて、現に私も旅中にウズベキスタン、アゼルバイジャン、ヨルダンなどで「あ、またドルマだ」と、広いエリアで度々見かける定番料理であった。
アゼルバイジャンの人は「包む」のが大好きだそうで、器にするのはピーマンだけではなく、なすやじゃがいも、トマトにズッキーニなどなんでも良い。葉のドルマ、キャベツドルマなどもあるが、今回は私が実際に食べたスリーシスターズドルマ(ピーマン、なす、トマト)を再現したいと思います。それではレッツクック!
<材料> 2人分
・ピーマン、なす、トマト...各2個ずつ
・玉ねぎ...1個
・挽肉...160g
・米...40g
・すりおろしにんにく(チューブOK)...小さじ1
・パセリ(乾燥でも生でもお好きなハーブ類でOK)...小さじ1
・クミンパウダー...小さじ1
・オリーブオイル...大さじ1
・水...300g
・ローリエ...1枚
・コンソメ...1個
・塩胡椒...適量(タネの分と仕上げの分)
<調理>
1.米を洗って水に浸けておく
2.ピーマン、なす、トマトで器を作る(各2個)。ヘタを取り、ピーマンとトマトは中をくり抜き、なすは縦に切れ目を入れる(ヘタの周りやくり抜いた部分はボールに入れ次のタネと混ぜる)
3.ボールに玉ねぎ半分のみじん切り、挽肉、水を切った米、塩胡椒、すりおろしにんにく、パセリ、クミンパウダー、オリーブオイルを入れ粘り気がでるまで混ぜ合わせる
4.2の野菜の器に、3のタネを詰め込む
5.鍋に4と玉ねぎの残り半分、水、ローリエ、コンソメを入れ、蓋をして30分煮込んだら、塩胡椒で味を整えてできあがり!
★YouTubeで実際の料理シーンも見てみてね!
<実食>
作り方は簡単でした。ピーマンに詰めるタネはハンバーグの具を作る要領で、あとは鍋で煮込むだけ。見た目は現地で食べたものとほぼ一緒でした。
さっそくナイフを入れてみるとボロッ。ロールキャベツもそうだけど、この手の料理って崩れる率高いよね。巻いたり詰めたりする意味って......。なんてことも思いながら、なるべく野菜の器と中のタネを一緒にして口に運ぶ。
すると舌触りが面白い。お米のつぶつぶ感によって、普通の肉詰めピーマンとは違う食感が生まれている。
「そうそう、そういえばこんな感じだったかも。お米の存在感あるし、お腹満足!」
現地ではパンがセットで提供されるので、お米と合わせて十分な炭水化物で腹持ちが良い。旅人にはありがたい料理でした。アゼルバイジャンの近未来感とは遠い素朴な料理ですが、仕上げに塩胡椒をしっかり振ると味が引き締まり、よりパンチが出ると思いました(これはもう味の濃さの話だね)。
ところで、「ドルマ」はお米も使っているし日本人にも身近な料理だと思うのですが、その割には日本ではなじみがないなぁと。世界共通料理として「ピーマンの肉詰め」も「ドルマ」との呼び名で浸透しても良いのではないかと個人的には思うのですが......、みなさまいかがでしょうか。
●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。2014年より『旅人マリーシャの世界一周紀行』を連載。Twitter【marysha98】 Instagram【marysha9898】 YouTube【https://www.youtube.com/channel/UCe2ihHJ1MXHEZgpdmglzWew】