2018年『マツコの知らない世界』(TBS)の出演を皮切りに、シュウマイ研究家として脚光を浴びるシュウマイ潤氏。

2019年に「オーガニックキッチン」の新シリーズ弁当『東京シュウマイ弁当』や、横浜中華街でのイベント『横浜シュウマイ研究会』を監修。また、2020年には東京ブランド豚・TOKYO Xにグリンピースの代わりに銀杏を使用した、メイドイン東京の会とのコラボシュウマイ『東京焼売』を販売。そして同年、遂に『日本シュウマイ協会』を設立し、昨年の12月、自著『シュウマイの本』を上梓した。

シュウマイをこよなく愛し、シュウマイと共に生きる、シュウマイまみれの男の"野望"に迫る!

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巷では、シュウマイブームが到来しているらしい。

都内では、酒場スタイルのシュウマイ専門店が続々と誕生し、地方では、佐賀県・呼子の「いかしゅうまい」を筆頭に、地元の食材を使うご当地シュウマイが注目の存在に。

さらには業界最大手「崎陽軒」初代社長の出身地、栃木県・鹿沼市がシュウマイの町として脚光を浴びた。昨年9月、JR鹿沼駅前でお披露目された、"どう見てもシュウマイには見えないシウマイ像"がSNS上でも話題となり、駅周辺ではシュウマイを扱う店舗が急速に増加、約50店舗が軒を連ねるにぎわいを見せている。

2020年6月7日には、"シュウマイを愛する人と企業、団体が集える場造り"として『日本シュウマイ協会』なる団体が設立され、昨年12月にはシュウマイの歴史と今を伝える"国内初"の専門書、『シュウマイの本』が出版された。協会の発起人であり、同書の著者でもあるシュウマイ潤は、昨今のシュウマイブームをけん引する存在だ。

彼はフリーランスの編集者でもある。その仕事の傍ら、2015年頃からシュウマイのフィールドワークを開始。町中華、居酒屋、定食屋、精肉店など、シュウマイを扱う店を食べ歩き、地方で目ぼしい商品を見つければ現地に足を運んだ。こうして6年間、「ほぼ毎日食べ続けた」(シュウマイ潤、以下同)というシュウマイは約1000種、約5000個に上る。

さらに、実際に食べたシュウマイをデータベース化し、中華街(本場中国)系、町中華系、居酒屋系、駅弁屋系、肉屋系、デパ地下系など、各商品の特徴に合わせて12のジャンルに分類。関係者の証言などから、各ジャンルの史実を辿り、世代分けも行った。シュウマイ潤によると、既存のシュウマイは「7世代に分かれる」という。

本場・中国の味を引き継ぐ店が中華街に複数あり、そこで提供されるシュウマイを第1世代とした。この世代を象徴するのが、「横浜・中華街にある日本最古の中国料理店『聘珍楼』のシュウマイ」だ。

『聘珍楼』のシュウマイ 『聘珍楼』のシュウマイ

一方、近年急増している"焼売酒場"を筆頭に、カフェ、フレンチ、そば屋といった中華以外の店が提供する「常識に囚われないシュウマイ」を第7世代とし、「東京・渋谷にある『焼売酒場・小川』の元フレンチシェフが作るシュウマイ(羊シュウマイ、鴨シュウマイなど)」がこの世代を代表する存在という。

「第1世代と第7世代、ふたつを食べ比べれば"奥深いシュウマイの魅力"を感じ取ってもらえると思います」

『焼売酒場・小川』の揚げシュウマイ 『焼売酒場・小川』の揚げシュウマイ

『焼売酒場・小川』の串シュウマイ 『焼売酒場・小川』の串シュウマイ

こうした地道な活動が実を結び、2018年5月と昨年10月にはTBS系列の人気番組『マツコの知らない世界』に"シュウマイ伝道師"として出演、『週プレNEWS』でも崎陽軒の野並直文社長と対談を果たすなど、業界内で一目置かれる存在となった――。

崎陽軒のお膝元、神奈川県に生まれ育ち、幼少の頃から同社の看板商品『シウマイ』が日常食だったというシュウマイ潤。曰く、「シュウマイは身体の一部みたいなもの」という。

ところが社会人になり、東京で一人暮らしを始めると「中華屋に入ってもシュウマイがない」、駅の売店を探しても「『シウマイ』がない」、周りの人に話を聞いても「餃子はよく食うけど、シュウマイはあんまり......」と言う。こうした現実に、「自分って、めちゃくちゃ少数派だったんだ!」と思い知らされた。さらに追い打ちとなったのが......。

「知人の編集者に『ぜひ、シュウマイ特集を!』と提案したら、『そりゃあない』って鼻で笑われ、身体の一部を否定されたような気分になりました(苦笑)」

これらの出来事で火が点き、独自に調べてみると、シュウマイ業界には専門店、専門家、専門書の類いがほぼ見当たらず、餃子や唐揚げやコロッケにはある業界団体も存在していなかったことを知る。

「誰もが知る食べ物なのに、ジャンルとしてまったく成立してないじゃないか!と気がついた時、小躍りしたくなるような喜びが湧き上がってきました。シュウマイという"未開拓のジャンル"だからこそ、掘る価値があるぞ!って」

これがその後のフィールドワークや、日本シュウマイ協会設立に至る活動の原点になった。活動開始から7年を経た今、シュウマイを取り巻く環境が激変していると感じている。

「飲食業界では、焼売酒場を中心に、シュウマイをメインとする専門店が急速に増え、現在、全国で約80店舗に達していると推測できます。食品スーパーでは『成城石井』の『自家製 国産豚のジューシー焼売』を筆頭に、オリジナルシュウマイを開発する動きがここ数年で加速しました。

冷食分野でも、『ザ★シュウマイ』(味の素食品)や『五目シュウマイ』(マルハニチロ)など、それだけでご飯をガツガツ食べられる冷凍シュウマイがヒット商品になっています。

つまり、これまでおかずのなかでも"脇役"に甘んじる存在だったシュウマイが、"主役"として扱われようになってきている、ということです」

日本シュウマイ協会の活動目標は、「シンプルにいえば、シュウマイをもっとメジャーにすること」。すでにメジャーな存在なのでは?と問うと、シュウマイ潤は恐縮して、

「いえいえ、まだまだです。『マツコの知らない世界』の収録中、マツコさんは何度もシュウマイを『餃子』と言い間違えましたし、記者さんも、(インタビュー中に)『餃子』と言い間違えましたよ、2回(笑)。この活動を続けていると、結構そういう場面に出くわすんですが、その度に、シュウマイの魅力がまだまだ伝わってないんだなって思うんです」

餃子にはない、シュウマイの魅力とは?

「主役にも脇役にもなれる、"名バイプレイヤー"的な存在感だと思います。あと、豚や鶏以外にも、餡に牛肉や猪肉、鹿肉を使ったシュウマイがあり、えび、イカなど魚介系も豊富にある。醤油、塩、胡椒、ソースなど、つけダレを変えれば、ひと違った味わいを楽しめます。この懐の広さも、餃子にはない魅力のひとつでしょう」

いま、日本シュウマイ協会として一番やりたいのは『シュウマイフェス』だという。

「北海道の『ホッキ貝シュウマイ』、宮城の『牛たんシュウマイ』、紅ズワイガニを贅沢に使った鳥取の『かにとろシュウマイ』、群馬の"具がない"『コロリンシュウマイ』など、全国各地のシュウマイを会場に来た多くの人たちに食べ比べてもらいたいんです。そしたらきっと、シュウマイという料理の底知れぬ力を感じてもらえるはず。コロナが落ち着いたら、ぜひ開催したいと思いますね」

数年後、「自分は餃子派ではなくシュウマイ派」という人が増えているかも知れない。今後の日本シュウマイ協会とシュウマイ潤の活動に注目だ。

★シュウマイ潤がオススメする『今食べておくべきシュウマイ』

551蓬莱のシュウマイ(大阪府)  
豚まん(肉まん)のイメージが強い551だが、シュウマイも絶品。肉のジューシーさと、たっぷりの玉ねぎの甘さによる旨味の相乗効果が素晴らしい。醤油もいいが、ソースで食べるのがオススメ。

呼子萬坊のいかしゅうまい(佐賀県) 
「イカの活き造り」に代表される、九州随一のイカの産地として知られる佐賀県唐津市呼子の名産。第六世代の先駆者であり、全国的な成功事例と言える。イカの旨味と、ふんわりとした食感がクセになる。日本酒との相性抜群。

小洞天のエビシュウマイ(東京都) 
東京を代表するシュウマイ名店。創業から変わらないがっちり食感の肉シュウマイが有名だが、このエビシュウマイを食べずして、小洞天のシュウマイは語れない。切り身とすり身がミルフィーユ状に重なり、エビの甘味、食感、香りが溢れ出す。わさび醤油で食べるのがオススメ。

コロリンシュウマイ(群馬県) 
じゃがいものでんぷんと玉ねぎのすり身や豚脂などを団子状にして蒸しあげた、別名「具なしシュウマイ」。地元桐生の子供たちのおやつの定番で、もっちりとした食感が特徴。ソースと青のりで食べるのがオススメ。

シュウマイ潤 
本名:種藤 潤(たねふじ・じゅん)。1977年 神奈川県生まれ。シュウマイジャーナリスト、研究家、『日本シュウマイ協会』の発起人。2015年頃からシュウマイ研究を開始し、インスタグラム『焼売生活』を中心に情報を発信。オンラインや実イベントとして『シュウマイを食べる会』を開催と活動の場を広げている。詳細は『日本シュウマイ協会』公式サイトにて。
公式Twitter【@tanefuji】 
公式Instagram【@syumai.life】

■『シュウマイの本』 
産業編集センター 1760円(税込み) 
町中華の名物シュウマイ、ご当地シュウマイ、固定観念を打ち破る次世代シュウマイ、冷凍食品の定番シュウマイなど、1000種類のシュウマイを食してきたシュウマイ潤が、至高のシュウマイたちを大公開! 皮、具、からしについてのコラムも充実。