次の日にはもうファンシー系はなかったから、代わりに今はレアな黄色×赤の旧デザインの看板の一枚を。滋賀県にて 次の日にはもうファンシー系はなかったから、代わりに今はレアな黄色×赤の旧デザインの看板の一枚を。滋賀県にて
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、ミスタードーナツの「ファンシードーナツ」について語る。

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たびたびこのコラムで公言してきた"ミスド愛"。以前、最寄りにあった店舗が閉店してから、ミスタードーナツを見かけたら絶対入る、という誓いをこの数年ずっと守ってきました。そして先日ついに、ドーナツの神が私にほほえみました。なんと。ファンシードーナツと呼ばれるレアメニューがわんさかな店舗に遭遇しました。

ファンシーとは、コラボ等の期間限定商品で余った材料を使った、限定中の限定ドーナツ。各店が自由に工夫して作る上、宣伝しないので、出会えるかどうかは完全に運命。ゲーテは言いました。「バラの季節過ぎたる今にして初めて知る、バラのつぼみのなんたるかを」。そんな体験でした。

とりあえず初めて見るドーナツを全部買いましたが、印象に残ったものを紹介します。まずは、「キャラメル&クランチファッション」。レギュラー商品のオールドファッションの上にキャラメルのクリームを絞り、チョコクランチをトッピングしたものでした。表面さっくり中身しっとりのオールドファッションに、ねっとりと滑らかなクリーム、そしてカリカリのクランチと、異食感が混在する食べ物が好きな私にはうれしい一品。ベルギー王室御用達の老舗・ヴィタメールのコラボで余ったキャラメルモカクリームを使用したかと思います。

ただ、恥ずかしいことにミスド好きと豪語しながら冒険せずほぼ毎回同じものばかり買ってしまういわば「ミスド保守派」な私は、ヴィタメールとのコラボは試しておらず、自分の舌ではなくメニューの概要を見ての推測ですが......。甘さだけでなくコーヒーとキャラメルの苦味もしっかり感じられるクリームと、オールドファッションのミルクの風味がよくマッチ。まさに、"余り物には福"がある。

同じく大人な味わいだったのは、「フランボワーズチョコリング」。イースト生地の名品・チョコリングにヴィタメールのショコラ ミルティーユから残ったフランボワーズ風味のチョコフレークをトッピング。ミスドのイースト生地はふんわりと軽やかな食感と小麦粉の風味が感じられてどの種類も大好き。ほんのり塩気もある生地なので、甘めのチョコと酸味のあるフランボワーズフレークとのバランスもいいし、見た目も華やか。店舗によってはチョコファッションにフランボワーズを飾ったものもあったみたいで、いかに巡り合わせが大切なのか再認識しました。一期一会ファンシー。

そして今回のベストファンシーは「ブルーベリージャム」。簡単に言うと、エンゼルクリームの中身がホイップクリームではなくブルーベリージャムな逸品。アメリカでは定番のジェリードーナツで、無性に食べたくなるので「ミスドにもあったらいいのにな」とずっと願っていました。

ついに叶(かな)った夢のエンゼルジャムは予想どおり爽やかで最高。一念天に通ず、ミスドの女神(ミセズドーナツ)は見てくれているんですね。「定番化求む!」と声を大にしたいところですが、調べたらかつてはミスドにもストロベリーやアップルラズベリーなど10種類以上のジェリードーナツがあったみたいで......。復活するその日まで、私はコラボが終わるタイミングを狙ったファンシーに期待します。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。ポン・デ・リングをいまだに新参者扱いしている。
公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!