"物価の優等生"といえばモヤシや卵だが、インフレの波にはあらがえず、いずれも価格が高騰している。しかし、物価の専門家に話を聞いてみると......ありましたよ! 価格が安定している上、栄養価も抜群。エンゲル係数が上がりつつある今、ブロッコリーを食らえ!
■ブロッコリー大好き経済アナリストが魅力を熱弁!!
食品の値上げラッシュが続いている。
「そんな今こそ、あらためて注目したいのがブロッコリーです」
そう語るのは、物価に詳しい経済アナリストの森永康平氏だ。
「食料品が軒並み高くなるなかで、ブロッコリーの価格の安定感は際立っています。もちろん、野菜なので季節や気象条件などの要因で値動きはあります。しかし総務省がまとめている『小売物価統計調査』を見たり、近くの八百屋さんで定点観測しても、ブロッコリーは3月にかなり安くなりましたし、その後も大きな値上がりはしていません」
かくいう森永氏は、実は毎日のようにブロッコリーを口にする、重度の"ブロッコリー偏愛者"である。きっかけは年初から始めたダイエットだという。
「昨年の大晦日(おおみそか)に何げなく体重を量ってみたところ、80㎏に達していて愕然(がくぜん)としたんです(笑)。さすがにこれはマズいと思い、その日から本気でダイエットに取り組み始めました。そこでまずは摂取カロリーを抑えるために、野菜中心の食生活に切り替えようと安くて栄養価の高いブロッコリーに目をつけたわけです」
森永氏はジム通いで運動量を確保する傍ら、徹底した食事改善に取りかかった。
「ブロッコリーに豊富に含まれるビタミンCは疲労回復に作用しますし、ビタミンB1は糖質の代謝を、B2は脂肪の分解をサポートしてくれます。また、野菜の中では比較的タンパク質も豊富なことから、運動との両立にうってつけなんですよ。
私の場合、鶏肉と一緒にゆでて、塩をかけて食べることが多いです。最近は塩にもいろんな種類がありますから、その日の気分で岩塩をひいてみたり、ハーブ塩を使ってみたりと味を変えているので飽きません。その結果、3ヵ月で15㎏減が実現できました。これはひとえにブロッコリーのおかげです」
背景には日課のジム通いのほか、「10㎞圏内であればランニングで移動するようにする」というストイックな習慣のたまものでもあるから、万人がマネできるわけではないが、それでもブロッコリーのポテンシャルをあらためて感じさせるエピソードだ。
■なぜブロッコリーの価格は安定している?
十分な栄養価があってお財布にも優しいとなれば、ブロッコリーを食べない理由はない。しかしなぜ、数ある野菜の中でブロッコリーの価格は安定しているのか?
「最大の要因は供給量。例えばブロッコリーの場合、害虫に強く安定して収穫できるんです。また、ひとくちにブロッコリーといっても多くの品種があり、環境や条件に合ったものを選べば比較的栽培しやすいのも強み。季節に合った品種を作付けすれば周年栽培(年間を通して生産すること)も可能ですから、安定供給できます。
一方で、産地が意外と限られるため競合が少なく、供給過多になりにくい側面もあります。これも値崩れせず、一定の価格帯を保っている理由のひとつと言えるでしょう」
さらに見逃せないのが、ビニールハウスや温室を必要としない露地栽培だという点だ。
「自然な環境で栽培できることから、温熱環境を保つためにボイラーを使う必要がありません。細かい話をすればパッケージの包装フィルムだって石油製品ですし、産地で直売するケースを除けば輸送にもガソリンが必要ですから、少なからず原油コストはかかるのですが、ほかの野菜に比べて抑えられるのは事実。このメリットは地味ながら大きいです。
本来野菜は気候変動や災害などでも価格転嫁が起きやすい商材ですが、そのなかでブロッコリーは無類の強さを誇っています」
■紫がかったブロッコリーを選べ!
となれば今すぐにでも食卓にブロッコリーを取り入れたいところだが、せっかくなのでブロッコリーを上手に選び、おいしく調理したい! そこで、ツイッターで6.6万人のフォロワー数を誇り、年間200万株のブロッコリーを出荷する安井ファームに、まずは店頭での賢い選び方についてアドバイスをいただいた。
「一番のポイントはつぼみの密度。隙間なくギュッと詰まっているものが理想です。『粒が細かいほうが鮮度がいい』と誤解されがちですが、これは単に品種の差であることが多いので気にしなくてOK。
時折、黄色くなったブロッコリーを見かけることがあると思いますが、これはエネルギーの代謝によって色素が分解されたためで、食用としては問題ありません」(広報の土田龍之介氏)
また、なかには表面が紫色になっているものもあるが、これはむしろ甘くておいしいブロッコリーの証(あかし)だという。
「寒くなると代謝が鈍り、光合成によって蓄えたエネルギーを消費しきれなくなってしまいます。そこで紫の色素を分泌して表面を覆うことで、光合成を抑えようとするためこのような色になります。ブロッコリーは寒さを感じると凍らないよう糖度を上げる性質があるので、ブロッコリーの紫は甘さの目印と考えるべきなんですよ」(土田氏)
このため、ブロッコリーは1年を通して収穫されてはいるものの、旬は11~3月となるそうだ。
なお、ブロッコリーは日持ちも良く、ポリ袋に入れて0℃設定の冷蔵庫のチルド室に入れておけば2週間ほど保存がきくという。あるいは生のまま小分けにして冷凍保存もできるから、調理の時短にも役立ちそうだ。
最後に、おいしいブロッコリーの調理法を聞いた。
「SNSで最も反響があったのは、ブロッコリーの麺つゆ漬け揚げです。鶏の唐揚げに着想を得たこのレシピは、Twitterでの累計閲覧数が1300万回を超えました。麺つゆのうまみが染み込むので、ブロッコリーが苦手な方でもおいしく食べられると評判です」
このほか、ふたつのレシピも掲載したのでご覧いただきたい。
ちなみに意外と見落としがちだが、ブロッコリーは房の部分だけでなく、茎や葉もすべて食べられる野菜である。例えば茎の部分は皮をむいてきんぴらにしたり、すり下ろして薬味にすることも可能だ。
一方、葉の部分については繊維質で硬く、口の中に残りやすいためやや使いづらいかもしれないが、細かく刻んで炒めものやスープにして食べれば、高い栄養価を余さず摂取することができる。
「主食からおかず、つまみにまで幅広く活躍するブロッコリーには、使い道がまだまだたくさんあります。75のレシピを紹介した著書『日本一バズる農家の健康ブロッコリーレシピ』(KADOKAWA)をご覧いただければ、毎日でもブロッコリーを楽しめると思いますので参考にしてください」
お買い得なブロッコリーを駆使して、インフレ時代をヘルシーに生き残れ!
【ブロッコリー料理のレシピ】
■ブロッコリーの麺つゆ漬け揚げ
Twitterで閲覧数1300万回を超えた伝説のバズレシピ。スナック感覚で無限にキメられる中毒性があり、おつまみにもピッタリ!
《材料》
○ブロッコリー...1/2株
○麺つゆ(3倍濃縮)...大さじ5
○水...大さじ5 ○片栗粉...1/2カップ
○揚げ油...適量
《作り方》
ブロッコリーは洗った後、小房に分け、ゆでて火を通し、熱いうちに麺つゆ、水とあえて20分ほど漬けておく。その後、汁気をきってポリ袋に入れ、片栗粉を加えて全体によくなじませる。深めのフライパンに揚げ油を深さ2㎝くらいになるまで注ぎ、加熱してブロッコリーを投入。時折ブロッコリーを返しながら、2分~2分30秒ほど揚げれば完成
■丸ごとブロッコリーの炊き込みご飯
炊飯器にブロッコリーを丸ごとぶち込んでご飯を炊くという、ビジュアル強めのレシピ。バターとコンソメが絶妙なスパイスに
《材料》
○ブロッコリー...1株
○米...2合
○ベーコン...4枚
○洋風スープの素...小さじ2
○塩...小さじ2/3
○バター...20g
《作り方》
洗ったブロッコリーは茎と房を切り離し、茎の部分はピーラーで皮をむいておく。ベーコンは1㎝幅にカット。炊飯器に2合分の米と水を入れ、洋風スープの素と塩を加えて軽く混ぜた後、中央にブロッコリーの房、茎、その周りにベーコンをのせ、通常どおりに炊飯をスタート。炊き上がったらバターを加え、しゃもじでブロッコリーを崩しながらさっくり混ぜる
■ブロ納豆
ブロッコリーを納豆にのせるだけという爆速メニュー! ヘルシー食材のかけ合わせなのがうれしい
《材料》
○ブロッコリー...2房分
○納豆...1パック
○納豆の添付たれ...2袋
○オリーブオイル...少々
《作り方》
洗って小房に分け、ゆでて火を通した後、粗くみじん切りにしたブロッコリーを納豆にのせ、添付のたれとオリーブオイルをかければ完成