オラ! コモエスタス?(やあ、元気?)スペイン大好きマリーシャです。
未だ未曾有(この表現もう古い?)の感染拡大に脅かされている世の中ですが、この夏、世界では少しずつお祭りが復活し始めている模様。というわけで今回は夏の特別編。3年ぶりに復活したクレイジーとも言えるスペインの奇祭に注目! 前後編でお送りしたいと思います。わっしょい!
スペイン3大祭りと言えば「セビリアの春祭り」「パンプローナのサン・フェルミン祭」「バレンシアの火祭り」ですが、これに入っていないのが不思議なくらい代表的なのが「ブニョールのトマト祭り(トマティーナ)」!
トマトを投げ合うことで知られるこの祭りは、スペイン第3の都市バレンシアから電車で約40分、人口9千人のブニョールという小さな町で毎年8月の最終水曜日に行なわれます。
コロナ禍で2年連続中止でしたが、2022年8月31日、3年ぶりに開催! さらに2025年までのスケジュールが発表されているのは嬉しい限り。かつては世界から4万人以上の観光客が集まっていたビッグイベントの復活に盛り上がること間違いないでしょう!
祭りの起源は1945年との説が有力で、もみ合いのケンカとなった若者がたまたま近くにあった屋台のトマトを投げ合ったことが始まりだとか。トマトの生産量の多いスペインならではの話という感じですね。(と言っても近年のトマト生産量のデータでスペインは世界8位だけど。1位は中国)
私が参加したのは2015年。トマト祭りは前夜入りして夜通しで楽しむのが旅人の通例ということで、バレンシアからの終電に乗り込みました。
車内はアジア人だらけという不思議な光景でしたが、ブニョールに到着すると町の建物には翌日投げられるトマト避けのカバーが張られており、その下で地元の人たちがテーブルや椅子を出してお酒片手に賑わっていました。
素朴ながらもスペインらしい雰囲気に浸り、私たちもお祭り気分にエンジンをかけます。
しかし朝までは体力が持たず、ノコノコと丸腰でやってきた旅人に残された寝床は公園だけでした。ゴロゴロと多くの人が雑魚寝する公園はまじカオス! モラル的にはNG感が否めないのですが、為す術もなく私もその集団の端っこに身を潜めるのでした。
若気の至りとはいえ(そんなに若くなかったけど)、外でオールはきつかったし夏だというのに夜は結構冷える。結局ろくに睡眠もとれずにボーっとしたまま朝を迎え、気合いでトマト祭りに参戦です。
会場となる通りのゲートがいざ開かれると、念願だったトマト祭りに来ているという現実にワクワクが止まらない。私は防具として準備していたお面を装着し、ドキドキしながら入場しました。
参加者がストリートを埋め尽くすとそこは熱気ムンムン。そしてトマトがやってくるその前に、前座にしては激しすぎるイベント「パロ・ハボン(石鹸の棒)」が始まります。
石鹸を塗りたくったヌルヌルの木の棒に登り、先端にある生ハムを奪い取る競争です。まずは強靭な男たちがトライし始めるも、ズルズルと滑り落ちなかなか頂上まで届かない。どう見ても無理ゲーそうであるが、意外にも挑戦者は続々。
「いけーっ!」
男子のみならず果敢に挑戦する女子も現れますが、頭を土足で踏まれ首の骨でも折るんじゃないかと本当にハラハラします。それにパンツをひっぱられてお尻がペロンと出ちゃった子もいましたが、「お尻を出した子1等賞」なんて歌はスペインにはない。勲章は生ハムを取った者のみに与えられるのです。
結局、その年は生ハムをゲットする者はおらず、数人の負傷者が出たところでついに時は来た! 待ってましたと言わんばかりの「トマテ! トマテ!」のコール! 大量のトマトを乗せたトラックが人並みをかき分けやってきました。その様子はまるでモーゼ!
そしてトラックの荷台にのったスタッフから参加者にトマトが投げ渡される! それを掴んだものからエイヤとトマト投げがスタート! トラックはパレードのように数台やってきて、あっという間に現場はトマトの海! もうグッチャグチャです!
誰もが身体中を赤く染め、まるで血だらけ、もといトマトだらけの姿に。真っ白いTシャツはピンクに変わり、靴の中はグジュグジュ! そしてこのトマト、完熟と聞いていましたが結構硬い。私も何度か顔面にクリティカルヒットをくらいましたが痛かった~!
さらに観衆のテンションが最高潮になると、トラックの荷台が天高く斜めに上がり、ザザザーとトラックに乗っていた全てのトマト大放出!
*臨場感がスゴイ! 動画でもトマト祭りの様子をお楽しみください!
これ以上は危険だと知ってのことか、トマト投げは1時間であっという間に終了する。アフターパーティーはやり切った感とお酒に酔いしれながら、DJの音楽に身を委ね戦友たちと踊るだけ。
和やかなムードの中、トマトで汚れたシャツを脱いだ上裸の男性の背中には「安かに眠たまえ」というタトゥーが彫られていた。足りない送り仮名が気になりますが、この夜は泥のように眠りにつき、まさに「ヤスカニネムタマエ」状態でした。
そして、その後1週間は髪の毛と、耳や目や鼻の穴という穴からトマトのカスが出てくるという病に悩まされる忘れられない祭りとなりました。
この祭りのクレイジーさに、当時は「二度と体験したくない」と思ったほどですが、今となっては一生の夏の思い出! 枕投げとは比べ物にならない体験、みなさんもいつか参加してみては。
*次回、3年ぶりに復活するスペインの奇祭<後編>は8月11日(木)配信予定です
●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。2014年より『旅人マリーシャの世界一周紀行』を連載。
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