スペイン第3の街バレンシアを彩る「火祭り」の張子人形ファリャ(2016年)

オラ! コモエスタス?(やあ、元気?)スペイン大好きマリーシャです。

未だ感染者拡大に悩まされる世の中ですが、この夏、世界では少しずつ祭りが復活し始めているようです。というわけで前回に引き続き夏の特別編。3年ぶりに復活したクレイジーとも言えるスペインの奇祭「火祭り」「牛追い祭り」に注目したいと思います。わっしょい!

* * *

「バレンシアの火祭り(ファリャス、ファジャス)」はスペイン三大祭りのひとつ。「サン・ホセ(聖ヨセフ)の祝日」を祝うため、3月にスペイン第3の都市バレンシアで開催される祭りです。コロナ禍では中止や異例の延期開催となりましたが、今年は3年振りに例年のプログラムで開催されました。

火祭りを彩る巨大な張子人形 その1

この祭りでは街の至る所に「ファリャ(ファジャ)」という巨大な張子人形が飾られ、最終日に全て焼き払われます。

祭りの起源は、冬が明けた3月に大工職人が古道具やかんな屑を燃やしていた習慣に由来するとか。

ファリャは政治の風刺を含んだユニークなものや可愛いキャラクターのようなものまで、大小何百体も飾られます。完成度はかなり高く、街中はまるでファンタジーの世界ですが、祭りの期間は朝から晩まで花火や爆竹が鳴り響き、その状況はもはやクレイジー!

火祭りを彩る巨大な張子人形 その2

火祭りを彩る巨大な張子人形 その3

私が訪れたのは2016年のこと。路上では男たちがパエリア作りに精を出し、宿の前では聖母マリアに捧げる献花パレード「オフレンダ」が行なわれていました。

音楽隊の奏でるリズムとともに、民族衣装に身を包んだ美しい娘たちが行進。その後も老若男女にファミリー、ベビーカーまでもが列に続きましたが、このパレード、15時半に始まって23時半まで8時間続いたので驚きです。

さらに深夜1時頃からは花火の打ち上げが始まり、その後も夜通し爆竹の音が鳴り響き、祭りは人々に安らかな眠りを与えません。

さすがパエリア発祥のバレンシア! 路上で男たちがパエリア作り

美しい民族衣装に身を包んだ人々の献花パレード「オフレンダ」

そして最終日の夜、花火の合図でファリャに火が点けられます。可愛らしい人形たちが黒い煙をあげながら次々と焼け落ちていく姿は悲しげで、隣に並ぶファリャも「次は私の番かしら」と怯えた表情に見えました。

また、狭い路地でも容赦無く大きな炎をあげるので、火事が起きるのではと心配になるほど。見物客に火の粉や灰が降り掛かります。

祭りの最終日に順番に燃やされていくファリャ

そして深夜を超えた頃、いよいよ最後に巨大ファリャを燃やす時。

「ゴオオオオオオ!!!!」

これまでで一番大きな火柱をあげ、ついに祭りが閉幕。街に静寂が帰ってきました。

「やっと眠れる......(笑)」

2016年のメインとなる巨大ファリャ

最後のファリャが燃やされた時の火柱が大きすぎる!

祭りを見届けた達成感と同時に思わず本音も漏れましたが、火祭りはファリャが本当に素晴らしく、またスペインの祭りのスケールに驚かされます! スペイン人の無限の体力と祭りへの情熱を感じに、耳栓必須で参加してみては!

■ミニ・パンプローナの牛追い祭り

そして、スペイン三大祭りのひとつ「パンプローナのサン・フェルミン祭」は、ナバーラ州のパンプローナで7月に開催されます。

牛の前を人が集団で走る「牛追い祭り」として有名で、毎年約100万人の観光客を集めるビッグイベントですが、コロナ禍では中止。今年は3年ぶりに7月6日~14日に開催されました。

6頭の雄牛と、白い衣装と赤いスカーフを首に巻いた約2千人が通りを全力疾走。毎年何人もが負傷し、これまでに16人の死者が出ているという危険度マックスな祭り。世界一クレイジーな祭りと言っても過言ではないでしょう。

「いつか参加してみたいけど、私はバルコニーから観るのが限界かな......」

牛追い祭りに憧れる私に、旅の神様が微笑みました。2019年8月頭、スペイン北部を周遊していた時のこと。パンプローナからバスで1時間のところにあるエステーリャという小さな街で、なんと偶然にも「ミニ・牛追い祭り」に遭遇したのです。

路地を牛と男たちが全力疾走!

私がその街に到着すると、偶然にも「フィエスタ・デ・エステーリャ」という祭りの真っ最中で、街中の各所では伝統的なセレモニーや歌や踊りで人々が盛り上がっていました。

人口1.3万人程度の小さな街ながら、祭りのプログラムは大都市に負けず朝から深夜までビッシリ。その中に街中で牛を走らせるプログラムがありました! 現地の人曰く、「ミニ・パンプローナの牛追い祭り」だって!

「これはラッキー! ミニとはいえ、まさかあの『牛追い祭り』が観れるとは!」

私は沿道に設置された木の柵の最前列にへばりつきました。そしてついに興奮の瞬間です。牛の首についた鐘の音とともに、数十人ほどの男たちが必死な形相で目の前を走り抜け、それに続いて10頭ほどの牛が突進!

柵の間から牛追いを見ることができるので子供も女性も安心

目の前を過ぎるのは15秒程度と一瞬ですが、間近で見る迫力に圧倒! 本家に比べてミニ牛追い祭りは参加者が少ないので通りが圧迫されることもなく、人も牛も走りやすそうだし、観る側も安全!

そして22時頃には模型の牛に花火をつけて走り回る「子供用の牛追い」も。その様子はまるで親子運動会のようで微笑ましい。子供たちも参加できる牛追い祭りがあるなんて、さすがはスペイン! もはや英才教育です!

模型の牛に花火をつけて走り回る「子供用の牛追い」

火花を散らす模型の牛から逃げる子供たちと親

これにて祭り終了かと思いきや、やっぱり終わらないのがスペイン。祭りは1週間続き、最終日は朝から「アホアリエロコンテスト」というシェフ志望者たちが鱈料理の腕を競う大会や、「巨人と大頭(ヒガンテスとカベスドス)」という伝統的な祝祭儀礼があったりと賑やかでした。

有名な祭りも良いですが、こんな知る人ぞ知るお祭りこそ、みなさんに紹介したい貴重な旅の体験でした。

「アホアリエロコンテスト」

大人も警察も容赦無くムチで叩く大頭の張子人間

巨人ヒガンテス

★牛追い祭りの迫力と熱気を動画で!

やっぱりスペインの祭りはとにかくパワフルでクレイジー! スペイン人は本当に祭り好きなんだなと実感。

まだ制覇していないスペイン三大祭りの「セビリアの春祭り」や、北部の村で行なわれる「赤ちゃん飛び越え祭り(エル・コラチョ祭り)」など、いつかは参加してみたい! 皆さんも、祭りの旅がしたくなったら、ぜひスペインに足を伸ばしてみてね!

●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。2014年より『旅人マリーシャの世界一周紀行』を連載。
Twitter【marysha98】
Instagram【marysha9898】
YouTube『旅人マリーシャの世界飯 Traveler Marysha』

★『旅人マリーシャの世界一周紀行』は隔週木曜日更新! ★