みなさん、こんにちは! 今回はエリザベス女王の逝去に追悼の意を込めて、イギリスのソウルフードを作りたいと思います。「旅人でも簡単に作れるおうちで世界飯」第39品目は「フィッシュ&チップス」です。
ただの揚げ物とあなどることなかれ! そこには食にあまり興味がないと思われているイギリス人のこだわりや、160年の長い歴史がありました。
私がイギリスを訪れたのは2015年。ロンドンに着くと、街中には真っ赤な2階建てバスや電話ボックス、バッキンガム宮殿の衛兵交代式ではマッチ棒のような黒い帽子に赤い制服を着た兵隊さんなど、赤を基調とした「THE・イギリス」といった景色にたくさん出会いました。
ビートルズのアルバムジャケットで有名な「アビー・ロード」では、彼らと同じように横断歩道を渡っている姿を撮影したかったのですが、予想以上の交通量と人の流れでなかなか思うようにいかず苦労したのが懐かしいです。
そしてイギリス最大の時計台「ビッグ・ベン」の針が12時を回った頃でしょうか。イギリスに来たらやっぱり食べておかないといけないのがフィッシュ&チップス! 私は1871年創業の老舗「ROCK&SOLE PLAICE」へ向かいました。
フッシュ&チップスは白身魚のフライにフライドポテトを添えたもの。家庭では調理せず、お店で食べるのが一般的です。
白身魚はお店にもよりますが、コッド(タラ)、ハドック(コダラ)、プレイス(カレイ)、ソール(シタビラメ)、スケート(エイ)、ロック(メバル)などバラエティ豊か。フライドポテトはイギリスでは「チップス」と言い、ポテトチップスのことではありません。
サクッと揚がった白身魚の衣にはビールが使われていたり、チップスは二度揚げや三度揚げされていたりと、店によって工夫されています。
「ほな、やっぱりただの揚げ物やないかい」
と言われそうですが、フィッシュ&チップスにはイギリス独特の食べ方があります。それは「モルトビネガー」をかけること。モルトビネガーは麦芽で作られた酢のことで、鮮明な酸っぱさが印象的。これをドバドバとかけて食べるのがイギリス流で、
「これをかけなければフィッシュ&チップスを食べたことにはならん!」
という強いこだわりを持ったイギリス人も多いとか。またレモンやタルタルソースの他に、「マッシーピーズ」という茹でたグリンピースが添えられているのも本場流です。
そして揚げ物のお供にはビールが最高に決まっているのですが、お酒類を販売できるライセンスがないお店では紅茶、しかも意外にもミルクティーが飲まれます。口の中の油を落としさっぱりするのだとか。さすがは紅茶の国。
それから私がイギリスで食べたフィッシュは、丸々一匹サイズと超巨大! 日本のレシピにあるような一口サイズではありませんでした。
フィッシュ&チップス第1号店は1860年にできたお店「Malin's」と言われています(1972年閉店)。160年以上の歴史を持ちすっかりイギリス代表となったフィッシュ&チップス。産業革命期には労働者の食生活を支えました。
イギリスではカトリックの習慣から金曜日は肉を食べずに魚を食べるため、「金曜日はフィッシュ&チップス!」が定着。店で食べるかテイクアウェイ(イギリスでテイクアウトのこと)が基本ですが、今回はおうちでレッツクックしてみたいと思います!
<材料> 約1~2人分
・タラ...2切れ
・塩...タラにまぶす程度
・薄力粉...タラにまぶす程度
・じゃがいも...2個
*衣
・薄力粉...30g
・片栗粉...30g
・ベーキングパウダー...小さじ1/4
・塩...ひとつまみ
・ビール(水や炭酸水でも可)...60ml程度
*お好みでモルトビネガー、レモン、パセリ、タルタルソースなど
<ワンポイントメモ>
*モルトビネガー必須! 輸入食材店で売ってます!
*衣にビールを使うのがイギリス流!
*じゃがいもとタラはしっかり水気を取って油はね防止!
<調理>
1.ジャガイモは皮を剥いて棒状にカットし水に20分ほどさらしたら、水を切りキッチンペーパーでよく水気を取っておく。
2.フライパンにジャガイモと油(分量外)を2cm程入れてから火をつけて、冷たいところから170℃(中弱火程度)でキツネ色になるまで揚げる。油を切って塩をまぶし「チップス」の出来上がり。二度揚げするとよりカリッと仕上がります。
3.タラに塩をまぶしておき(省略可)、キッチンペーパーでよく水分を取ったら薄力粉をまぶします。(タラの皮はありなしどちらでも)
4.ボウルに衣の材料を入れて混ぜ、タラをくぐらせる。
5.2で残った油170℃にタラを入れ、両面キツネ色になるまで揚げたら「フィッシュ」のできあがり。
■YouTubeで本場フィッシュ&チップスのレシピをどうぞ!
<実食>
本場より小ぶりですがきれいなキツネ色に揚がりました。まずはフォークとナイフを入れると表面はサクッといい音! 魚の身はフワフワです! モルトビネガーをドバドバとかけて本場の味をビールで流し込むと、
「最高! ただの揚げ物じゃない! イギリスのこだわりが詰まった揚げ物だ!」
モルトビネガーで酸味のある味が新鮮でした。日本に住むイギリス人女子に尋ねると、
「フィッシュ&チップスは家で作ったりはしないわよ。買うの! 食べる時はもちろんビネガー! 私は酸っぱいのが好きだから特にいっぱいかけるわ! イギリス人が酸っぱいものが好きっていう噂は本当だと思う。ただ妹は何もかけないで食べるけどね(笑)」
とのこと。さらに、こんなこだわりも。
「それより、日本のリンゴどうにかならないかしら。イギリスのリンゴは酸っぱくてとても美味しいのよ。日本でアップルパイを買ったんだけど、甘くて味が薄い。ぜひイギリスのリンゴやアップルパイを食べてほしい!」
私はリンゴは甘いほうが良いと思っていましたが、モルトビネガーにしろリンゴにしろ、イギリス人の酸っぱさへのこだわりを強く感じました。特にビッと効いた強い酸味が好きなのだと!
話はそれましたが、干ばつやウクライナ情勢の影響で、フィッシュ&チップスの材料費は高騰し、専門店が危機にさらされているそうです。
かつては貧困層の食であり身近に食べられていたフィッシュ&チップスが、どうかこれからも気軽に食べられますようにと願うばかりです。
●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。2014年より『旅人マリーシャの世界一周紀行』を連載。
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