ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。

それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。

そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。

* * *

今年も「はま寿司」に「カキフライ軍艦」の季節がやってきた。

と、さも当然のように書きはじめたけれど、ご存知ない方のために説明すると、まず、「はま寿司」という回転寿司チェーンがある。基本的なメニューはひと皿税込み110円で、「すき家」や「なか卯」でおなじみ「ゼンショーホールディングス」の運営なので、魚介類はもちろん、肉系の寿司などの変わり種も多く楽しい。僕が特に好きなのがフライや天ぷらなどの揚げもの寿司で、注文するとそのつど揚げたてで提供されるのが素晴らしい。 

そんなはま寿司のなかでもとりわけ好きなのが、毎年秋になると期間限定で提供の始まる「カキフライ軍艦」。僕ははま寿司をよく、ちょい飲み酒場として利用しているんだけれど、この季節になると一度は、ひとりでカキフライ軍艦だけを食べまくる、「カキフライ軍艦祭り」を開くのが恒例になっている。その季節が、今年もやってきたというわけだ。  

ある日の午後、今年もカキフライ軍艦祭りを催すべく、お腹をぺこぺこに空かせ、はま寿司へと向かった。  

入店し、中途半端な時間なので並びに誰も座っていない長いカウンター席に着く。カキフライ軍艦に全集中するにはこの上ない環境だ。TVCMにより、今年も"牡蠣もの"の提供が始まっていることは知っていたけど、あらためてメニューを見てみる。するとどうやら現在は、「はまい! はま寿司の牡蠣とうまネタ祭り」というフェアが行われているよう。「はまい!」ってどういうことだろう? と思いつつ、はま寿司においては積極的に使っていきたい勢いを感じる。  

ところで、今年の牡蠣ものはかなりメニューが充実しており、以下のようなラインナップであることがわかった。
  
・「広島県産カキフライ軍艦」(165円) 
・「広島県産カキフライ軍艦(タルタルソース)」(165円)
・「広島県産カキフライ軍艦(お好みソース)」(165円)
・「広島県産カキフライ4個(タルタルソース)」(308円)
・「広島県産カキフライ4個(お好みソース)」(308円) 
・「広島県産牡蠣握り」(110円) 
・「広島県産牡蠣握り(もみじおろしのせ)」(110円) 
・「広島県産牡蠣握り(ぽん酢ジュレのせ)」(110円)  

なんと堂々8種類! 軍艦ではなく単体のカキフライや、ゆで牡蠣のにぎりまである。こりゃあもう、カキフライ軍艦祭りというより「牡蠣祭り」だな。よし、いけるだけいこう!  

というわけでまずは、カキフライ軍艦全種、それから、カキフライ単体のタルタルソースを注文。いつもは小ジョッキで始める生ビールだが、祭りの夜(正確には夕方前)だ。中生いっちゃおう。

軍艦軍団到着  

さっきは「回転寿司」と言ったけど、実ははま寿司において、寿司は回っていない(うちの最寄りの店舗では)。レーンにのって、ブーン! とやってきて、注文した人の目の前でぴたっと止まる。もはや、SF映画「2001年宇宙の旅」の世界だ。まぁ、もう2022年なんだけど。

すべての品が揃う
とにかくすぐに注文の品々は到着した。目の前には生ビール、そして、カキフライがきっちり10個ある。日本に数々の祭りはあれど、これほどまでに勇壮な奇祭は、はま寿司の牡蠣祭りだけであると言えよう。

日本の奇祭  
そしてこのカキフライもの4皿の合計が、なんと税込み803円! やはり酒場としても優秀すぎるな......はま寿司。
 「広島県産カキフライ軍艦(タルタルソース)」  

まずは大定番のタルタルソース味軍艦からいこう。これだけの数のカキフライだ。なるべくいろんな味で楽しみたいと、片方にほんのりレモンを絞り、片方はそのままで。いざ、バリバリと食べすすめてゆく!  

あぁ、まったりさくりとした1年ぶりの味。やっぱりうまい! じゃなかった、はまい! タルタルの甘酸っぱさをじゃましない程度に絞ったレモンの爽やかさもいい。安定の揚げたてて、ビールがすすみすぎる!

「広島県産カキフライ軍艦」  
続いてプレーンの軍艦いこう。実ははま寿司には、ベースの醤油類だけでもかなりのバリエーションがある。  

・「特製 だし醤油」 
・「関東風 濃口醤油」 
・「北海道 昆布醤油」 
・「九州風 さしみ醤油」 
・「四国風 ゆずぽんず」  

なんだか今日はこんな羅列ばかりしている気がするけれど、以上の5種類がそれだ。これらを先ほどの牡蠣もの8種類と組み合わせると、そのパターンは天文学的数字になる! といっても、冷静に計算すると40パターンだけどさ。とにかくはま寿司のエンターテイメント精神には恐れ入るばかりだ。  

そこでこの2貫は、だし醤油と昆布醤油で食べてみることに。だし醤油はシンプルに、揚げたてのカキフライの香ばしさが引き立ち、対して昆布醤油は、牡蠣旨味がより増幅され、そのふるさとである広島の海の風景がばーっと頭のなかに広がるよう。なんて楽しいんだ。牡蠣祭り。

「広島県産カキフライ軍艦(お好みソース)」 

「広島県産カキフライ4個(タルタルソース)」  

お好みソース軍艦の、例の甘みの強いソース味も、ちょっと意外性があってはまい。はま寿司のお茶目さをいちばん感じられるという意味で、いちばんはまいのはこれかもしれない。単品のカキフライは、王道のタルタルソースの他、濃口醤油、さしみ醤油、ゆずぽんずでもいってみる。どれもいいけれど、僕はそもそも九州風の甘みの強い醤油が大好きなので、これが特に気に入った。  

さて、10個も食べると、さすがに揚げものはもうじゅうぶんという気分になってきた。が、せっかくの牡蠣祭り。最後にゆで牡蠣の寿司も全種いっとこう! にぎりは「しゃり少なめ」が選べるのがありがたく、それで。

「広島県産牡蠣握り」のプレーン、もみじおろしのせ、ぽん酢ジュレのせ    

衣に包まれていないと、牡蠣のプリプリ感がよくわかる。あのサクサクの衣のなかはこうなっていたのか......と、謎の感動がある。
  
ぽん酢ジュレのせには、合わないわけがないゆずぽんずを。もみじおろしのせには、さっきカキフライ軍艦でも風味を増幅させてくれた昆布醤油を。プレーンには、もっとも好みだったさしみ醤油を。それぞれに合わせて食べてゆく。

プレーン×九州風 さしみ醤油
あぁ、さっきまでは「カキフライ」という料理として認識していたけれど、こっちはまさしく「牡蠣」だ。さっきまでは断然ビールだったけど、こっちは圧倒的に、おかわりした黒霧島ロックだ。口のなかにぶわっと広がる海の風味。それが、芋風味の焼酎とマリアージュする。  

今年も無事、秋の行事をとりおこなうことができてよかった。それにしても大満足すぎるな。期間中、もう一度くらいやっちゃおうかな......この祭り。

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