『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、レゴの「ネタバレ」について語る。
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図書館で借りた本の落書きや、公式サントラの曲名などから食らったネタバレのあれこれを語った前回。映画公開前に発売されるおもちゃによるネタバレも振り返りましたが、そのなかでも、とにかくレゴにはやられっぱなしでした。レゴはクリエーティビティを養う最高の玩具ですが、事前に中身を知らせすぎです。
記憶に強く残っているのは、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』。インディ・ジョーンズの19年ぶりの新作とあって、あらゆる予想が飛び交うなか、発表されたレゴセット。タイトルになっているクリスタル・スカルの宮殿の中には、「クリスタルのガイコツをかぶった」白くてヒョローンとしたガイコツと宇宙人のミックスみたいなレゴ人形と、「何もかぶってない」白くてヒョローンとしたガイコツと宇宙人のミックスみたいなレゴ人形が、数人で輪になって座っていました。
「まさかここで黒幕を明かすわけがない」と思っていざ映画を見たら、最後の大どんでん返しで、白くてヒョローンとしたガイコツ宇宙人が、例のガイコツをかぶって登場。「知ってるわい!」とがっかりしました。
新しめのものですと、アイアンマンらおなじみのアベンジャーズの面々に加え、スパイダーマンやブラックパンサーなどが参戦する『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』。新しいマーベルのヒーローが続々と参戦することはわかっていたので、先行発売されたレゴセットにヒーローがたくさん入っているのには驚かなかったものの、アントマンのビジュアルにびっくり。
1.5㎝まで体を縮小できるのが持ち味のアントマンが、ほかのレゴの5倍くらいの大きさで登場。しかもパッケージには「ジャイアントマン(アントマン)」と丁寧なキャプションも。劇中でびっくりするはずのシーンが「はいはい、ここで巨大化能力を発動ね」で終わりました。
『スター・ウォーズ』シリーズも例外ではなく、エピソード1のダースモールvsクワイガンのシーンの展開や、エピソード9に登場する新キャラをレゴにネタバレされてきました。私は経験してませんが、『トイ・ストーリー3』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』など、ディズニー作品でもレゴバレはあるみたいです。
しかし、「レゴ偉い!」と思うのは、2014年公開の『LEGO® ムービー』に向けて発売された商品。レゴが主役のコメディアニメですが、謎の超兵器「クラグル」の正体がすんなり箱に書かれていました。自分たちの映画までネタバレするとは、一貫性があって憎めません。
ちなみにレゴでは、一般の人のアイデアに1万票集まると商品化を検討してもらえるという、レゴアイデアなる企画があります。過去には、米ドラマ『フレンズ』のカフェや『ホーム・アローン』の家、ゴッホの『星月夜』などが商品化されました。
候補はレゴアイデアのサイトで見られますが、現在私が一番気に入っているラックレール鉄道セットは2288人、2推しのビバルディの『四季』のオマージュセットは1743人と、伸び悩んでいます(9月5日時点)。提案を見るだけでも楽しいので、暇なときにぜひ。
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。レゴ商品化のアイデアを応募するなら、鶴見線の国道駅のセットを提案する。公式Instagram【@sayaichikawa.official】