『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、「鉄道開業150年」について語る。
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今年の10月に日本の鉄道が開業されてから150年を迎えることを記念し、イベントや番組が数多く企画されています。私もちょこちょこ参加していますが、コンテンツを生むことができない「消費型オタク」の身としては、鉄道ファンをひとりでも増やすための布教活動が使命だと感じています。
鉄道に興味がない人にも魅力を伝えるため、鉄道を通して見える世相など、単なる移動手段を超越した紹介を心がけています。現代の「当たり前」がいかに鉄道の発展とともに形成されたのかなど、アピールはしているものの......。う"~、手応えがない。
そこでひらめきました。キラキラ女子や陽キャの皆さんにも興味を持ってもらう方法として、たどり着いた答えはあの夢の国。そう、ディズニーさまの力を借りればなんとかなるはず。ディズニー×鉄道!
私はディズニー作品にさほどハマったことがない上に、大人になってからディズニーランドに行ったのは友人の息子の誕生日に一度だけ。しかし鉄道好き目線で巡ると、意外と鉄分が濃い場所だとわかりました。
有名どころは開拓時代のアメリカをイメージした蒸気機関車のアトラクション、ウエスタンリバー鉄道。19世紀の機関車を模したシステム制御の乗り物かと思いきや、本当に蒸気で動いている本物の蒸気機関車です。
さすがに石炭ではなく灯油を使っているけど、ちゃんと燃料を燃やし、水を温めて蒸気を発生させ、機関士が蒸気の流れを調整して走行しています。天候や乗車人数によって燃焼効率が変わるので、一周15分を正確に運行するにはセンスと経験値が必要。
全部で4編成あるようですが、蒸気を吐く音や汽笛の音もすべて違いました。ディズニーマニアの方、ぜひこの4編成の聞き分けにチャレンジしてみてください! 練習するには、静岡の大井川鐵道(てつどう)がオススメ。そこで音鉄に目覚めたら、相鉄9000系もどうぞ。
ちなみに、園内を一周するのに途中下車ができません。駅を作れば移動手段としても便利になりそうですが、そこには日本の鉄道特有の事情が。開園当時の「地方鉄道法」では、私有地でも、ふたつの地点を結ぶには鉄道事業の免許が必要でした。その上、ダイヤや運賃も設けなければならなかったため、ウエスタンリバー鉄道はひと駅のみの環状線になりました。
ただし、乗下車はできないものの、なぜか沿線には駅がふたつあります。ひとつは車内アナウンスで紹介されるけど、もうひとつはスルー。そちらは「ダスティ・ベンド・デポ」という駅で、廃鉱の風情づくりのために設置されているようですが、一瞬しか見えないことから「幻の駅」と呼ばれているそうです。
幻の駅といえば、京成電鉄の博物館動物園駅や東京メトロ銀座線の万世橋駅、銀座線新橋駅の幻のホームなど、実際にもたくさんあります! その風情、ロマン、ミステリーは、まさに夢の国。
これでも鉄道に興味が湧かないなら、ディズニーリゾートラインの駅名が「〇〇駅」ではなく「◯◯ステーション駅」である点についてはどうでしょう。日本語にすると「◯◯駅駅」というトホホな名前になります。機関車ネタが刺さらなかった友人の息子も、これには爆笑でした。
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。パークやホテルをつなぐリゾートラインに乗って満足したので帰ろうとしたら、友人の息子(7歳)に叱られた。
公式Instagram【@sayaichikawa.official】