皆さん、こんにちは。旅のグルメを振り返る度に「味は写真が撮れない」に悩まされているマリーシャです。味は、思い出すのも人に伝えるのも本当に難しい。珍しい料理は特にそうなのですが、今回はイタリアのピサで驚愕した料理を紹介したいと思います。
「旅人でも簡単に作れるおうちで世界飯」第43品目は「コーヒーとケッパーのパスタ ~トマトパウダーがけ~」です! なにその組み合わせっ!
■ピサで見つけた禁断の壁画?
ピサといえば、今にも倒れそうで倒れない「ピサの斜塔」が有名ですが、私のお気に入りは、アメリカン・ポップアートの人気者キース・へリングの遺作である壁画『Tuttomondo(すべての世界)』。なんとこの作品、14世紀に建てられたサンアントニオ教会の壁に描かれているんです。
「歴史的な教会の壁にアメリカのポップアートを描いちゃうなんて、タブーじゃないの!?」って感じですが、塔が斜めでも「あと300年は崩壊しないから大丈夫!」と平気な顔をしている街ならではの寛容さを感じます。
■ピサで出会った禁断の味?
そんなちょっと変わったものがしれっとある街だからでしょうか、私がレストランで見つけたパスタがこれまたちょっと"斜め上"を行くものでした。それが、
「コーヒーとケッパーのパスタ ~トマトパウダーがけ~」
なんでしょうか、これは。イタリア人にとって不可欠なエスプレッソ(コーヒー)ですが、パスタにまでその味を求めるってこと??? そしてケッパーもイタリアではメジャー食材ではありますが、相性が良いのか悪いのか、全く想像の付かないメニューです。もちろん、旅人a.k.a.(またの名を)歩く好奇心の私は迷わずオーダーしました。
目の前に置かれたのは初めて見る料理。円錐型に盛られたパスタ麺の山はオイルで輝き、コーヒーパウダーが雪のように降り掛かっている。さらに、ゴロゴロとした大粒のケッパーと赤いトマトパウダーは、まるで火山から飛び出した溶岩のようで、トップにはちょこんと緑の葉っぱが乗っている。
見た目ボルケーノのようなパスタですが、材料のケッパーはまさにイタリアの火山島であるパンテレリア島産のもの。ケッパーは日本では酢漬けが一般的ですが、シチリアなどでは塩漬けが高級食材として知られています。特にパンテレリア島産は島に自生する固有種で、ケッパー界の中でも旨味があり群を抜いているんだとか。
また、トマトパウダーはシチリア・パキーノ産の風味豊かなトマト、メリンダを使用。コーヒーパウダーもきっとイタリアブランドでしょう。これぞ究極の地産地消パスタです。
ワクワクしながらいざ口へ運ぶと、コーヒーのほろ苦さは意外と風味だけに止まり、ケッパーの塩気と酸味がグッと味を引き締めている。たしかに、コーヒーはカレーの隠し味なんかにも使われ、コクを出したり味をまろやかにしたりするもの。飲み物としては主役級なのに、料理に入ると名脇役に徹します。
主役はどうやらパンテレリア島産のケッパーですね。独特な旨味に中毒性があります。
意外に一体感があるのは、甘酸っぱいヒロイン役のトマトが優しく包み込んでくれているからでしょうか。ミステリアスすぎて想像もできなかった味は、期待以上でボーノボーノ! ボルケーノ!
さて、そんな旅先で見つけた珍パスタ。秘密にしておきたい気持ちもありますが、少しでもこの味を皆さんと共有できますように(恩着せがましい)、今回もレッツクックです!
エスプレッソ用のコーヒーパウダー、パンテレリア産の塩漬けケッパー、ネットで買ったカゴメのトマトパウダーを使って、できるだけアプローチしたいと思います!
<材料> 1人前
・パスタ...50g(おすすめはタリオリーニ)
・茹でる用の塩...水に対して1%
・オリーブオイル...大さじ2
・ニンニク...1片
・ケッパー...適量(できればパンテレリア島産の塩漬けを塩抜きして使用)
・コーヒーパウダー...小さじ1/2(できればエスプレッソ用)
・トマトパウダー...小さじ1/2(できればメリンダ品種)
*トッピング...ケッパー、コーヒーパウダー、トマトパウダー、パセリ
<調理>
1. 鍋に水(分量外)を沸騰させて塩を入れたら、パスタを茹で始める。
2. フライパンにみじん切りのニンニク、オリーブオイルを入れて点火し、弱火にかける。
3. ニンニクがキツネ色になる手前くらいで、ケッパー、コーヒーパウダー、トマトパウダーを加え軽く炒め、パスタの茹で汁(オリーブオイルの量と同じくらい)を加える。
4. 3に茹で上がったパスタを入れて、フライパンを揺りながら素早く和えたら、皿に盛り付ける。
5. コーヒーパウダー、トマトパウダー、ケッパー、パセリを飾って完成! 盛り付けもボルケーノ感を意識しました。
■YouTubeでピサの風景とコーヒーパスタのレシピをご覧ください!
<実食>
禁断のコラボレーションを目の前にドキドキです。ほんのり赤茶色に色づいたパスタをフォークで巻き上げると、コロコロとケッパーが転げ落ちますが、それをうまくすくってパクリ!
「う~ん! 白ワインください!」
バチっと決まった塩気とケッパーを噛み潰した時の旨味がワインを誘います。コーヒーのほど良い苦味がパスタを少し大人の味に格上げしてくれる感じ。かけすぎると主張が強いので、あくまでも隠し味的な要素として、トッピングは好みで調整するのがベター。
そしてトマトはやはりパスタとは切っても切り離せない存在。「結局、一番頼りになるのはコイツだよね」と思うくらい、信用のできる味でした。私はトマトの旨味をギュッと閉じ込めた赤いふりかけの虜になり追いパウダー!
また、特に試行錯誤したのはパスタ麺。最初にスパゲッティ(乾麺)で作ったところ、なんだか別物に。タリオリーニという平麺に変えたら少し近づきましたが、生パスタも良さそう。ソースにばかり気を取られていたけど、パスタ料理の要はパスタだと改めて気付かされました。
ちなみに今回、「コーヒーパスタ」「ケッパーパスタ」を軸にネット検索した結果、ヒット数は少ないながらも、海外や日本にも独創的なものがいくつか存在しました。
合わせる素材も、アンチョビなどの魚介、エシャロット、パルメザンチーズ、生クリーム、レモンなど様々で、意外にもコーヒーやケッパーを使ったパスタに汎用性があることが発覚。いろいろ冒険してベストマッチングを見つけたいです! ぜひ皆さんもトライしてみて下さい。
●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。2014年より『旅人マリーシャの世界一周紀行』を連載。
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