『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、「ライクの森」300回を記念して市川紗椰が「300」にまつわるあれこれを語る。
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ライクの森、今回が第300回! 100回のときは、埼玉・西川口の日本語が通じない中華街で、見慣れない本格的な中華を食べてお祝いしました。今思えば、最近話題の「ガチ中華」を他に先駆けて紹介したかも?と自画自賛しつつ、次の節目となった200回は、正直、まったく気づかないままアニバーサリーがしれっと過ぎていきました。そして、めでたく第300回! せっかく気づいたものの、ロケをする体力も人気もなく......。
そこで、「300」にまつわるあれこれ、スタートです。まず「300」で思い浮かぶのは、子供の頃に読んだ『300』というアメコミ。『シン・シティ』で知られる奇才フランク・ミラーが1998年に発表した実話に基づく歴史スペクタクルコミックですが、映画版でご存じの方もいるかもしれません。
舞台は紀元前480年、圧倒的な兵力を誇るペルシャ軍が100万人でギリシャに迫ります。ギリシャでは、若き王レオニダス率いるたった300人のスパルタ兵が、故郷と家族のために勝ち目のない戦場に向かいます。「100万人vs300人」以上でも以下でもない内容ですが、リアリティと迫力たっぷりに描かれています。
と思いきや。中学に上がり、ギリシャ史の授業でスパルタ兵の話題が出ました。実話ベースの作品とはいえ、脚色されていることは予想していたので、レオニダス王がフレッシュな若造ではなく、実際は戦闘経験豊富な60代だったのはよしとしましょう。ムキムキでもなく、ヨレヨレだったのもいいです。
コミックスでは、腐敗した政府にしびれを切らしたレオニダス王が、危機を察した300人の同志と自分たちだけで国のために戦うという熱いストーリー。しかし実際は、ペルシャ軍はまだまだ遠かったしスパルタはちょうどお祭りをしていたので、ひと足先にレオニダスと彼のエリート部隊が戦場に移動し始めただけ、という事務的な出動理由でした。
さらに、王はレオニダス以外にもいて、留守番している王は民を守っていたようです。極めつきは、最終的には同盟国の兵もスパルタ軍と共に戦ったので、300人ではなく7000人以上いたかも......。幼少期から戦い方を学んできたレオニダス隊と違い、同盟国の兵は軍人ではなく普通の人たちで、そっちのほうが主役っぽい。
さて、スポーツで「300」といえば、ボウリングで全部ストライクを出した際のパーフェクトスコア。パーフェクトに届かぬも、英語でストライク3回連続は「ターキー」、6回連続は「ワイルド・ターキー」、そして9回連続は「ゴールデン・ターキー」といいます。ここまで全部七面鳥なのに、なぜか4連続は「ハム・ボーン」と突然の骨付きハム。
ちなみに9回連続ガーターの私は、おいっ子いわく「もう一緒にボウリングしたくない人」というそうです。ちなみに世界最大のボウリング場は1フロア116レーンを誇る愛知県の稲沢グランドボウル。行ったことはないですが、5年ほど前に近くの稲沢駅でHD300形ハイブリッド機関車を見たことがあります。今となっては勝手に運命を感じています。
このように、時にはこじつけが否めないこのコラムですが、今後もよろしくお願いいたします。
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。音楽部門ではブルースの名曲、ハウリン・ウルフの『300 pounds of joy』(直訳で「歓喜の300ポンド」)を推薦したい。公式Instagram【@sayaichikawa.official】