芸術的な焦がし。あなたの「推し焦がし」はなんですか? 芸術的な焦がし。あなたの「推し焦がし」はなんですか?
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、市川紗椰が「焦がしたほうがおいしい」食べ物について語る。

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お米のおこげ、鉄板でじゅ~っと歌うお好み焼きのソースなど、「焦がしたほうがおいしい」と多くの人が共感する食べ物ってありますよね。ステーキやソーセージや焼きそばなんて、焦がしの香ばしい風味や食感の変化、ちょっとした苦味が加わらないと料理として完成しないほどだと思っています。

でも、世の中には「これ焦がす!?」とコンセンサスが取れてない料理もあるでしょう。そこで、実は焦げたほうがうまいもの選手権、開催です。

みんなに知ってほしい「推し焦がし」、発表します(健康を害するほどの丸焦げは想定していないので、落ち着いてください)。最初のエントリーは、ピザ。耳を彩る黒い点はもちろん、チーズも水玉模様のように焦げているのが理想。

効果のイメージはグラタンのチーズ。香ばしさとコクはもちろん、カリッとした食感も加わるため、焦げてないピザはありえない。焦げの苦味がチーズのコッテリさとのバランスを取ってくれます。なお、具材も少し焦げているのがオススメです。

続いてはブロッコリー。日本のレシピや飲食店のメニューを見ると、ブロッコリーはゆでるか軽く炒めるのが人気。しかし、ブロッコリーの正解はローストかグリル! 芯のみずみずしさを完全に失わない程度に、外側や先端がちょっと黒く色づいているくらいが断然おいしい。

塩とオリーブオイルをちょっとだけかけてからオーブンやトースターに入れてください。「こんなに焦がしていいの!?」ってほどいってほしいです。次のバーベキューにでもぜひ。同じように、カリフラワーやズッキーニも焦がしましょう。

次のエントリーはホルモン。浅草の名店「冨味屋(ふみや)」の店主の高山勇男さんにご教示いただいて気づきましたが、マルチョウなどプリプリ系ホルモンの脂は、黒いお焦げの塊が多少つくまで焼いたほうがいい。

油断したら炎に包まれて丸焦げになる恐怖から、なんとな~くなタイミングで食べてしまうこともあるホルモンですが、もっと攻めましょう。皮面がカリッとしたらひっくり返し、勇気を出して脂身にがっつり焦げ目を。

デザート部門からは、マシュマロがエントリー。アメリカではマシュマロを生で食べるより、焼いて食べるほうがポピュラー。串や枝に刺したマシュマロを直火でトロトロに焼いて、チョコとグラハムクラッカーに挟んで頬張る「スモア」は子供の定番のスイーツ。

アウトドアも夜も嫌いだった市川少女は、スモアが食べられるから学校行事のたき火に耐えられました。真っ白いマシュマロに黄金色が広がり、少し膨れ上がってきたら火からあげることが多いですが、ここももっと粘るべきだと思います。ホルモン同様、一回炎に包まれて黒部分が生じたほうが絶対おいしい。中心部が極限までトロトロになります。

焚き火のマシュマロは性格が出るのも面白いです。私は慎重にマシュマロを育ててましたが、待てずにほとんど硬いまま食べるやつ、はしゃいで火の中に落とすやつ、炎を楽しみすぎていて将来が心配になるやつ。キャンプ好きの皆さん、お試しあれ。コンロやロースター、トースターで焼くのもいい感じです。推し焦がし大会、またどこかで!

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。ナポリタンも「推し焦がし」にノミネートさせたい。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!