高級水産物の代表格・カニは、ここ数年世界的な需要の高まりにより品薄と高騰が続いているが、在庫状況は改善される見通し高級水産物の代表格・カニは、ここ数年世界的な需要の高まりにより品薄と高騰が続いているが、在庫状況は改善される見通し
年末年始は家族や親せきが一堂に会して、普段は口にしないごちそうに舌鼓を打つという家庭も多いはず。ごちそうの花形といえば高級水産物だが、気になるのはやはりその値段だろう。円安や原油高による物価上昇が毎日のようにニュースになるなか、もちろん水産物も例外ではない。水産アナリストで貿易会社「タンゴネロ」代表の小平桃郎氏に現状を尋ねた。

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水産物の価格上昇の発端は、やはり新型コロナの流行でした。そもそも回転寿司店など、低価格帯の飲食店で提供される水産物の多くは、一度海外の工場に原料を輸出して加工を施したのちに、再度輸入するという方式が取られています。低価格で大量の水産物を供給するには、海外で加工を行ったほうがコストの削減になるからです。

しかし、主な加工地である中国やベトナムで発令されたロックダウンにより、工場の稼働が停止する状況が多発。2020年には一旦流通がストップする事態に陥りました。

その後も、海外工場の稼働が制限されたことで生産量は激減。一方で、アメリカや中国など魚食文化が伸びている大国での消費は徐々に回復。日本は買い負け状態となり、2021年は酷い品薄状態が続きました。

そして今年に入り、生産量の調整に四苦八苦するなか、ロシアのウクライナ侵攻による深刻なエネルギー不足が追い打ちをかけました。

先述のように、日本は水産物の加工を海外に委ねているのですが、輸送回数が多い分、原油高騰による被害は甚大。主な原料、加工賃、コンテナ輸送費はすべて外貨払いなので、かねてより進行していた円安やコンテナ不足もコスト上昇を招きました。

現在、日本国内では例年には見られないレベルで、営業冷蔵庫の保管スペースが不足しています。この危機的状況は一朝一夕で改善されるものではなく、年末年始の供給にも相当影響してくると思われます。

■ウニやサーモンは価格が大幅アップ 例外として、エビは価格が横ばい~下がるものも

では具体的に、定番の高級水産物の価格状況について解説していきましょう。

ウニの中では比較的安価な輸入の冷凍ウニは、昨年より5割ほど価格が上昇しているウニの中では比較的安価な輸入の冷凍ウニは、昨年より5割ほど価格が上昇している
●ウニ(冷凍輸入):ここ数年の需要高により、現地コストが上昇。加えて、為替の影響もあり、価格は昨年比約50%UP

●エビ(生食用赤エビ):アメリカや中国の状況に左右される。現在、為替の影響で実際のコストは下がっていないが、主要生産地であるアルゼンチンでの相場が下がっているため、日本でも様子見で下げ基調にある

●カニ:2021年、アメリカでの需要増により、世界中のカニの価格が高騰。昨年末、売り場が寂しかったことは記憶に新しいはず。しかし、年が明けてアメリカが不況に陥り、一転してカニの在庫は余っている状態に。さらに、ロシアのカニがアメリカに行くことがなくなったため、販売先が中国、日本、その他と限られる。年末の価格はいまだ不安定で高級食材に変わりはないが、昨年よりは在庫状況は豊富になっている

●イクラ:ずっと高値で推移していたが、今年は国産いくらが豊漁だったため、市場は混乱中

●サーモン:価格は30~40% UP。値上げが限界突破し、量販店中心に売れ行きは不調か

■一押しはアルゼンチン赤海老! 自宅で調理できるなら魚屋で購入という手も

とはいえ、年末年始くらいはご家族で水産物を楽しみたいはず。水産物のない食卓はやはり寂しいですから。

そこで、私が推薦するのは「アルゼンチン赤海老」です。先ほど解説したように、現状、エビだけは価格が据え置き。生で食べられる天然もののアルゼンチン赤海老は、旨味がたっぷりつまっており、サイズが大きめで食べごたえがあります。また、出汁もよく出るので、鍋具材にも向いています。

生産地での相場下落により、円安による割り増し分を含めても値ごろ感が高まっているという生食用のアルゼンチン赤エビ生産地での相場下落により、円安による割り増し分を含めても値ごろ感が高まっているという生食用のアルゼンチン赤エビ
また、できる限り水産物を安く手に入れたいなら、なるべく手をかけずに販売される水産物を魚屋で購入しましょう。なぜなら、円安の影響をより強く受けるのは主に加工品だからです。家で自ら調理しなければならないという手間こそありますが、手が出せない価格ではないはずです。

小規模のレストランや居酒屋ではそれらをうまく料理し、鮮度の良いものをお手頃価格で提供するところも増えてきていますから、そういったお店に出向くのもひとつの手かもしれません。

●小平桃郎
水産アナリスト。大学卒業後テレビマンを経てアルゼンチンに留学したのち、現地漁労会社に就職。2005年に帰国後、大手水産会社などを経て水産貿易商社・タンゴネロを設立