山形県の長井市にある白兎駅山形県の長井市にある白兎駅
うさぎ年がスタートした。日本にある9000を越える鉄道の駅でうさぎの名が付くのは2つ。愛媛県の予讃線にある卯之町(うのまち)駅と山形鉄道の白兎(しろうさぎ)駅。卯之町は西予市の中心で古くからの宿場町として知られているが、白兎は何もない無人駅とのこと。せっかくなので白兎駅へ出かけてみることにした。

東京駅から山形新幹線に乗って2時間半、赤湯駅で山形鉄道に乗り換え。そこから1両のディーゼルカーに乗ってコトコト走る。最初は沿線に住宅も多かったが、気づいたら周囲は真っ白な雪原。およそ40分ほどで白兎駅に到着する。

降りたのは筆者ひとり。駅のまわりは雪に覆われた田んぼで、少し先の道路沿いに住宅が点在している。ホーム上にいると風が当たって寒い。なので、ひとまずは小さな待合室へ。

建物を見ると、うさぎの耳を模したデザインが描かれた可愛いつくり。中へ入ると手彫りのリアルなうさぎ像がお出迎え。横には賽銭箱が置かれて、白兎駅の守り神となっているのだろうか?

手彫りのうさぎ像、台座には制作者の名前がある手彫りのうさぎ像、台座には制作者の名前がある 
また無人駅につきものの駅ノートが置かれている。駅ノートとは訪れたファンが自由に書き込めるノートのこと。「○月○日来ました~」といったシンプルなものから、白兎駅らしくうさぎのイラストや、秘境駅探索の第一人者・牛山隆信氏の書き込みまであった。

駅を満喫したので散策へ出かけよう。改めてホーム上から360度ぐるっと見回すと、駅前らしく駐輪場と小さなトイレは整備されているが、お店なんてものはなく、そもそも人っ子ひとりいない。ひとまず駅に案内板が掲げられていた葉山神社へ向かって歩くことにした。

田んぼに囲まれた何もない道だが、きちんと除雪はされている。山が近づいてくると、並行するように道路があり、そこに沿ってある程度の家が並んでいる。およそ15分ほど歩いて神社に到着。

駐車場は完全に雪で覆われ、社務所も雪で埋もれている。神社の由来が書かれた案内板を読むと、明徳4年(1393年)に恵法律師という修験者が羽黒山に向かう途中に、この付近の池で薬師如来を発見。その仏像を持って近くの西山を登った際に、白いうさぎに道案内されたことから、白兎という地名がついたらしい。

大きな2本の杉の木は樹齢400年~500年らしい大きな2本の杉の木は樹齢400年~500年らしい
社殿に向かうと長井市の天然記念物にもなっている大きな杉の木。そして鳥居の前に並ぶのは狛犬ならぬ狛うさぎ! 立ち上がった姿が可愛らしい。せっかくなので近くまで行きたいが、除雪されていない。これはどうやって先へ進んだらいいんだ?

狛うさぎの目は赤く塗られている狛うさぎの目は赤く塗られている
周囲を見渡すと社殿の横に住宅があり、そちらへ向かう道は除雪されているようだ。さらにその住宅から社殿の横へ向かう細い道があり、ひとり通れるぐらいの除雪がされている。

なんとか社殿にたどり着いて、お賽銭を入れ、鈴をがらがら鳴らして参拝。ちなみに御札やお守り、御朱印なんてものはない。うさぎ年だし、話題になりそうなものだが、あくまで地元の人のための神社のようだ。

さて次はどうするか? 神社へ向かう途中に何かあればと思ったが、民家しかなかった。気温も昼なのに5℃もない。そんな場所をあてもなく歩き回るのはつらい。やむを得ずグーグルマップを立ち上げると、駅の反対側に馬肉ラーメン屋があるそうだ。これは珍しい!

着た道をてくてく戻って踏切を渡り、30分ほど。街道沿いに営業中と書かれた電光掲示板が光る。着いたのは「馬肉支那そば まる久」。昭和感あふれる外観。もう昼はとっくに過ぎた時間ではあるが、車が数台止まっており人気店っぽい。

ザ・昭和の食堂といったフォルムザ・昭和の食堂といったフォルム
ガラッと引き戸を開けて店内へ、暖まる~! 暖房最高!! 入り口のテーブル席は埋まっていて奥の座敷へ案内された。思ったより大きな店で、夫婦ふたりでやっているが忙しそうだ。

メニューは馬肉支那そば(700円)、馬肉チャーシューとメンマの盛り合わせ(500円)、おにぎり(100円)、焼きもち(100円)、あとは飲み物というシンプル構成。

お腹がすいていたので支那そばと焼きもちを注文し、地元の新聞を読みながら待つこと10分弱。やっと昼ごはんにありついた。

見た目はいわゆる普通の支那そば。麺の上にネギと細く切られたメンマ。そしてこの店のウリでもある馬肉チャーシューが2枚。脂身はほとんどなく、ジャーキーのようだ。かじると少しだけ繊維感があって、ジュワっと肉の味が広がる。これが馬肉チャーシューか! うまいな。

きれいな盛り付けのラーメンに外れなしきれいな盛り付けのラーメンに外れなし
スープは舌にちょっと醤油味が残るぐらいの濃さ。冷えた体を温めてくれる優しい味だ。地元の人が普通に食事をしに来ているのもわかる。

半分ほど食べたところで焼きもちをドボンと投入。いわゆる力うどんみたいな食べ方で、スープのしょっぱさとマッチ。そこでふと思いついた、馬肉ともちを一緒に食べたらどうなるのか? 1枚のチャーシューを半分に切って、上下でもちをサンドしてぱくり。ジュワッともちっとおもしろ食感に満足!

お会計をしながらおかみさんに聞くと、昔からこの地域には馬肉を食べる文化があるそうで、馬肉支那そばは30年ほどやっているとのこと。市内に馬肉チャーシューを出すラーメン屋は多いが、馬肉オンリーの店は少ないらしく、そのこだわりを感じさせた。

ということで、白兎駅探索は終了。葉山神社と馬肉支那そばで歩ける距離はコンプリートだ!

だが、山形鉄道でうさぎといえば、あの有名な駅長の存在を忘れてはいけない。うさぎのもっちい駅長だ。2010年に宮内駅の駅長に就任し、テレビに何度も登場するなど、長らく人気者として活躍してきた。のだが、飼っていた職員が産休に入り、それに伴い2021年12月より長期休暇に入っている。

念のため宮内駅に行ったがやっぱり不在だった。とはいえ、もっちぃ入場券や、宮内駅から白兎駅までのもっちぃ乗車券など、ここでしか買うことのできないグッズもあるので、行って損はないぞ。

国鉄を思い出させるレトロな駅舎に鉄オタは満足国鉄を思い出させるレトロな駅舎に鉄オタは満足