お笑い、サッカー、駅伝などで優勝し、今、岡山県が突如、注目されている! その理由はなんなのか? そして、どんな魅力があるのかを出身者に聞いた!
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■トレーニングに最高の環境!
昨年末からの〝岡山旋風〟が止まらない!
12月18日にウエストランド(岡山県津山市出身)が「M-1グランプリ」で優勝すると、25日には倉敷高校(倉敷市)が大会新記録で「全国高校駅伝」(男子)に優勝。
年が明け、1月9日には岡山学芸館高校(岡山市)が「全国高校サッカー選手権大会」で初優勝を飾り、15日には中学3年生のドルーリー朱瑛里(津山市出身)が「全国都道府県対抗女子駅伝」で17人抜きの衝撃の走りを見せ、区間新記録をマークした。
また、同日に行なわれた米「ヒューストンマラソン」では、新谷仁美(総社市出身)が日本女子歴代2位の記録で優勝している。
「今、岡山県はものすごく盛り上がっていますよ!」と語るのは、岡山県住みます芸人の江西あきよし氏(岡山市出身)だ。
「地元のメディアもこぞって岡山旋風を取り上げていますし、岡山学芸館高校に近いJR西大寺駅前のうどん屋さんは、優勝した翌日には『優勝おめでとうセール』で、うどんが安くなっていました。
僕のツイッターのフォロワー数は4500人くらいなんですが『ウエストランド優勝、倉敷高校優勝、岡山学芸館高校優勝、今年は岡山の年だなぁ!!』とツイートしたら、いつもは閲覧数が1000くらいなのに、そのツイートだけ90万以上あったんです。もう、皆さんの岡山への注目ぶりがうかがえます」
では、なぜ今、こんなにもスポーツを中心に岡山に勢いがあるのか? 元体操選手で金メダリストの森末慎二氏(岡山市出身)に聞いた。
「岡山県は〝晴れの国〟といわれていて(降水量1㎜未満の日が276.7日と全国1位)、トレーニングをするには最高の環境なんです。
それに、岡山県民は何事にも熱くなれない県民性だといわれていたため、30年くらい前から『燃えろ岡山』というキャンペーンを始めました。その成果が最近になって表れてきたんじゃないでしょうか」
また、前出の江西氏も、現在の岡山の勢いを県民性から推測する。
「岡山県民は、ほかの都道府県と比べて『控えめでおとなしい』といわれていますが、その理由は江戸時代に岡山藩のお殿さまだった池田光政が節約・節制を旨とする『倹約令』を出していたからです。
そのため、岡山県民は昔からお財布のひもが固く、辛抱強い人が多かった。でも、それは裏を返せば一度気持ちを開放してはじければ、とてつもないパワーを出すということ。そして、それが連鎖していくんです。
ウエストランドも一度、決勝敗退など悔しい思いをして、その気持ちが昨年末に一気にはじけました。次に倉敷高校がはじけた。それで『俺もいける』『私もいける』と伝わっていったのだと思います」
■県北の津山が注目されている!
岡山県出身者の勢いは、加速度的に上がっているが、それに追いついていないのが「都道府県魅力度ランキング」だ。2022年度の岡山県の順位は33位と低迷している。その理由はなんなのか?
「岡山が便利すぎるからです。岡山駅は『のぞみ』『ひかり』『こだま』とすべての山陽新幹線が止まります。その理由は、岡山からは瀬戸大橋線で四国(高松)にも行けるし、伯備線で山陰(米子)にも抜けられるからです。
また、九州側から見ると岡山は関西の入り口になっています。岡山は東西南北に行ける西日本の交通の中心なんです。それほど便利なため、乗り換え駅になってしまっている。だから、『岡山は通過するけど降りたことがない』という人が多く、岡山の魅力が伝わっていないのです」(江西氏)
では、岡山にはどのような魅力があるのか? グラビアアイドルの西永彩奈氏(岡山市出身)に観光スポットやグルメ情報を聞いた。
「実は、岡山の名物ってあんまりないんですよ。でも『岡山といえば、桃太郎伝説ときびだんごでしょ』とよく言われるので、私はJR岡山駅前にある桃太郎像をオススメします。岡山の有名な待ち合わせスポットで、東京でいえば渋谷のハチ公前みたいな場所です。
そして、桃太郎のお供といえば犬、猿、キジですよね。でも、岡山駅前の像にはもうひとつ、ハトがお供しているんです。生きているハトが桃太郎の像に止まっていることが多く、ちょっと面白い感じになっている。SNS映えするスポットかもしれません。
それから、食べ物だとブドウ。特にシャインマスカットですね。山梨県産や長野県産のシャインマスカットも食べたのですが、やはり岡山県産のものが一番おいしかった。私は岡山にいたとき、桃ではなくシャインマスカットばかり食べていました」
森末氏もブドウを推す。
「岡山のマスカットは日本一といわれているんです。オススメは『桃太郎ぶどう』。本当に粒が桃みたいな形をしていて、シャインマスカットよりも少し大きい。桃太郎は大房だとひと房1万円くらいする高級なブドウなんですよ。あと、瀬戸大橋の下、倉敷市下津井のタコ。あそこはイイダコがうまいんだ」
岡山の魅力は、桃太郎の像とブドウ、イイダコで決まりということか?
M-1で優勝したウエストランドや17人抜きのドルーリーさんの地元、津山には、どんな名物があるのだろう?
ウエストランドが語る。
「津山では今、『ホルモンうどん』というB級グルメが注目されているみたいなんですが、僕が子供の頃は、まだ有名じゃなかったんですよね。でも、津山のお肉やホルモンは本当においしいですよ」(井口浩之氏)
「津山のホルモンはとても新鮮なんです。東京の高い焼き肉店と同じくらいの質のものが、津山だとスーパーで売られているような感じです」(河本太氏)
津山のホルモンうどんについて江西氏が詳しく解説する。
「実は津山は〝牛肉文化の聖地〟と呼ばれているんです。江戸時代、まだ庶民が牛肉を食べていなかった頃から津山では〝養生食(薬としての食べ物)〟として牛肉を食べる文化がありました。そのため食べ方のバリエーションが豊富なんです。
例えば『干し肉』。これは牛肉を乾燥させたもので、噛めば噛むほどうまみが出てきます。それから『そずり肉』。マグロでいうところの中落ちです。骨の周りのお肉をそぎ落としたもの。『そぎ落とす』ことを岡山では『そずる』と言います。そぎ落とした肉なので、そずり肉。これを串焼きや炒め物、鍋物などにして食べます」
津山の魅力をウエストランドが続ける。
「あとは『さくら名所100選』にも選ばれている津山城の桜。津山にはぜひ、桜の季節に行ってください」(井口氏)
「その津山城のそばに『つやま自然のふしぎ館』があります。ここにはとんでもない数の動物の剥製があって、なぜかはわからないんですが、なんと初代館長の臓器も展示されているんです。そういったものがお好きな方は、ぜひ!」(河本氏)
「あとは、僕らのコンビ名になったショッピングセンターのウエストランド。津山にあって岡山市内にないものといえば、ウエストランドですからぜひ行ってほしいです」(井口氏)
岡山では、今なぜか津山が注目されているようだ。これもウエストランドの優勝やドルーリーさんの17人抜きの影響なのだろうか?
「いやいやいや、津山だけじゃないですよ」と言うのは江西氏だ。
「岡山は今、海外からも注目されているみたいで、海外からの訪日観光客の増加率が全国で1位らしいです(2022年6月に岡山県に宿泊した外国人は、2021年6月の9倍以上で、北海道や奈良県を抑えて1位)。そうした海外からの観光客は、岡山城や日本三名園のひとつ岡山後楽園、倉敷の美観地区に行っているみたいです」
それでは、最後に岡山県知事の伊原木隆太氏に締めていただこう。
「お笑いからサッカー、駅伝と全国のニュースのトップになるような現象が続いており、少し怖いくらいだ。
岡山からでも、全国、世界に挑戦していこうと言い続けてきたが、お笑いの千鳥さんや藤井 風さんが、岡山弁のままメディアで大活躍されるようになって、マインドの変化が出てきたのかなと感じている。この『岡山旋風』がほかにも波及効果を生むよう、頑張っていきたい」
岡山旋風は、まだまだ終わりそうにないんじゃ!