55年前の発売以降、カレーの味や商品のバリエーションはもちろん、アルミ箔を素材に採用して賞味期限を大幅に延長させたり、箱ごと電子レンジで温められるようにするなど、パッケージの改良も進められている。1月よりギネス認定マーク入りパッケージが発売 55年前の発売以降、カレーの味や商品のバリエーションはもちろん、アルミ箔を素材に採用して賞味期限を大幅に延長させたり、箱ごと電子レンジで温められるようにするなど、パッケージの改良も進められている。1月よりギネス認定マーク入りパッケージが発売

ボンカレーが誕生して今年で55年。以来、レトルトカレーの種類は増え続け、ご当地系や名店コラボなどジャンルも多種多様になり、スーパーなどでは棚に陳列される商品の数が急拡大中。ブームの様相を呈している。

なぜ、これほどまで人気に火がついたのか? ラインナップ豊富なカレーの上手な活用法は? その道のプロに話を聞いてみた。

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■スーパーで売り場がここ数年急拡大

「レトルトカレー」「名店レトルトカレー」「銘産レトルトカレー」などコーナーが細分化されているスーパーマーケット(画像提供:ライフ) 「レトルトカレー」「名店レトルトカレー」「銘産レトルトカレー」などコーナーが細分化されているスーパーマーケット(画像提供:ライフ)

ボンカレーが「世界最長寿のレトルトカレーブランド」としてギネス世界記録に認定された。世界初のレトルトカレーであるこの商品が発売されたのは1968年。それから55年、レトルトカレーはスーパーやコンビニに並ぶ当たり前の商品となった。

そして現在、このレトルトカレーが大きなブームとなっている。常時30から40種類の商品を並べるスーパーは当たり前。中には100種類以上のラインナップを扱う店も登場。価格帯も100円以下のものから1000円以上のものまで幅広い。

ここまで多彩だと、ふらっと店に立ち寄っても選ぶのが面倒になり、いつも口にしているものを選んでしまいがちだ。

だが、これまでのレトルトカレーの概念を覆すような本格的な商品が続々登場する中、無難なものばかりを選ぶのはもったいない。そこで長年スパイスの研究を続けるカレーの専門家、一条もんこさんに話を聞いた。

■3つのきっかけが人気上昇につながる

一条もんこ 年間800食以上のカレーを実食するカレー好き。カレーに特化した料理教室『Spice Life』を主宰。ボンカレーの公式アレンジレシピ監修。2018年、自らが考案したカレーをレトルト化した商品「あしたのカレー」を発売。3年間で10万食を販売するヒット商品となった 一条もんこ 年間800食以上のカレーを実食するカレー好き。カレーに特化した料理教室『Spice Life』を主宰。ボンカレーの公式アレンジレシピ監修。2018年、自らが考案したカレーをレトルト化した商品「あしたのカレー」を発売。3年間で10万食を販売するヒット商品となった

「今、レトルトカレーはものすごい人気ですね。中には200種類以上の商品を書店のように本棚に入れて陳列するスーパーもありますよ。この人気は、ある日突然爆発的に起こったものではなく、10年ほどかけて徐々に人気が上昇した結果だと思います」

きっかけは11年前だという。

「全国の小売店の売上金額を調査したデータによると、東日本大震災があった翌年2012年にレトルトカレーの購入金額が増えました。非常食として使われたため、新たな備蓄食として購入する自治体や個人が増えたからでしょう。

この流れでいくと13年は購入金額が減るはずなのですが、なんとさらに増えたのです。おそらく、久しぶりに口にした人が『レトルトカレーって普通においしいな』と改めて実感したからでしょう」

そして、本格的に人気に火がついたのはおよそ8年前だと、一条さんが続ける。

「無印良品の『バターチキンカレー』が人気となりました。この商品自体は09年に出たものですが、14年に味をリニューアル。ファミリーマートで無印のバターチキンカレーをイメージしたカレーライスが販売されて知名度が一気に広まりました。

この商品のヒットで、インドカレーやタイカレーなど、エスニックなカレーがレトルトでたくさん登場するようになりました。業界に国際化の流れを生んだ商品だと思います」

レトルトはベーシックなものか欧風カレーというイメージが強かった時代に大ヒット。「世界のカレー」というジャンルを打ち立てた名作 レトルトはベーシックなものか欧風カレーというイメージが強かった時代に大ヒット。「世界のカレー」というジャンルを打ち立てた名作

12年から右肩上がりで売り上げを伸ばしたレトルトカレーは17年、ついにカレールーの販売額を上回る。さらに、3年前からのコロナ禍がくしくも流れに拍車をかけることに。

「外出が制限され、個食が推奨された中、1袋1000円以上する高級なレトルトカレーが人気となりました。また営業時間短縮などの要請が出されたため、レトルトカレーを販売する人気カレー店が増えました」

専門店でもなかなか味わえない東南アジアのカレー料理などをレトルトで販売。ポークビンダルー、海老カレー、出汁キーマなどが人気商品 専門店でもなかなか味わえない東南アジアのカレー料理などをレトルトで販売。ポークビンダルー、海老カレー、出汁キーマなどが人気商品

■メーカー担当者はブームをどう感じてる?

16年に起業し、エスニック料理のレトルト商品を多数製造・販売する「36チャンバーズ・オブ・スパイス」の田中さんは、現場の肌感覚をこう語る。

「世界の料理を知ってもらいたいと立ち上げた会社だったので、正直しばらくの間は売れないだろうな、商品が認知されるまで長期戦になるだろうなと覚悟していました。ところが、主に高級スーパーを利用される方の多くが本格的なものを求めていることに驚きました」

市場が活気づいているのを感じたのはコロナの直前の19年ぐらいだと話す。

「ご当地カレーが増えて、お土産としてのレトルトカレーが定着し、テレビ番組でも特集されることが増えたことが大きかったと思います。

うちの会社は東南アジア各地のあまり知られていない煮込み料理が中心なので、今の人気にうまく乗せていただけたかなという感じです」

■アレンジするならベーシックな商品で

そんなレトルトカレーの楽しみ方を一条さんが熱弁する。

「レトルトカレーは大きく分類して6つのタイプがあります。ボンカレーなどの昔からある『ベーシック系』、辛さ重視の『激辛系』、本格的なエスニック料理が味わえる『ワールドワイド系』、有名店の味が手軽に味わえる『名店コラボ系』、お土産にピッタリの『ご当地系』、1箱1000円以上のものが多い『ブランド和牛系』。

最近はレトルトカレーを作る工場の機械も進化していて、タマネギを炒める工程にこだわった味わい深いルーが作れる機械や、スパイスをホールのまま使って香り高い商品が作れるものが登場しています。なので『ワールドワイド系』『名店コラボ系』『ブランド和牛系』は調味料などを加えず、そのまま味わうのがオススメです」

炒めたひき肉を混ぜ、貝割れ菜と卵の黄身をのせると、専門店で出てくるような一品に変身 炒めたひき肉を混ぜ、貝割れ菜と卵の黄身をのせると、専門店で出てくるような一品に変身

味つけのアレンジやトッピングに向いているのは?

「『ベーシック系』がベストですね。昔からなじみのある商品は、味の器が大きいというか、どんな味つけやトッピングにも合うんですよ。そのままで味と香りのバランスが完成しているものが多い中、『ベーシック系』のカレーはいろいろ手を加えてもバランスが崩れず、味わいがプラスされるという感じですね」

辛いもの好きは「激辛系」をアレンジしてもよさそうだ。

「あと、私が昔、よく食べていたのはレトルトカレーを使った炊き込みご飯。サバの水煮を入れることでボリュームが出ます。無洗米を使えば炊飯器に材料を入れるだけ。炊き上がったら混ぜるだけで完成です。

また、『ベーシック系』カレーにトマトケチャップと塩、溶かしたバターを加えれば、バターチキン風味のカレーに変身します。焼き鳥の缶詰と卵を使ったカレー親子丼も電子レンジだけで簡単に調理できます。タレ味の焼き鳥とカレーが合うんですよ」

ほかのカレーの楽しみ方は?

「『ワールドワイド系』『名店系』は、スパイスの香りや味わいの深さが楽しめます。技術の進化が一番感じられるのがこのジャンル。『ご当地系』は旅行に出かけた際、ぜひお土産に買っていただきたい。

レトルトカレーは一般的なものは賞味期限が2年と長く、お土産として配っても迷惑になりません。『ブランド和牛系』は自分へのご褒美として味わってほしい。1袋2000円以上のカレーを食べるとテンション爆上がりです」

■レトルトカレーの今後の進化は?

最後に、今後のレトルトカレーの進化について一条さんに聞いてみた。

「世界の料理がたくさん入ってくる時代になり、味の嗜好(しこう)もどんどん広がっている時代ですから、今後は東南アジアのカレーだけでなく、中東のカレーも出てきそうですね。

進化とは違うかもですが、非常食や備蓄食には賞味期限がありますから、この食料の買い替えのタイミングでストックしているカレーをアレンジするブームが起こる可能性もありますね。そうなったら、私が想像しなかった驚きのアイデアが出てくるかも。カレーのことを考えているとワクワクしますね」

進化が止まらないレトルトカレー。ぜひ皆さんも、そのすごさを己の舌で感じていただきたい!