実際にプレイするのは時々だけど、D&D用の地図はよく描いています 実際にプレイするのは時々だけど、D&D用の地図はよく描いています
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回はテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』について語る。

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どんなゲームも「一番いいところ」で平気でやめちゃえるほど、ゲームに熱くなれない私。そんな私でもテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』は11歳頃から大好き。

1974年に発売された、欧米のオタクカルチャーを象徴するようなゲームです。人気ドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』に登場したり、今年3月に『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』というハリウッド映画が公開されるなど、近頃話題になっています。さらなる日本でのプレイヤー人口増加を目指して、基本の遊び方や魅力を紹介させてください。

D&Dは世界最初のRPG。鉛筆と紙、ルールブックとサイコロがあればプレイできます。まず、ひとりのプレイヤーがダンジョン・マスター(DM)と呼ばれる、ストーリーテラーやレフェリーのような役割を担います。DMは今回の冒険の世界観や設定を説明し、オープニングシーンを描写します。

「目が覚めたら、暗くてジメジメとした部屋にいます。上からドンドンと響く音が聞こえて、天井からは泥水がタラタラ。周りには同じく目覚め始めた仲間、そして部屋の奥にまだ寝ている巨大な鬼。鬼の隣にはイボイボ付きの金棒と鍵、そして奥には出口らしき扉。さてどうする」。ここで、ほかのプレイヤーの出番です。

あらかじめ決めたキャラクターになりきり、どうするか決めます。「私は吟遊詩人のエルフ。戦闘には自信ないけど、こそこそできるので、鬼を起こさずに静かに鍵を奪います」。サイコロを振って出た数字によって、その作戦の失敗・成功が決まります。

キャラの種族(人間、ゴブリン、ドワーフなど)と職業(ファイター、ウィザードなど)やレベルによって、加点や減点などのルールがありますが、おおむね遊び方は以上。試練→選択→結果。最終目的は勝ち負けではなく、みんなで面白いストーリーを堪能することです。

ゲーム機でプレイするRPGのように、プログラムされたいくつかの選択肢から行動を選ぶのではなく、物語の展開は無限。想像力を膨らませて遊ぶと、冒険は思いがけない方向に進みます。ドワーフが鍵を奪っている間に鬼が起きたので、戦うのか、魔法で惑わすのか、話術でだますのか、など。

また、キャラクターシートに背景や特徴を細かく書き込むので、自己紹介だけで盛り上がります。「明るくて人を笑わせるのが好きだけど、幼少期に犯した過ちのせいで故郷には戻れない」とか、「嘘をつくと爪を噛む癖がある」とか。

面白がって考えたどうでもいいディテールが、ほかのプレイヤーの発想によって後で物語に関わってくることがあるのも面白さのひとつ。お互いの長所や短所を考えながら、工夫して物語を楽しむ。D&Dは多様性と寛容性を養います。人生というダンジョンでも役に立ちます。

地図やフィギュア、仮装で盛り上げる人もいますが、必要ありません。キャラや冒険をイチから考えるのが大変な場合は、公式のスターターセットを。情報がそろった冒険シナリオや、すぐに遊べるキャラ5体の記入済みキャラクターシートが入っています。興味ある方はぜひ。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。わかったように語ったけど、日本語でD&Dを遊んだことはない。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!