新鮮な豚レバーを使った「シビ辛!レバニラカレー」(1300円)。辛さは6段階から選べる(辛さによっては有料) 新鮮な豚レバーを使った「シビ辛!レバニラカレー」(1300円)。辛さは6段階から選べる(辛さによっては有料)
数種類の香辛料を掛け合わせて作り、複雑で鮮烈な香味が人気の「スパイスカレー」。味の構成は無限大のため、店により個性が光るが、その中でも唯一無二の新星が現れた。それが恵比寿『NAIZO CURRY』が提供する「シビ辛!レバニラカレー」だ!

メニュー名を聞いただけでは、かなりの変化球を想像してしまう「レバニラカレー」。もっと言えば、好き嫌いがハッキリと分かれる"クセスゴ&マニア向け"なカレーの雰囲気も漂うが、はたして......。

まず目をひくのは、こんもりと盛ってあるレバーとニラ。注文が入ってからサッと炒めていたレバーは角がキリリと立ち、新鮮さがよくわかる。そこに真っ赤なトマトとパクチーが加わり、オシャレな雰囲気でいてどこか「漢気」もあるカレーだ。

レバニラの上にはトマトとパクチーが。「シビ辛!レバニラカレー」のルーは麻婆のように赤みがかっている レバニラの上にはトマトとパクチーが。「シビ辛!レバニラカレー」のルーは麻婆のように赤みがかっている
ひと口味わってみると、まず花椒(ホアジャオ)のシビれる辛みを舌に感じ、独特の香りがふわりと広がっていく。ルーには豚ひき肉が入っていることもあり、四川料理系の本格麻婆豆腐で感じる味わいを思い出す。

しかしそれと同時に、クミンやターメリックも入っているのか「カレーの辛さと香り」もしっかり伝わり、脳が「知っているのに、まったく新しい味」に驚くのがわかる。このカレー、やはり只者ではない!

レバーはぷるぷるっと柔らかく、ふわりとした噛みごたえ。硬いレバーにありがちな臭みはまったく無く、肝の濃厚なうま味だけが印象に残る。そこにトマトの酸味が加わり、あと味はスッキリ。だからこそスパイシーなルーをまた口に運びたくなる。なんだこれは......口の中で「新しいレバニラ」と出会えたような体験だ。

朝締めしたレバーは鮮度が高く、肉質もプリプリ 朝締めしたレバーは鮮度が高く、肉質もプリプリ
いったいなぜこんな「超個性派カレー」が生まれたのだろうか? 店主の熊井良さんに話をうかがった。

「うちはもともと、『ホルモン焼き 婁熊(るくま)東京』という名で夜の営業をしています。仕入れている豚は、その日の朝に締めたものだけで、芝浦の食肉市場には毎日足を運んで厳選しています。それだけ素材の鮮度と質にはこだわっています」(熊井さん)。

レバーは少しでも古いと臭みが出たり、火の通し加減しだいで硬くなったりする難しい食材だ。しかし、「レバニラカレー」で使われているレバーは、かつて「レバ刺し」で提供されていたもの。それほど新鮮なため、臭みの「く」の字も感じないというわけだ。

レバーは食べているうちに固くなってしまうので、余分な火を入れないよう細心の注意を払いながらレバニラを炒める レバーは食べているうちに固くなってしまうので、余分な火を入れないよう細心の注意を払いながらレバニラを炒める
もともと味噌味のホルモンや豚ほほ肉を使ったカレーは提供していたが、鮮度に絶対的な自信があるからこそ、他店には追随できない「レバー」に特化したカレー作りを目指した。

「レバーを使った料理で、日本人が想像しやすいメニューといえばやはり『レバニラ』かなと。レバニラを全面に立てることで、うちのカレーに興味を持っていただこうと思いました」(熊井さん)。

辛さ、うまみ、シビれ、甘みのバランスがとれ、味わいに奥行きがある「レバニラカレー」。その絶妙な味のバランスを実現する秘密は、"3つの味"にあった。

(左から)カレーのルー、レバニラの味つけとなるタレ、スパイスソース (左から)カレーのルー、レバニラの味つけとなるタレ、スパイスソース

ひとつめは、当然だが土台となるカレーのルー。9種類のスパイスが使われ、ひき肉の油とともに深みを出す。ふたつめはレバニラを炒める際のタレ。4種のスパイスが使われているが、甘みがあり、レバーのうま味を引き立てる。そして最後が12種類ものスパイスを使った、シビ辛の肝となるスパイスソースだ。

「スパイスソースの花椒には赤花椒と青花椒、2種類を使うなど試行錯誤して、このバランスに辿りつくまで半年以上かかりました。盛り付けの直前にルーに加えるんですが、香りを飛ばさずに、鮮烈なシビれと辛みを残すため。作り方もいろいろ試した結果なんです」

ルーローホルモンと麹納豆をのせたトッピングセット(1650円)もおすすめ。ルーローホルモンは「もつ煮込み台湾風」といった味わいで、八角の香りがするとろとろのもつ。麹納豆はほんのり甘く、シビれのあるルーをまろやかにしてくれる ルーローホルモンと麹納豆をのせたトッピングセット(1650円)もおすすめ。ルーローホルモンは「もつ煮込み台湾風」といった味わいで、八角の香りがするとろとろのもつ。麹納豆はほんのり甘く、シビれのあるルーをまろやかにしてくれる
これだけ多種類のスパイスを使用しながらも、味に飽きて「食べ疲れ」することはない。「レバニラカレー」の魅力に取り憑かれた常連客も多く、取材時もオープン直後に8つのカウンター席が満席に。この味にほれ込み、毎日店に通う人もいるそうだ。

「ホルモン屋が始めたランチですが、夜と同じように一切手を抜かずに昼用の仕込みを行い、自家製カレーをお出ししています。ランチ時の屋号を『NAIZO CURRY』としたのは、それだけホルモン(内臓)の鮮度に自信があり、他にはないカレーを食べてほしい!という想いからです」(熊井さん)。

中華系のスパイス香る、摩訶不思議なレバニラのカレー。まだ出会ったことのない味がここにある!といっても過言ではない。東京にまた、スパイスカレーの新星が誕生していた。

●NAIZO CURRY 
東京都渋谷区恵比寿西2-3-5 石井ビルB1F 
営業日/火~金 11時30分~15時(14時30分LO) 
休業日/月土日祝 
公式Instagram【@naizocurry