ぎっくり腰と同じく突然襲い掛かる「ぎっくり首」 ぎっくり腰と同じく突然襲い掛かる「ぎっくり首」
「ぎっくり首」というワードを聞いたことがあるだろうか? 特に寒暖差の激しい春は、ぎっくり腰と同様にぎっくり首にも注意が必要だという。知らなかっただけで、実はぎっくり首になった経験がある人もいるかもしれない。

「目黒銀座鍼灸マッサージ整骨院」の天神木実継院長はこう話す。

「ぎっくり首とは正式名称を『急性頸部痛症』といいます。首を動かしたときにピキッとなって、首に痛みが出る症状です。筋肉が炎症を起こして、捻挫を発症している状態です。首の捻挫と考えれば分かりやすいと思います」

経験がある人も多いであろう「寝違い」も、ぎっくり首と同じ症状のひとつだという。ぎっくり首は腰痛同様、春に起きやすい気がするのだが......。

「春というよりも季節の変わり目に頻発します。この時期は寒暖差が激しかったり、気圧の変化が急激だったりと、体に負荷が掛かりやすい時期なので、ついぎっくり首を発症してしまう人が多いのでしょう。また、自律神経の乱れで体が回復しづらくなったり、内臓の状態が乱れてしまったり。新生活でストレスが増えることも影響します」

幼少期に鍼灸師を目指していたという天神木実継院長 幼少期に鍼灸師を目指していたという天神木実継院長
さらに天神木院長は加える。

「特に腰痛持ちは注意が必要です。腰痛もぎっくり首と原因は同じで、たまたま今回は痛みが首に出ただけのこと。ぎっくり首を発症する"素質"は十分に持っています」

そして、ぎっくり首は何回も繰り返すと、最悪の場合ヘルニアになったり、手にしびれが出たりする可能性もあるそう。意外と軽視できないぎっくり首。首をピキッとやってしまった場合、どうすればよいのだろうか。

「できればすぐに病院に行ってください。どうしても行けない場合は、とにかくまずは冷やすこと。ぎっくり首になった直後は筋肉に炎症が起きているので、熱を抜いてあげないといけません。水や氷で冷やしてあげれば炎症が引き、痛みが少し収まると思います」

まずは、氷や保冷剤を首の痛いところに当てて、2~3日冷やしてあげることが大切。そして痛みが引いてきたら、治癒を高めるために患部を温める必要があるらしい。ホットタオルやホッカイロ、または熱いシャワーを当てるだけでも問題ないそう。

また、痛くない範囲で首周りを動かすことを天神木院長は勧める。

「一昔前までは、ぎっくり腰やぎっくり首を発症したときは動かさないで安静第一と言われていましたが、今は動ける状態なら少しでも動くことを推奨しています。

ぎっくり首になって安静にしてしまうと、その状態で筋肉が固まってしまい、ほぐすのに時間がかかってしまいます。動ける状態なら無理のない程度になるべく動かして、筋肉を柔らかくすることが大事です」

直接、首を動かす意外にも首回りの筋肉の柔軟性を維持する方法は、肩の周りの筋肉を伸ばしてあげること。首に繋がる筋肉は肩甲骨周辺に付いていることが多いためだ。

猫背の多い現代人は、斜線部分が縮こまり、赤丸部分が伸びっぱなしになってします。そのため、このストレッチにより、斜線部分を伸ばし、赤丸部分を収縮させるのだ 猫背の多い現代人は、斜線部分が縮こまり、赤丸部分が伸びっぱなしになってします。そのため、このストレッチにより、斜線部分を伸ばし、赤丸部分を収縮させるのだ
例えば、ひじを上に挙げて、片方の手で脇を伸ばしてあげる。また、脇を揉んであげると筋肉が緩むので、症状が軽くなるそう。そして肩甲骨を動かすことを意識して、肩を回す運動も効果的のようだ。

ただし、伸ばすといっても痛みを感じるまで無理矢理伸ばすことはNG。また、患部をぐりぐり力まかせに揉むことも避けた方がいい。強く揉むことで筋肉の筋を切ってしまうので、良くなるどころか、反対に痛みが強くなってしまうのだとか。

わきの下には大円筋や広背筋など肩甲骨につながる筋肉が集まっているため、ほぐすことで肩甲骨周りが柔らかくなる わきの下には大円筋や広背筋など肩甲骨につながる筋肉が集まっているため、ほぐすことで肩甲骨周りが柔らかくなる
ほかに、日頃からできる具体的な予防策はあるのだろうか。

「まずは背伸びを習慣にすることです。肩甲骨が動くと、背中の筋肉のストレッチになるのでぎっくり首の予防になります。また、首回りの筋肉が硬くなっている人が多いので、顎を前に出して引くという首の前後運動も予防の運動になります。

あとは、肩をおもいっきり上に上げて、力をスッと抜いて脱力する。筋肉の凝りは収縮から起きるものなので、筋肉を縮めて緩めると、運動性が生まれてほぐれてきます」

まっすぐ前を向いた状態で、そのまま顔全体を前後に動かす。この際に肩の位置は動かさないように まっすぐ前を向いた状態で、そのまま顔全体を前後に動かす。この際に肩の位置は動かさないように
運動のほかには、首の後ろを温めることも有効なのだそう。下を向いたときに首の後ろにポコッと出る骨(第7頚椎)の下に、「大椎(だいつい)」というツボがあるので、ここを温めると体がポカポカしてくるとか。お風呂で熱いシャワーをここに当てると、血行がよくなり、首周りの筋肉が柔らかくなるそうだ。

季節の変わり目に起こることが多いぎっくり首。一度やってしまうと再発することも多いらしいので、できれば発症しないように日頃から気をつけたいものだ。特に、新生活が始まる人や、腰痛持ちの人は気を付けよう!

●天神木実継
目黒銀座鍼灸マッサージ整骨院院長。幼少期に鍼灸治療を見て興味を抱き、鍼灸師に。「症状で悩んでいる人を助けたい」という思いから、目黒銀座鍼灸マッサージ整骨院を開業。患者の気持ちに寄り添い、心も体も癒される整骨院を目指し、日々精進している。柔道整復師・はり師・きゅう師の資格を保有