アッサラームアライクム!(アラビア語の挨拶) 先日はイスラム教徒御用達のハラルマーケットを訪れましたが、今回はなんと、「都内にまるでトルコを旅しているかのような気分になれる美しいモスクがある」と聞いて行ってみました!
東京・代々木上原にある日本最大のモスク「東京ジャーミイ・トルコ文化センター」。イスラム教徒はもちろん、イスラム文化や芸術に興味のある人向けの見学や無料のガイドツアーも行なわれ、その美しい建築はインスタなどでも話題となっています。
さっそく電話で取材依頼をすると、返事は微妙?「もしかして、セクシーな写真のある週プレはハラーム(禁じられているもの)!?」と若干の不安を抱きながらも、とりあえず美しいモスクを拝もうと現地に向かいました。
代々木上原の駅を降り5分ほど歩くと、唐突にドーンと存在感を放つモスクが!
「おおお、美しい! そしてこんな東京のど真ん中に本当にこんな立派なモスクがあるとは......!」
モスクの1階ロビーには50人以上の見学客が集まっていました。美術館のようにザワザワとする中、広報担当の下山茂さんによる見学ツアーが始まります。ワクワク!
「ここに最初の礼拝所ができたのは1938年です。ロシア革命を逃れ日本へ避難したトルコ系民族のタタール人たちが礼拝所を求め、日本政府や財界の協力によって完成しました。
その後、50年ほどで老朽化しいったん取り壊されたものの、トルコからの寄付により2000年に現在の形に生まれ変わりました」
再建にあたってはトルコの建築家が設計し、多い時には職人が100人くらい来日したのだそう。コンクリート、鉄、水以外の材料や、タイルや大理石、調度品なども全てトルコから運んだのだとか! どおりで本場さながらの造りだと感心しました。
ロビー横の応接間に注目すると、トルコ風の部屋の中心には小さな噴水が、壁際にはブルーのタイルがあしらわれた暖炉がありました。
「調度品などに描かれた花はチューリップの原種です。小さくて茎が短く可愛らしい。花弁の先が尖っていたり形が今のものと異なるので、皆さんチューリップだとは気付かないんですけどね」
実はチューリップの原産地はトルコ。花として愛されているだけでなく、宗教的、国家的なシンボルとして崇められてきました。
多くの人にオランダの花と思われている背景には、16世紀ヨーロッパへ渡ったチューリップにオランダが着目し、栽培や品種改良に力を注いだことが関係しています。
チューリップはその希少さから富の象徴となり、価格が高騰。球根一個で家が建つほどだったとか! この現象は「チューリップ・バブル」と呼ばれ、世界三大バブルのひとつとして知られているそうです。
チューリップにそんな歴史があったなんて、ぶっとび~!(←昭和バブルギャグ)
「チューリップ以外にも数字や方程式、カメラなど、ヨーロッパを通して日本に伝わってきたものはたくさんありますが、それらはイスラム文明やインド文明、ギリシャ文明などが大きく貢献しているんですよ。
ヨーロッパ史に偏った世界史の教科書もありますが、文明は全てヨーロッパが生んだものではなく、それぞれの文明の位置関係を知ってほしいと思います」
興味深いトリビアに感心していると、礼拝を告げるアザーンが響いてきた......! な、懐かしい! 私は旅中に何度この音色を聞いたことか......。
「2階で礼拝が始まるので見学に行きましょう! 階段の天井もご覧くださいね」
階段を上がるとバルコニーがあり、目の前には青い空へ伸びるミナレット(尖塔)と礼拝所の入り口が現れた。礼拝堂に入る時は、女性はスカーフで頭を覆うことが必須(備え付けのものもあり)。男性もタンクトップや半ズボンなど肌の露出は厳禁です。
靴を脱ぐと白い大理石のフロアがひんやり。入室すると床には植物文様のトルコ絨毯が敷かれ、ドーム型の高い天井と白い壁、ステンドグラスからの光で室内は明るい。シャンデリアの下では人々が一列に並んで立ち、お祈りが始まっていた。(礼拝中は撮影禁止)
アラビア語のお祈りが唱えられる中、人々は立礼の姿勢から床に額を付ける動作をして神を讃える言葉を繰り返している。私はその様子を見つめながら、瞑想のような感覚を感じていた。光と静寂の中で心を落ち着かせ、神と向き合うひととき......。
礼拝所は男女別のスペースが用意され、上階が女性用。その理由は、近くに異性がいたり、お辞儀する際にお尻が上がると、気になって雑念が入ってしまうからだそう。
上階ではモスクの内装がより間近で美しく見えたので、女子はラッキーかも......?
見学ツアーを楽しんだ後は、1階のハラルマーケットでお買い物タイム。フムス、デーツなど以前当コラムでも紹介した食材や、アラベスク模様のコースターなどが購入できます。私はざくろジュースにフムスペースト、ドルマの缶詰(葡萄の葉で巻いた料理)をゲット!
最後に下山さんに挨拶に行くと、
「楽しんでいただけましたか? どうぞアナタらしく書いてみてくださいね」
と、突然の掲載許可がおりました! え、いいんですか!?
「ははは。実は昔、私も月刊プレイボーイで『ミンダナオ島のイスラム教徒ゲリラ会見記』など執筆したことがありましたよ。元々は早稲田大学の探検部でね、アフリカのナイル川探検やサウジアラビアのメッカ巡礼など、色々旅もしてきたんですよ!」
えええ! 下山さん、実は元旅人でした。しかも月プレにも! まさかの大先輩! 旅人同士何か通ずるものを感じていただけたからでしょうか、とても温かい笑顔をいただきました。
「ニュースで流れるテロの映像などで、偏見を持たれてしまうのは悲しいことです。ここへ集まる人たちは皆とても心が温かい人たちばかりですよ。日本人以上に礼儀正しい人もいる。怖いとか間違ったイメージではなく、正しいイスラムを知ってもらいたいですね」
私と話している間にも、下山さんの元には日本在住のインドネシア人学生や、これからパレスチナへDJをしに行くという日本人青年などが訪れました。その様子からはモスクがみんなの心の拠り所であり、下山さんがお父さんのように慕われていることがうかがえました。
イスラム文化について学ぶことができ、まるで本場トルコを訪れたような美しい場所「東京ジャーミイ」。皆さんもぜひ訪れてみてくださいね!
■東京ジャーミイ・ディヤーナト トルコ文化センター
【https://tokyocamii.org/ja/】
●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。2014年より『旅人マリーシャの世界一周紀行』を連載。
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