多くの日本人を苦しめる花粉症。くしゃみ、鼻水、目のかゆみに襲われ、日々ツラさと戦っている人も多いはず。しかし花粉の被害はそれだけではなく、髪の毛の"土台"でもある頭皮にも影響を及ぼすという。つまり、髪を失う危機にさらされているのだ。
「花粉症はいわゆるアレルギーのひとつ。花粉が体内に侵入すると、それを敵とみなして追い出そうとアレルギー反応が起き、炎症を起こしている状態です。くしゃみ、鼻水、目のかゆみは花粉症の代表的なアレルギー反応ですが、人によっては鼻づまりだけ、目のかゆみだけとタイプも違いますし、時期によっても変わったりします」
そう話すのは、皮膚科医の河合佑光子(ゆみこ)さん。「花粉症」とおおざっぱに呼ばれているが、それらの症状は正確には花粉による「アレルギー性鼻炎」や「アレルギー性結膜炎」。しかし、花粉によるアレルギー反応はこれだけではない。
「花粉症が鼻や目に症状が出るように、アレルギー反応の多くは粘膜に出ます。甲殻類アレルギーの人が口や喉がかゆくなるのも同じです。しかし、場合によっては、口や喉だけでなく腕や背中などに蕁麻疹(じんましん)が出ることも。また、植物に触れていつのまにか炎症していることがあるように、直接肌に触れたりしても炎症を起こすこともあります」
アレルギー反応は、体内からも外部からも炎症を起こす要因となっているのだ。そして、それは花粉も同じ。花粉が皮膚に接触することにより、皮膚トラブルが起きる。それが「花粉皮膚炎」だ。
「特に、直接花粉が触れる顔に症状が表れやすいです。外部からの刺激に影響されるので、乾燥肌だったり、アトピー性皮膚炎だったりと肌のバリア機能が弱い人がなりやすいんです。
頭は髪の毛で覆われているため、直接頭皮に花粉が触れることは滅多にありません。ただ、顔の皮膚も頭に繋がっていますから、人によっては頭がかゆくなる人も稀にいます」
逆にいえば、すでに頭の寂しい人はノーガードもしくはかなり防御力が低いことになる......。特にサラリーマンは日中に帽子をかぶることもできない。顔と同じように皮膚をそのまま花粉に晒(さら)さなければならないのだ。
花粉皮膚炎は、肌の乾燥やかゆみなどを引き起こすが、頭皮に表れるとどうなるのか。
「頭皮が乾燥すると、体の皮膚と同じように外部刺激に弱くなり、毛根にもダメージが与えられます。当然、毛根が痛めば抜け毛にもなりやすい。またかゆみも起きていればかいてしまうことで、物理的なダメージを負うのでさらに頭皮環境は悪化します」
くしゃみや目のかゆみに意識がいってしまっていたが、実は頭皮もダメージを負っている可能性があるのだ。
「そこなんですよね。やはり鼻や目の粘膜に一番キツイ症状が表れる場合が多いので、その苦痛がひどくて皮膚の症状に気が付いていないケースも多いんですよ。顔はまだしも、頭皮は日常で見たり触れたりする機会こともないので、特にわからないのかもしれません」
では、もし顔や頭にかゆみがすでにある場合、どうしたらいいのか。
「弱い症状であれば、花粉症の内服薬でだいたい収まります。点鼻薬や点眼薬ですと、効果が出るのは局所的ですが、内服薬ならほとんど全身に効きますから。もちろん人によって薬の効果はさまざまなので全ての症状がなくなるわけではないのですが、たいていは軽減されます。
それから、これは予防にもつながりますが、とにかく保湿ですね。乾燥ケア向けのシャンプーだったり、保湿ローションなどもあるのでそれらを利用するのがベターです。あとはシャンプー前にしっかりすすぎ洗いをして、頭皮の汚れなどが落ちやすい状態にしておいたほうがいいです」
苦痛を与えるだけでなく、薄毛という悲痛も与える花粉。できる限りの予防をしつつ、さっさとこの季節が過ぎ去ることを願おう。
●河合佑光子(かわい・ゆみこ)
2017年、東海大学医学部卒業。東海大学病院や秦野赤十字病院などに勤務し、昨年12月、東京・渋谷に美容クリニック「DA VINCI BEAUTY CLINIC」開業
公式インスタグラム【@dr.yumiko.k】
DA VINCI BEAUTY CLINIC【https://davinci-clinic.jp/】