バイアグラなどの先発医薬品に加え、近年はジェネリックのED治療薬を処方するクリニックも増えている バイアグラなどの先発医薬品に加え、近年はジェネリックのED治療薬を処方するクリニックも増えている
今や若い世代にも身近なものとなったED(勃起不全)の治療薬。バイアグラやレビトラといった有名な薬のほか、近年はジェネリック薬を処方するクリニックも増えている。

しかし、薬ごとの効果の違いや正しい飲み方について、きちんと把握している人はどれだけいるだろうか。ED治療専門の浜松町第一クリニック院長・竹越昭彦氏に聞いた。

■スーパーカーか、プリウスか

――ED治療の代表的な薬には、バイアグラ、レビトラ、シアリスがあります。しかし、レビトラは2021年10月に発売中止となり、現在国内で正規品は流通していないそうですね。

竹越 たしかにドイツのバイエル薬品が販売していた正規品は流通していませんが、その代わり、同じ成分の「バルデナフィル錠」というジェネリック薬があります。こちらでも従来のレビトラと効果はまったく一緒ですので、事実上、現在もED治療薬の代表は、この3種類と言えます。ちなみに、バイアグラは「シルデナフィル錠」、シアリスには「タダラフィル錠」というジェネリック薬があります。

――それぞれジェネリック薬があるということですね。このバイアグラ、レビトラ、シアリスの違いとは?

竹越 バイアグラとレビトラは非常によく似ています。薬の設計図である分子構造式がそっくりなのです。しいて言えば、バイアグラの主成分である「シルデナフィルクエン酸塩」は水に溶けにくいため、水溶性の成分が含まれているレビトラよりも若干効き目が出るのに時間がかかります。ただ、ほんのわずかな違いです。

それに対してシアリスは、効果が出るのが服用して2、3時間後からと遅く、爆発的な効き目もありません。その代わりに服用してからも長時間効果が持続し、20時間以上も作用します。製薬メーカーさんも「自然な勃起を促す」と説明していますね。

自動車でいえば、すぐに猛スピードが出せるスーパーカーがいいか、安定して長距離を走行できるプリウスがいいのかといった違いです。

ED治療薬として代表的な存在のバイアグラ(右)とシアリス(左) ED治療薬として代表的な存在のバイアグラ(右)とシアリス(左)

■服用は食前か、食後か

――どのように使い分ければいいのでしょうか?

竹越 「今すぐになんとかしたい」といったときにはバイアグラかレビトラでしょう。「先がちょっと読めないけど念のため」というときはシアリスですね。

ただ、いずれも効果に個人差はあるので、この説明はあくまで目安であることにご注意ください。実際の効果がどれくらい出るのかは、飲んでみないとわからないところがあります。

だから、ほとんどのクリニックではお試しセットのようなかたちで、複数種類のED治療薬を少量ずつセットで販売しています。たとえ友人から「バイアグラが良かった」などアドバイスされても、それが本人に効くかどうかは未知数なので、まずは一錠試しに服用してみてください。初めから大量に購入するのはおすすめしていません。

――服用は食前、食後のどちらがいいのでしょうか?

竹越 いずれも食前での服用を推奨しています。というのも、ED治療薬は胃ではなく腸で吸収されるので、胃に食物が詰まっている状態では有効成分が腸に届くのが遅くなり、効き目も出にくくなります。

この中では「シアリスは食事の影響を受けにくい」と説明されがちですが、その点では同様であり、やはり空腹時の服用がいいでしょう。

しかし、実際にED治療薬が必要になるかどうかは、食事の前にはわからないものです。特にバイアグラやレビトラは効果時間がシアリスよりも短いため、食前に飲んでいざというときに効果が切れたらどうしようと心配になるかと思います。その場合は食事を腹七分目くらいまでに抑えたうえで、食後2時間ほどしてから服用するようにしてください。

■「ED治療薬は心臓に悪い」という噂の真偽

――この3種類で最も人気なのは?

竹越 ジェネリック薬まで含めたら、やはり最も有名なバイアグラですね。特に若い世代は有効成分が最も少ない「25mg」でも効き目は十分です。

――ED治療薬に副作用はありますか?

竹越 ED治療薬は性欲亢進剤ではなく、血管を拡張して血圧を下げ、血のめぐりを良くする薬です。その結果として性器を膨張させます。だから、いずれの薬も顔が火照りやすくなったり、鼻がつまりやすくなったりといった副作用があります。あとは動悸がするといったことでしょうか。お酒の副作用と一緒ですね。

――それこそお酒と一緒に飲むのは?

竹越 適量であればリラックス作用で相乗効果がありますが、血のめぐりが良くなっているため、普段よりもお酒がまわりやすくなってしまうことには注意してください。

――ネット上には「ED治療薬を飲むと早死する」といった情報もありますが......。

竹越 当院でも「ED治療薬は心臓に悪いのですよね?」といった質問は非常に多いです。「勃起力が上がる=心臓に負担がかかる」といったイメージが広まっているのでしょう。しかし、これは間違いです。

例えばバイアグラは、もともと狭心症の治療薬として研究・開発されました。薬としては、むしろ心臓への負担を軽減するものなのです。

ED治療薬を飲んで死亡した方の原因は、薬の服用によるものではなく、勃起力が上がることでテンションが上がってしまい、いつもより性行為を頑張り過ぎたことで心臓に負担がかかってしまったという場合がほとんどです。心臓に持病をお持ちの方は、この点を特に注意してください。

――依存性はありますか?

竹越 ご説明したように血のめぐりを良くするだけの薬ですから、飲みすぎて中毒になることも、耐性がついて効きにくくなるといったこともありません。ただ、精神的な依存は患者さんによっては生じるかもしれません。

つまり、ED治療薬を飲めば勃つけども、「もし飲まなくて勃たなかったら......」という心配から、身体的には問題なくてもED治療薬がないと不安になるといった状態です。

そういった場合は徐々に有効成分の量を減らしていき、薬の量が減っても勃起するという自信をつけていくといった対策が考えられます。いずれにせよ、EDになる理由も効果のある薬も患者さんによって異なりますので、まずはお気軽にクリニックの医師に相談していただきたいですね。

竹越昭彦

●竹越昭彦(たけこし・あきひこ)
1966年生まれ。1991年に日本医科大学卒業。その後は、日本医科大学付属病院、東戸塚記念病院の勤務を経て、2004年10月に浜松町第一クリニック開院。以降、同医院の院長を務める。著書に『40代からの心と体に効く[生涯SEX]のすすめ』(扶桑社新書)がある。