ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。

それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。

そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。

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5月に入ったというのにいつまでも寒いな~と思っていたら、急に気温30度超えの真夏のような日々が続くここ数日。そうなってくるとがぜん、冷たいものが食べたくなってくる。今日の気分は、寿司だ。それも、いつもの「はま寿司」ではなくて、いや、はま寿司は最高に楽しくて美味しい店なんだけど、もうちょっとだけ値が張ってもいいから、もうちょっとだけ本格的に美味しい寿司。とはいえ僕はまだ、ふらりと入れる回らない寿司屋に行きつけがあるほどの男ではない。そこで思いしたのが「すし銚子丸」。

銚子丸は、銚子港直送のネタが売りの、高級ネタから手頃なネタまでを幅広く揃う回転寿司チェーン。以前、ありがたいにもほどがある仕事で、「5000円の軍資金を提供するので、銚子丸で好きなものを飲み食いしてください」というテーマの記事を書いたことがあり、あれは本気で天国だった。その時は贅の限りをつくしたけれど、ひとつ感じたことがある。

例えば、舌の上でとろける夢の美味しさだった、税込み572円の「中トロ」。今回頼む高級皿はそのひとつと決め、あとはひと皿154円からある安めのネタや巻きもので攻めれば、予算を節約しつつも高い満足度を得られるんじゃないだろうか? そもそも、銚子丸はリーズナブルなネタもきちんとうまい。行くか、銚子丸へ。

「すし銚子丸」  「すし銚子丸」
というわけで銚子丸にやってきて、ひとまず今日の天気にぴったりの「氷彩サワー レモン」を注文。ギンギンに冷えて甘酸っぱいサワーが、心身にすーっと浸透してゆく。

「氷彩サワー レモン」(495円)「氷彩サワー レモン」(495円)
さて寿司を検討。と思いきや、ここで驚いたことがひとつ。銚子丸では、オープンから午後2時までの間のランチタイム、「あら汁」が無料で、しかもおかわり自由なのだった。そのことを店員さんに教えてもらい、そういうことならと、とりにいくと、巨大寸胴鍋のなかに、鮭やぶりのあらがあふれんばかりに入っている。これはもはや一品料理。汁の域を超えて、具沢山のあら煮。はっきり言って、これだけをつまみに1、2杯やって帰っても満足できるレベルだ。そこにフリーのガリを足し、スタートデッキとする。

スタートデッキ  スタートデッキ

いろんな魚の身がたっぷりのあら汁  いろんな魚の身がたっぷりのあら汁
あら汁、骨や皮が多くてちょっと食べにくいけれど、ほじくり食べが楽しく、なにより美味しすぎる。汁にはかにや海老系の旨味も感じるから、それらのネタのだしも効いているのかもしれない。考えてみれば、巨大回転寿司店で出た魚のあらが、思いっきりこの椀に詰め込まれているわけで、贅沢極まりない料理とも言える。

さてさて、あらためて寿司を検討。と思いきや、ひととおりメニューを眺めて気になってしまったものがある。「丼」メニューコーナーだ。税込みで3132円の「銚子丸 特選ちらし」をはじめ、「まぐろ一座丼」「オーロラサーモン一座丼」などいくつかのラインナップがあり、なかでもお得な「とろたく丼」に、いかんともしがたい魅力を感じてしまったのだ。

とろたく。ねぎとろ×たくあん。そもそも僕はこいつが大好きで、寿司屋にあれば必ず頼むし、家でもよくつまみに作る。スーパーで比較的リーズナブルに売られているねぎとろに刻んだたくあんを加えるだけだから、すごく簡単だ。海苔、大葉、納豆などでアクセントを加えるのもいい。

そんなとろたくの、信頼のおける銚子丸謹製バージョン。さらにそれの、超たっぷりバージョン。食べてみたいに決まってる。そもそも、とろたくに特化した丼があることが、銚子丸さん、わかっていらっしゃる。よし、今日は思いきってアラカルト路線は捨て、とろたく丼1本で勝負してみるか!

えいっと注文!  えいっと注文!

「とろたく丼」(1067円)「とろたく丼」(1067円)
すぐに到着したとろたく丼は、清々しいほどに、とろたく丼だった。木桶を模した大きめの器、全面とろたく。こんなにもとろたくな食べものは、かつて見たことがない。たっぷりとのる薬味をいったん丼のすみに寄せてみると、さらに凄みを増す圧倒的とろたく感。これを今から、独り占めしていいんだ。その非日常的シチュエーション、嬉しすぎる。

圧倒的とろたく感  圧倒的とろたく感
丼に別添えで頼んだわさびをのせ、全体に遠慮なくだばだばと醤油をかけて、いざかっこむ! くさみなどどこにも見あたろうはずのない、銚子丸のねぎとろ。そこにカリポリとアクセントを加える細切りたくあんと、海苔の風味。さらに薬味のねぎがシャキシャキ食感を加え、キリッとした酢飯が、とろりと甘いねぎとろとハーモニーを奏でる。

度を超えてうますぎる度を超えてうますぎる

なんて、なんて幸せな丼なんだろうか。また、とろたくの量が惜しみなく、定規で計ったわけではないけれど、ごはん1.5cmに対し、とろたく1.5cmくらいの割合でのっている。これ、寿司換算で何貫ぶんになるんだろう? あぁ、思う存分とろたく欲を満たしたいとき、来るべき場所が見つかった。

全国のとろたく好きに朗報! 抑えきれぬとろたく欲を満たしたければ、銚子丸へ!

●パリッコ
1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家、イラストレーター。
著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。2022年には、長崎県にある波佐見焼の窯元「中善」のブランド「zen to」から、オリジナルの磁器製酒器「#mixcup」も発売した。
公式Twitter【@paricco】

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