"コロナ明け"(感染症法上の分類を2類相当から5類への引き下げ)で、同僚や友人との飲み会が増えてきた。

これまで酒を控えていた反動で、毎晩のように飲み出すと、やはり気になるのが肝臓の数値"ガンマGTP"だろう。ニュースなどでは"チャットGPT"の話題が多いが、今、この瞬間に大事なのはガンマGTPなのだ。

そこで、肝臓専門医で「銀座しまだ内科クリニック」の島田昌彦理事長にガンマGTPについて聞いた。

■コロナ禍の運動不足で脂肪肝の人が増えている

――まず、ガンマGTPって、なんですか?

島田 ガンマGTPというのは、胆道から出てくるタンパク質を分解する酵素で、肝臓の解毒作用に関わっています。なぜ、ガンマGTPの数値を気にするのかというと、過度の飲酒や脂肪肝、胆管がんなどによる胆道の圧迫などで血液中に流れ出て、数値が上がってくるからです。

――どれくらいの数値だったら気をつけたほうがいいんですか?

島田 厚生労働省の基準では、男性は50以下が正常値です。そして、80以上になると、お酒の飲みすぎか、脂肪肝なので「気をつけたほうがいい」状態です。また、100を超えると「機会があれば肝臓医などのいる医療機関を受診したほうがいい」と受診勧奨になり、200を超えると「必ず受診してください」となります。

ちなみに、健康診断などの血液検査ではガンマGTPのほかに「AST」(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)と「ALT」(アラニンアミノトランスフェラーゼ)という項目があり、これらの数値が高いと肝細胞そのものが壊れているという状況です。

肝細胞が壊れると、肝硬変や肝臓がんのリスクが高くなるので、ガンマGTPよりも、ASTやALTの数値が高いほうが注意が必要です。

ただ、ガンマGTPが上がってきてから、次にASTやALTが上がってくることが多いので、受診のきっかけとしては、ガンマGTPの数値を気にするほうがいいでしょう。

――ガンマGTPの数値が高くなる原因はなんですか?

島田 やはり、お酒の飲みすぎが大きな原因です。特に、ここ数ヵ月は私のクリニックではお酒が原因で受診する人が増えています。コロナ明けで会社関係の飲み会が増えていて「そんなに飲みたいわけじゃないけれども、やはりコミュニケーションの一部でもあるので断りきれない」そうなんです。

それから、メタボ脂肪肝も増えています。コロナ禍でお酒を飲む量が少し減ったけれども、通っていたスポーツジムなどをやめて運動する機会が減った人、運動不足によって脂肪肝になっている人が増えているんです。

あと、お酒とメタボ脂肪肝のミックス型も最近は多いですね。お酒をたくさん飲んでいるし、食事もたくさん食べているという方。やはりコロナ禍によるストレスなのでしょうか。

――受診されるのは、どのくらいの年代の人が多いんですか?

島田 一般的にメタボ脂肪肝の方のピークは、男性では40代から50代です。ただ、20代でもメタボ脂肪肝になります。学生時代に運動部などでバリバリに活躍していて、社会人になって急に運動をしなくなって、お酒を飲む機会が増えたという人などが多いですね。

■まずは、食事量を1、2割減らしてみる

――ガンマGTPが高くなるのを予防するにはどうしたらいいんですか?

島田 まずは、お酒を控えることです。それから、患者さんからよく「どれくらいの期間、禁酒すればガンマGTPは下がるんですか?」と聞かれるのですが、それには「1週間くらいで数値が下がり始めます」と答えています。

1週間で正常値に戻るのではなくて、改善傾向になるということです。禁酒ではなく、お酒を少し控える減酒であれば、それよりも当然期間は長くなり、2週間から1ヵ月程度です。

そのため、健康診断の前に1週間お酒を飲まなかったり、2週間から1ヵ月お酒を減らしていれば、ガンマGTPは下がってくるんです。さらに、それに伴ってASTやALTも改善してきます。

そのため、健康診断の直前に禁酒や減酒をすれば、いい結果を出すことはできるのですが、それが本当に自分の健康のためになるわけではありません。

ただ、私がそれを完全に否定したくないのは「お酒をやめれば、ガンマGTPの数値は下がるんだ」ということを知ってもらえるからです。

中にはお酒をやめても数値が下がらない人もいるので、そういう場合はほかの病気を疑うこともできますから。

ガンマGTP

――ガンマGTPが、どれくらいの数値だと禁酒したほうがいいんですか?

島田 一概には言えないんですが、ガンマGTPが200以上だと「必ず受診してください」ということになるので、200を超えている人は禁酒したほうがいいと思います。

200未満だったら減酒となりますが、この場合は普段の半分くらいの酒量に減らしてみてください。

禁酒となると、なかなかうまくいかない人が多いんですが、減酒だと多くの人が成功しています。

――お酒ではなく、食べすぎや運動不足による脂肪肝の場合は、食事に気をつけるということになるんですか?

島田 そうですね。例えば、現実的な目標のひとつとして「今の体重の5%を減らしましょう」と指導します。例えば、70㎏の人だったら、4、5ヵ月かけて3.5㎏ほど体重を減らします。それが達成できたら、最終目標となる、元の体重の10%を落とす。70㎏の人だったら、63㎏まで減らせると理想です。

体重を5%減らすと脂肪肝などは良くなり、10%落とすとかなり改善されます。

ガンマGTP

――具体的にはどうすればいいんですか?

島田 まず、夕食の時間帯を早めてください。夜遅くに食事を取ると、一日のうちの余ったカロリーが内臓脂肪として蓄えられて、脂肪肝になりやすいんです。特に夜は糖質を減らしましょう。

食事量は、過激なダイエットは体を壊しやすいので、1、2割減らすくらいで大丈夫です。ただし、お菓子は1、2割ではなく、3割くらいは減らしたい。あと、果物も注意が必要です。果物に含まれる糖質の一種である果糖は吸収が早いので、夜中に果物を食べすぎると脂肪肝になりやすいんです。

それから食べる順番も重要です。野菜から食べると良いことはよく知られていると思いますが、野菜以外にも肉や魚も、ご飯を食べる前に取ると糖質の吸収がゆっくりになるという報告があります。ですから、焼き肉のときなど肉とご飯を一緒に食べるのではなく、先に肉を食べて、最後にご飯を食べるようにすると違ってきます。

あと、肝臓が悪い人はミネラル不足になっていることが多いので、海藻や牛乳など、ミネラルが多い食品はオススメです。また、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)も肝臓にいい油なので、イワシ、サバ、サンマなどの青魚を食べるのも効果的です。

ガンマGTPが高いのは、「お酒の飲みすぎだよ」「食べすぎだよ」という肝臓からのメッセージです。そこで、「お酒をやめろ」とは言いませんが、少しだけ減らしてみる。

また、食事も普段、大盛りを食べているなら普通盛りにしてみる。そんな少しの努力でも数値は変わってきます。コロナ明けで飲み会などが多くなっているかもしれませんが、ぜひ、自分の体をいたわってあげてください。

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チャットGPTも気になるが、ガンマGTPも同じように気にしていたい。