番組に関しての思い出をダラダラ話すだけなので、過度な期待はしないでください番組に関しての思い出をダラダラ話すだけなので、過度な期待はしないでください
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は先日最終回を迎えた『タモリ倶楽部』について語る。

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ついに終了してしまった『タモリ倶楽部』。最終回に参加させてもらいながら、実感はなかったけど、たまに見かけるお弁当屋さんが「タモリ倶楽部ロケ弁 永久発注」という張り紙を外したのを見て、やっと身に染みました。永久発注が嘘かマコトかわからないままですが。

いろいろな方が『タモリ倶楽部』の功績を論じている中、私なんかが語るのもおこがましいと思いつつ、個人的に好きだったところや思い出を書いてみたいと思います。

私が初めて出演したのは、書泉グランデで鉄道本をあさる回(2014年放送)。現地入りしてすぐに、それまで経験した現場とは空気感が違うのがわかりました。出演者は全員私服で、同じヘアメイクさん。タモリさんまでも控室が一緒(もちろんコロナ前まで)。カメラが回っているときと休憩のときのみんなのテンションや会話内容に差がなく、「テレビ用」的なノリがあまりない。

まさに自然体で、皆さんが一緒に面白がっている距離感の近さが印象的でした。テーマやメンバーによってムードが違うときもありましたが、たまにバラエティで感じる爪痕残そう感? を感じることはほとんどなかった気がします。

出演者同様、制作サイドも「この回は最終的にこれを伝えたい!」とか「最後はこうまとめる!」という意図を前面に出さなかったところも好きでした。

もちろん、視聴者が面白がるものを作りたいという気持ちは大前提だけど、エンディングで「だから何?」で終わっても良しとされてました(たぶん)。最終的によくわからなくても、好奇心を丸出しに自然体で面白がる人を見せられたらオッケーだったと思います。

この「すごい展開見せたい!」がない脱力感が人気の理由のひとつだと思いますが、少し勘違いされていたところもあります。よく「『タモリ倶楽部』の緩さが好き」といった声を耳にしますが、結果的に緩い空気感が出ているだけで、全然緩く作ってなかったのがミソ。

スタッフさんは「これでもか!」というほど情報を集めて入念に準備した上で、出演者の盛り上がり次第で用意したものを全部捨てる。なかなかできない覚悟です。

たまに、ほかのお仕事で「『タモリ倶楽部』みたいな緩いノリで」という指示をいただくことがありましたが、しっかり武装した上での緩さと、ただの雑さは違う気が......。

ダラダラ脱線できるのも、しっかりとした土台があるからで、丸投げのようなことは一切ないからこそ、あの自由な雰囲気が生まれたんだと思います。そして、そろそろ恥ずかしくなってきたし偉そうになってきたので、真面目な話はここまでにします。

保存しといた約10年分の台本の山をあらためて見ると、自分は鉄道とは関係ないテーマのほうが出演回数が多いことに気づきました。そして流浪していないコロナの時期に印象的な企画が多い。いつか、特に好きだった「保留音ビンゴ」の回を振り返ります!

最後に、寂しがってるみんな! ぜひ、新番組『衝動に駆られてみる』をチェックしてみてください。流浪のチームと共に『タモリ倶楽部』のDNAを受け継げるよう、頑張ります。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。徳永ゆうきくんが最終的に「電車クラブ」の会員になれたかどうかが、なぜか気になってしょうがない。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!