世界の中心から地の果てまで縦横無尽に旅をする旅人
「地の果て」
この言葉にはどこか旅人の心をくすぐるロマンがある。
永遠の旅のバイブル『深夜特急』（沢木耕太郎著）を読んだことのある人ならばきっと、アジアからユーラシア大陸を横断して辿り着く、ヨーロッパ最西端の国ポルトガルを思い浮かべる？
断崖絶壁の岬に立ち大西洋を眼下にすれば、「思えば遠くへ来たもんだ」と呟きたくなること間違いなし。ところでこの名言、旅人が残したものと思い込んでいましたが、実は海援隊が歌う歌謡曲だと知り、聞いてみると昭和レトロなエモさ爆発でした。
今回はこの曲をBGMに......それでは読んでください。旅の情緒漂う「地の果て」3選です。
■「ロカ岬」ポルトガル・リスボン郊外
「地の果て」といえば、ポルトガルのリスボン郊外にある「ロカ岬」。「ここに陸終わり海始まる」と詩人ルイス・デ・カモンエスに詠まれたユーラシア大陸最西端の岬であり、旅人の憧れの地として観光地にもなっています。
左に見える影は140mある断崖の上に立つ十字架
「ここに地終わり海始まる」と刻まれている
有料で「ユーラシア大陸最西端到達証明書」の発行もできる
私もいつかこの岬に立ってみたいと思っていて、ついに辿り着いた時の感動といったら。
それにしても強すぎる海風にビュウビュウと煽られながら、
「この断崖絶壁から落ちたら火サスだな......」
ポルトガルにまで来てつい頭には俳優の船越さんがよぎるのでした。
眼下に広がる大西洋
ここは今や観光地化され、日本から最も行きやすい「地の果て」のひとつだと思うのですが、逆にこの地からすれば極東「黄金の国ジパング」が地の果てであり、かつて大航海時代の幕開けには、ポルトガルの船が黄金郷を目指し大海原に乗り出したそうな。
欧州人にとって憧れだったジパングですが、今やどうでしょう。物価が安くて「ある意味、黄金の国ジパング」って感じかしら？
大航海時代を記念した石碑「発見のモニュメント」
ちなみにポルトガルにはもうひとつ最西端の「サグレス」という街があり、沢木耕太郎氏が訪れたのはそっち。街から行ける「サン・ヴィセンテ岬」が最果てとも言われています。
ロカ岬へ行く時に経由するのはリスボン郊外の世界遺産の街シントラ
■「喜望峰」南アフリカ・ケープタウン
アフリカ大陸最南西端「喜望峰」。500年以上も昔、まだ世界地図が明らかになっていない時代に、ポルトガル国王の命令でインドとの貿易ルートを探していた航海者バルトロメウ・ディアス一行が発見した場所。
アフリカ大陸最南西端「喜望峰」の先っちょ
当初は「嵐の岬」と命名されましたが、喜んだ国王が「喜望峰」と改名。英語名は「Cape of Good Hope」ですが、なぜか漢字では「希望峰」ではなく「喜望峰」という表記です。
英語名は「Cape of Good Hope」で漢字では「希望峰」ではなく「喜望峰」
私のアフリカ縦断の旅はここがゴールでした。ケープタウンに着いていきなりナイフを出された私にとって、その後無事に生きてここまで来れたことを思うと、安堵感とこれからも強くたくましく生きていこうという希望に満ちあふれていたと思います。
そしてここで聞きたい曲と言えば、さだまさしの『風に立つライオン』。この街のもうひとつの名所テーブルマウンテンの眺望を望める丘「ライオンズヘッド」に引っ張られていますが、アフリカ大陸の壮大な情景描写や自分のちっぽけさを感じるような曲がグッとくるんですよね。（内容はケニアでの医療従事をイメージした歌なんですけど）
大海原から吹く風に向かって立つ旅人
■「アメリカ最南端サザンモストポイントブイ」アメリカ・キーウェスト
アメリカ合衆国本土の最南端を示す名所「サザンモストポイントブイ」は、フロリダ州のキーウェストの先端部付近に設置されています。（実際にはブイの先にも土地はありますが一般人立ち入り禁止）
コンクリート製のブイには「キューバまで90マイル」と書かれている
あっちの方が真のアメリカ最南端になるのかしら
ここは私が世界一周を始めるよりも前に訪れた場所。あれは2008年、Mixiで集まった初めましての旅仲間4人と壊れかけの車でアメリカ大陸を一周した時のことです。
アメリカ大陸の道路は延々と長い直進が続き、カーラジオからは当時の米国ヒット曲NE-YOの『クローサー』が何度も流れていました。そのリズムに乗っていると、どこまでもまっすぐな道路での体感スピードは麻痺し、思わずスピード違反をしてしまったのが懐かしい。
さらにキーウェストへの架け橋セブンマイルブリッジを渡る運転担当も私でしたが、今思うと深夜の大雨の中、ぼんやりとしか点灯しないヘッドライトの光を頼りにかなり危険なドライブでした。
キューバやジャマイカみたいな印象の街中
そんな中やっとたどり着いたキーウェストはキューバの影響を受けた町並みがカラフルで可愛らしく、のんびりとした時間が流れていて心地が良い。US1（国道一号線）の起点と終点があることや、世界的文豪ヘミングウェイが住んでいた家が博物館として残っています。
ところで旅をしているとキューバでもスペインでも世界中でヘミングウェイに出会うから、なんだか旅人にとっては切っても切り離せない存在だと感じています。
1891年築の旧税関博物館の前には画家グラント・ウッドが描いた有名な油絵「アメリカン・ゴシック」の彫像
アクアリウム前のベンチに座っている像はまさかヘミングウェイ？ 違うか
今回紹介した「地の果て」3選は観光地化され、比較的行きやすいところですが、他にもアルゼンチンの最南端の街ウシュアイアや、そこから行ける南極もまた「地の果て」感が強いと思います。125ヵ国周ったと豪語する私も悔しいながら未踏の地。いつか行ってみたいです。
そして日本の最端はそれぞれ、東は南鳥島（東京都）、西は与那国島（沖縄県）、南は沖ノ鳥島（東京都）、北は択捉島（北海道）だそうですが、まずはこの4つを制覇してみても良いかも。
「地の果て」の旅、皆さんもぜひトライしてみてください。
キーウェストのビーチには各地への道標が
●旅人マリーシャ（旅人まりーしゃ）
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。2014年より『旅人マリーシャの世界一周紀行』を連載。
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