梅雨を彩る名エキストラ、アジサイと 梅雨を彩る名エキストラ、アジサイと
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は市川紗椰が映画などで見つけた「お気に入りのエキストラさん」について語る。

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映画を見ているとき、メインではなく通行人や関係のない人物に視線を奪われた経験、ありませんか? 今回はそんな目立ちすぎるエキストラさんの中から、お気に入りをご紹介します。

まずは、オリジナルの『ゴーストバスターズ』から。大ボス・ゴーザのいるマンションにやって来たゴーストバスターズたちに、集まった群衆が声援を送ります。その1列目にいるのが、エントリーナンバー1の「大興奮男」。ゴーストバスターズに向かって「ゴーストバスターズ! オーライ!」とひときわ大きな声とうるさい表情で叫びます。

そのシンプルすぎる応援と拳を突き上げる大げさなしぐさが真っすぐすぎて、そいつにエールを送りたくなります。このスーツを着た赤毛の男性は、主役を食っています。

続いてのエントリーは大好きな映画『夢のチョコレート工場』から「首・強子」。映画の冒頭、お菓子屋のおじさんが子供たちに『キャンディマン』という曲を歌います。その最中、おじさんがカウンターの天板を上げた際、目の前に立っていた小さな女の子の顎に思いっきり天板がぶつかります。

下からものすごい勢いでアッパーカットされた小学生女子ですが、瞬時に前を向いて何事もなかったかのように演技を続けるプロ意識と、首の強さに脱帽です。不気味な場面が多い本作の中でも、違う意味でドキッとさせられます(おじさんが素手で大量のお菓子を配っているのも、今見るとゾッとします)。

続いては優勝候補、名匠マーティン・スコセッシ監督の『グッドフェローズ』に登場する「もぐもぐ男」。彼が出てくるのは、ロバート・デ・ニーロ演じるジミーと、レイ・リオッタ演じるヘンリーが、ダイナーで会話を交わす有名なシーン。

ヘンリーがジミーに殺されると察する緊張感ある場面で、奥の席のお客さんがひたすらもぐもぐしています。大柄な男性でスープらしきものを飲んでいるようですが、ひとくち口に運んでは、キョロキョロしながらずっともぐもぐ......。「スープをそんなに噛む!?」と目が離せません。

「カメラを見ないように」と意識しすぎるあまり、結局めちゃカメラを気にしている感じがいとおしいです。デ・ニーロが映っている間、ほぼカメラ目線のこのもぐもぐ男が長尺で堪能できます。

次はアルフレッド・ヒッチコック監督の『北北西に進路を取れ』から、銃声が鳴り響くクライマックスで、銃が撃たれる前から耳をふさぐ「予知子供」。何回も撮り直しているうちに、うっかり身構えてしまったのかなと思いますが、もしかしたらこの子供もヒロインの作戦を知っていたのかも......という深読みもできるから好きです。

最後は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の「ごつんストームトルーパー」。デス・スターの天井に頭をぶつけ、イタタタッと手を当てる彼です。

リマスター版ではあえて「ごつん」という効果音が足されたり、『エピソード2/クローンの攻撃』ではジャンゴが頭をぶつけ、ストームトルーパーがジャンゴ・フェットのクローンであることが示唆されます。偶然の出来事がストーリーの一部になれたという、レジェンド目立ちすぎエキストラです。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。エキストラじゃないけど、『ライオンキング』の舞台を見たときはキリンを操作している役者さんの表情ばかり気になってしまった。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!