「マジで?」「本当?」「コレ、おいしいの?」という商品を出すことが多い「ペヤングやきそば」シリーズ。なぜ、どんな思いで新作を作っているのか? 開発担当者にその真意を聞いた。そして、次回作のヒントも......。
■極端に振り切った商品のほうが売れる!
4000kcal超えの「超超超超超超大盛やきそばペタマックス」や、ペヤング史上最強の辛さといわれる「獄激辛やきそば」、バレンタインデー向けの「チョコレートやきそばギリ」、ペヤングのニセモノ風「ペヨング ソースやきそば」など、数々のおもしろ商品を出し続けている「ペヤング」。
その最新作はいか焼きとたこ焼きをイメージした「イカトパスやきそば」だが、なぜ、こうした商品を出し続けるのか。ペヤングホールディングス製品開発課課長の小島裕太氏に聞いた。
――おもしろ商品はいつ頃から出しているんですか?
小島 発売当初(1975年)から、いろいろと商品は出しているんですが、一気に増えたのは「激辛やきそば」(2012年発売)以降です。当時、お菓子やカップ麺で「激辛」をうたっていても、食べればそんなに辛くないものが多かった。それで、社長が「それなら本当に辛い商品を作ろう」ということでできたのが「激辛やきそば」でした。
すると、それを食べた人たちがネットなどに「辛すぎる」「食べられない」などの書き込みをして話題になりました。そして、口コミを見た人も「どれくらい辛いんだろう」と興味を持って食べていただいたことで、売り上げが伸びたんです。
――「激辛やきそば」がヒットしたら「じゃあ、次はどうしよう」と考えますよね。
小島 そうですね。激辛やきそばを出して「振り切った商品のほうが売れる」とわかったので「パンチがあって話題にしてもらえるような商品を作ろう」ということになりました。
人間には「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」という五感があるじゃないですか。激辛やきそばが「味覚」に振り切った商品ならば、次は「嗅覚」に振り切ったものを作ろうと思いました。
これも社長のアイデアなんですが、お昼時に新幹線に乗ると「シューマイ弁当」を食べている人がいたりするじゃないですか。
すると、シューマイのニオイが車内に漂ってきて、迷惑に思う人がいるかもしれませんが、「ああ、シューマイ弁当を食べたいな」と思う人もいるはずです。
それで、食欲を一番そそるニオイは何かと考えたら「やはりニンニクだろう」ということで「ニンニクMAXやきそば」(15年発売)という商品が生まれました。
――なるほど。ニンニクのニオイは強烈ですもんね。
小島 はい。ですから、パッケージに「まわりの人に迷惑がかかります。喫食の際は1人でお召し上がり下さい。エチケットは守りましょう」と断り書きを入れました。
――で、その次は?
小島 味覚、嗅覚ときたら、次は視覚です。そこで、次なるMAX系ということで「わかめMAXやきそば」(16年発売)を作りました。
――これは、どのへんが視覚に訴えているのでしょうか?
小島 それはもう、ワカメの量が半端なかったんです。湯切りした後、下にある麺が見えないくらいワカメで覆われていましたから。
――わかめMAXを出した後のMAX系商品は?
小島 背脂ギトギトに振り切った「背脂MAXやきそば」、酸っぱさに振り切った「酸辣(サンラー)MAXやきそば」、そして鉄分に振り切った「鉄分MAXやきそば」(すべて17年発売)です。
――背脂や酸辣はわかりますが、鉄分だけちょっと路線が違いませんか?
小島 さっきは五感と言いましたが、その頃から五感だけでなくいろいろな視点で商品を作ろうということになり「健康」という面を考えて鉄分MAXになりました。
――でも、健康から鉄分になるのが、すごく飛躍している気がするんですが......。
小島 そうですよね。われわれも初めは「ビタミンMAX」や「カルシウムMAX」などを考えたんですが、いろいろな条件を考慮した結果、一番カップ麺として作りやすかったのが鉄分だったんです。
――思いつきで作っているようで、意外と大変なんですね。
小島 そうですね(笑)。
■次回、最新作はパスタ系の商品?
――17年には「もっともっと激辛MAXやきそば」も出していますよね。「激辛やきそば」よりも辛いものを出そうと思ったのはどうして?
小島 ユーチューバーの方の動画や消費者の方からの問い合わせで「まだまだ辛いのが食べられる」「もっと辛さに挑戦したい」という声があったからです。
――まだまだ辛くないという人たちが現れて、それに対抗して作ったと?
小島 はい。
――じゃあ、翌年に「ソースやきそば」4個分の「ソースやきそば超超超大盛GIGAMAX」を出した理由は?
小島 04年に通常サイズの2倍の量の「ソースやきそば超大盛」を発売しました。この超大盛を出す前、社長がコンビニで通常サイズのペヤングとおにぎりを買う学生を見かけたんです。それで、そのおにぎりの市場を取れないかと思って2倍にしたんです。
これは大ヒットしました。でも、その後に2倍の商品とおにぎりを買う学生を見て「まだまだ学生は食べられるんだな」ということで、さらに倍の商品を出してみようと思ったのが、「超超超大盛GIGAMAX」が生まれたきっかけです。
――でも、そうした一部の人のために商品を作るって、普通の企業ではありえないですよねぇ。
小島 ペヤングは他社がやらないことをやろうというのが方針なんです。他社と同じ商品を作ればシェアの奪い合いになりますよね。でも、違う商品を作れば、そのマーケットの売り上げはすべてペヤングのものになりますから。
――社長さんの考え方はすごいですね。
小島 そうですね。しかも新商品の多くが社長のアイデアですから。もちろん、開発課の人間も考えていますが。
――新商品はどうやって考えているんですか?
小島 基本的に「まず、作ってみよう」というスタンスです。で、ダメだったら途中でやめればいいかなと。
――ということは、月にどれくらいの試作品を作っているんですか?
小島 月に10~20品は試食しています。
――その中で実際に発売されるのは?
小島 月に2、3種です。
――じゃあ、ほとんどがボツになるわけですね。ボツになる試作品の傾向とかあるんですか?
小島 やはり、味に特徴がないものやインパクトがないものは商品になりません。
――なるほど。でも、月に2、3種出していれば、中には「発売したけど失敗したな」という商品もありますよね。これまでで一番失敗したのは、どんな商品ですか。
小島 そうですね。賛否両論があったのは「アップルパイテイストやきそば」(20年発売)です。「これはちょっと食べられない......」という方もいました。
――そういう反応があると、1週間で販売終了とかになるんですか?
小島 新商品は数量限定で作っているので、その数を売り切れば終わりです。一応、アップルパイテイストも生産数は売り切りました。
――アップルパイテイストのほかには?
小島 「モノホントンコツMAXやきそば」(20年発売)。九州の豚骨ラーメンの味とニオイをイメージした商品なんですが、ニオイの好みには地域性があるようで、関東の人には「ニオイがきつすぎて食べられない」という声がありました。
――ほかには?
小島 あとは「塩昆布やきそば」(21年発売)とか「きんぴら風やきそば」(22年発売)もあまり伸びませんでした。
――何がいけなかったんですか?
小島 味が想像できるし、普通すぎたんでしょうね。SNSでも取り上げられたのを見かけることが少なかったので。
――なかなか難しいですね。ちなみにこの間まで売っていた「超大盛やきそばハーフ&ハーフ東西」は、ヒットしていましたよね。
小島 はい。超大盛サイズで、ソースを2種類使用するハーフ&ハーフタイプの商品です。東が通常のペヤングのソースで、西がコッテリ系のソースに花かつおをかけて食べていただきます。
カップ麺はご当地ものも多いと思いますが、ふたつの地域の味を対決みたいな形で楽しめる商品はほとんどありませんでした。そのあたりがヒットした理由なのかもしれません。
――じゃあ、次は沖縄vs北海道みたいなのもできますね。
小島 もちろん、いろいろなものができると思います。ペヤングは"なんでもあり"ですから。
――ちなみに、今後はどんな商品を出そうと考えています? 言える範囲でいいので。
小島 言える範囲ですか......パスタ系の味がけっこう人気なので、パスタ系のものですかね。
――ミートソース味?
小島 まあ、いろいろありますよね。
――企業秘密ですか。じゃあ、次の新作が出るのはいつ頃ですか?
小島 7月くらいですかね。
――それは振り切ったものですか?
小島 そうですね。ペヤングらしい商品を考えているので、ぜひご期待ください。
――5、6月は新商品が出ていなかったので、7月の発売を楽しみにしています!