納豆にネギと大葉を混ぜ、とんかつにのせた「納豆カツ」 納豆にネギと大葉を混ぜ、とんかつにのせた「納豆カツ」
高い栄養価で健康食品の代表格である納豆。ご飯に混ぜて食べるのが定番だが、実は"食材"として他の料理とあわせるのにもピッタリだという。それも、中には「あり得ないだろ!」と思うような組み合わせも......。日本各地にある納豆料理とともに意外な納豆の相棒を紹介する。

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「好きな食べ物を聞かれて、『納豆』と答える人はいませんよね? でも朝ごはんの定番だし、コンビニにも納豆巻きは絶対においてある。人気にはならないけど第一線ではある。見た目は地味なのにクセはある。そんな微妙で中途半端な立ち位置にいる納豆に惹(ひ)かれたんです」

自身でデザインした納豆Tシャツを着る村上編集長 自身でデザインした納豆Tシャツを着る村上編集長
そう話すのは、日本で唯一の納豆専門誌『納豆マガジン』の編集長を務める村上竜一さんだ。村上編集長は「まだ1/3くらいしか食べていない」が、国内には約3500の納豆が販売されているそう。

「東北の納豆は粘りも匂いも強めで、タレもやや塩辛い。The納豆好きの人にはたまらない。逆に『納豆嫌いが多い』と言われている関西は全体的に薄味で、タレも出汁感が強いです。九州はタレが甘かったり辛子が入ってなかったりと、その地方で傾向はありますね。ただ、どれも少し違うだけで、そこまで大きな違いはありません」

とはいえ、納豆の発祥の地とも言われる東北は納豆のアレンジが多彩だ。

「東北は納豆料理が多いですね。その代表は山形や秋田の納豆汁。すり鉢で細かく潰した納豆を濃いめの味噌汁にいれるんですが、とろっとしてまろやかな味わいでクセになります。普通の味噌汁に入れてもいいですが、実はひきわり納豆をそのまま中華スープに入れるのもうまい。納豆のクセも薄まるのでチャレンジしやすいです」

ひき肉に見えるのは、ひきわり納豆。中華スープに入れるだけでOK ひき肉に見えるのは、ひきわり納豆。中華スープに入れるだけでOK
さらに青森には『ごど』と呼ばれる納豆をつかった発酵料理も。

「納豆に麹(こうじ)をつけてさらに発酵させたものなんですけど、乳酸発酵しているので酸味があるんですよ。とろっとしてこれはハマりました! 納豆だと思って食べると全然違うんですけど、うますぎましたね。『ごど』ではないんですが、東北は麹納豆がスーパーにも売られていたりと、多くの家庭で一般的に食べられていますね。

そういう意味でも、納豆に酸味を加えた料理はおすすめです。納豆のタレにお酢を加えるだけでもさっぱりしていておいしいですし、ナムルに納豆を混ぜるのも手軽に作れる一品として重宝しています」

もやしナムルの酸味が納豆に合うという もやしナムルの酸味が納豆に合うという
また、村上編集長は納豆とラーメンというコラボもあるという。『岩手のらーめん 柳家』では、『元祖キムチ納豆ラーメン』が有名だ。また山形の郷土料理には、納豆ダレにうどんをつけて食べる「ひっぱりうどん」もあり、納豆と麺類は意外とある組み合わせなのだ。

「東北には『納豆ラーメン』を出す店がちょこちょこあるんですよ。でも一番すすめたいのは、東北ではなく名古屋のラーメン店『熊本ラーメン もっこす』ですね。豚骨スープと納豆の相性は抜群。スープに浮いた白い納豆の泡は、見た目のインパクトもさることながら、ふわふわな食感で意外性もあります。実は僕も最初はためらったんですが、これはアリだなと。ハマる人はハマるので、納豆好きにはぜひ食べてほしいですね」

「熊本ラーメン もっこす」の『納豆ラーメン』。ミルキーな豚骨スープに納豆が加わり深みのある味わいに 「熊本ラーメン もっこす」の『納豆ラーメン』。ミルキーな豚骨スープに納豆が加わり深みのある味わいに
関東にも意外な納豆料理がある。それが「納豆カツ」だ。

「茨城の水戸市で広まっている料理なんですが、実はまだ茨城には行ったことがなく、食べていないんですよ......。納豆をソースの代わりにかけたり、肉の間に挟んで揚げたり、店によってスタイルも違うようですが、市内のとんかつ屋を中心に10店舗以上で提供されています。ずっと気になっていて、これは僕自身も食べてみたい一品です」

どんな味なのか、気になったので試してみたが、納豆の独特な味わいが肉のうまみと調和し、お米が進む。ネギと大葉を混ぜた納豆をかけただけの自己流なので、店で提供されるプロの味ならなおさらうまいはずだ。

バニラアイスに黒豆納豆を混ぜた「納豆アイス」。黒豆納豆は比較的クセがなく、アイスの邪魔をしない バニラアイスに黒豆納豆を混ぜた「納豆アイス」。黒豆納豆は比較的クセがなく、アイスの邪魔をしない
そして、村上編集長が最後にすすめるのは、まさかの「納豆アイス」だ。

「三重の鈴鹿市に『鞍馬サンド』というサンドウィッチ専門店があるんですが、『醍醐』というメニューが有名なんです。中身は納豆とコーヒーゼリー、そして生クリーム。別の店で似たサンドウィッチを食べましたが、実は甘いものも合うのか!と驚きました。

それで試してみたのが、納豆アイスです。本当にシンプルにバニラアイスに納豆を混ぜるだけ。トルコ風アイスみたいになって伸びて、これがおいしいんですよ。何人かに食べさせてみて、最初は不安そうなんですが、食べてみるといい反応でした。一番試してほしい組み合わせですね」

アイスになぜ納豆!?と疑問を抱えながらも食べてみると、思ったより粘り気もなく、違和感なくおいしく食べられた。むしろ甘さも少し抑えられて飽きが来ない! 最初は気持ち悪そうだと思ったが、意外と受け入れられた。

カレーと並んでメジャーな納豆料理である「麻婆納豆」。納豆のおかげで辛みがまろやかに カレーと並んでメジャーな納豆料理である「麻婆納豆」。納豆のおかげで辛みがまろやかに
「その臭みが独特なので、あまり料理に活用されることはないですが、納豆はほとんどの料理に合う万能食材。麻婆納豆のような中華系もイケるし、オリーブを使ったパスタも絶品。ただ生ハムとチーズのカルパッチョだけは、全部の味が分離してしまいましたけど......でも失敗したのはそれくらい。白米と混ぜるだけでなく、いろんな料理に納豆を加えてみてください」

未知の可能性に満ちた納豆。年に一度の"納豆の日"くらいは勇気を出して、目の前のおかずに納豆をぶち込んでみよう。

●村上竜一 
1993年生まれ。広島県出身。関西のファッション誌の編集者から独立し、「納豆マガジン」を創刊。また納豆アパレルや納豆グッズのブランド「ネバネバビーン」を展開。今年7月10日には納豆販売も行なうセレクトショップ「利口.」を京都市にオープン 
公式インスタグラム【@mikaramura_natto】 
利口.公式インスタグラム【@ricow_kyoto】