記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。今回も平成レトロ時代に忘れられ、記憶の底に埋没しがちな遺産を、皆さんと一緒に掘り返していきましょう。
私が長らく注目している平成レトロ遺産に「ファンシー絵みやげ」があります。これは80~90年代に日本中の観光施設で売られていた子供向け雑貨土産の総称で、昭和末期から平成初期まで15年近く主力商品として販売されていました。
バブル景気の中、多様な種類が作られ、時代特有のノリや空気感を閉じ込めた民俗学的資料としての側面もあります。私はこれまで10年以上保護活動を行ない、全国から2万5000種ほど生存個体を保護しましたが、まだ半数にも届いてないでしょう。
さて、今年も酷暑ですので、ここからは過去に最高気温が話題となった地域のファンシー絵みやげを例に、その特徴をご紹介いたします。
まずは2020年、埼玉県熊谷市と並ぶ国内最高41.1℃を記録した静岡県浜松市。遊園地の「浜名湖パルパル」、舘山寺の温泉などを有する観光スポット・浜名湖が有名です。
ここは銘菓うなぎパイがあるほど、ウナギ推しの地域。もちろん過去には、ウナギキャラのキーホルダーも売られており、ファンシー絵みやげの特徴が満載です。地名は「HAMANAKO」とローマ字表記、さらに「たまにはハメを外したら明るい明日が来るかもね」という、ウナギとは無関係な長文まで、わざわざ読みづらいローマ字で書かれています。
当時主流だった和文字を排除した洋風デザイン、親しみやすい手書きの丸文字も含めファンシー絵みやげの重要な要素となっています。
そして2013年に40.7℃を記録した山梨県甲府市。こちらは戦国時代に活躍した武田信玄をファンシー化。髭面イメージで威厳あるはずの武将が2頭身キャラになっています。これも重要な特徴で、鳥山明先生が『Dr.スランプ』で描いた、既存キャラを2頭身化したテイストの影響を感じさせ、時代の空気感が強く反映されています。
さあ、皆さんも夏休みに暑い観光地で平成レトロ遺産を発掘してみましょう!
●山下メロ
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある