レトロ遺産を掘り返す山下メロ氏レトロ遺産を掘り返す山下メロ氏

記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。この連載では平成レトロ時代に忘れられ、記憶の底に埋没しがちな遺産を、皆さんと一緒に掘り返していきます。

さて、ネットでは「平成はレトロなの?」といった疑問も見受けられますが、平成初期にはインターネットも携帯電話も一般に使われていませんでした。平成と令和は同じようで、実は生活様式が異なり、すでに懐かしく感じられる部分(平成初期)も多い。それが平成レトロなのです。

映画『私をスキーに連れてって』にも登場した最初の手持ち携帯電話より少し小さいTZ-803型。重量は900g→640gになり、それでも重くて長時間利用は不可。ガラケーは100g前後、現在のiPhoneは200g前後映画『私をスキーに連れてって』にも登場した最初の手持ち携帯電話より少し小さいTZ-803型。重量は900g→640gになり、それでも重くて長時間利用は不可。ガラケーは100g前後、現在のiPhoneは200g前後

日本のケータイこと、移動体通信の歴史を振り返ると、まず1953年から船舶用の港湾電話、57年に列車電話が始まりました。79年には民間向けの自動車電話が本格的に開始。そして85年におなじみのショルダーホンが登場します。

手に持てるようになったのは87年に登場したNTTのTZ-802型。こういった形の携帯電話は、海外でブリックフォン(レンガ電話)と呼ばれていました。

89年(平成元年)2月に、少しだけ小型化されたブリックフォン、TZ-803型が登場したのです。まだバッテリーも巨大でレンガのままでしたが、平成最初の携帯電話で、高額なこともあり、一部の人しか持てませんでした。

1993年よりデジタル方式が始まり、ドコモからもモトローラの端末が発売されました。この頃の携帯電話は一般に普及する以前であるため、ガラケー全盛期のように急速な小型、高性能化は行なわれなかった1993年よりデジタル方式が始まり、ドコモからもモトローラの端末が発売されました。この頃の携帯電話は一般に普及する以前であるため、ガラケー全盛期のように急速な小型、高性能化は行なわれなかった

同年に携帯電話事業に参入したセルラーが10月に米モトローラ社の手のひらに収まる携帯電話MicroTACをHP-501として発売すると、NTTも急いで小型化を進めました。しかし、やっと発売したのは2年後の平成3年。いわゆるmovaシリーズの始まりである折り畳み型のTZ-804シリーズでした。

初期ガラケーとしてイメージされがちな、艶消しメタリック色が定番だった90年代後半のストレート型端末に比べると、まだまだ非常に大きくて重い携帯電話でした。95年からはPHSがサービスを開始。折り畳みパカパカ携帯電話は、さらに先で2000年頃から増えていきます。

ガラケーも平成の始まった時代はこんなにも重くて大きいものでした。この後に一般に普及し、携帯電話文化が一気に花開いたのです。その話は次の機会をお待ちください。

●山下メロ 
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある

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