記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。この連載では平成レトロ時代に忘れられ、記憶の底に埋没しがちな遺産を、皆さんと一緒に掘り返していきます。
さて、今回のテーマは平成に流行した透明のプロダクトデザインである「スケルトンブーム」です。スケルトンという英語は骨格や骸骨を意味するため、厳密には誤用なのですが、日本語の「透ける」という言葉と響きが重なることも影響して日本では定着しています。
スケルトンブームは、初代iMac G3ボンダイブルーの影響と言われがちですが、実際には違いました。大人向けアイテムにおける流行のキッカケは平成10年に発売されたiMacですが、子供向けの分野ではそれ以前から透明プロダクトが人気でした。
まずは平成元年に任天堂が発売した携帯型ゲーム機ゲームボーイ。そのカラバリであるゲームボーイブロスが発売されたのが平成6年。そこには基板や配線が見えるメカメカしくてカッコいい「透明」がラインナップされていたのです。
続いて発売されたゲームボーイポケットやゲームボーイカラーではクリアパープルが人気でした。プレステでも主にサードパーティのコントローラーやメモリーカードなどにクリアカラーがありましたし、たまごっちやデジタルキーチェーンゲームなどもとにかくスケルトン。初代iMacが発表される数年前には、すでに日本にスケルトンがあふれていました。
さらに振り返れば、昭和時代のファミコンにも『沙羅曼蛇(サラマンダ)』というスケルトンカセットが存在しますし、変身サイボーグという玩具や、『人造人間キカイダー』。そして図鑑に描かれた半分中身が見える透視図に至るまで、「内部の構造が見えるカッコ良さ」が、子供心をくすぐり続けてきたのです。
毎年のように再ブームが望まれているスケルトン。今も定期的に狙った商品が発売されています。そして、玩具においては令和の今も透明パーツが重要な役割を担っているのです。実は今もどこかで売られているスケルトンを探してみましょう。
●山下メロ
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある