8月から2都県のローソンで実験的に販売開始された「冷凍おにぎり」。その味は? 需要はどこにある? これらを踏まえて、今後コンビニのメジャー商品になる? あらゆる面で検証してみた!
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■ついにおにぎりが冷凍になっちゃった!!
ローソンが8月に、コンビニの定番商品「おにぎり」の冷凍版の実験販売を東京と福島の計21店舗で開始した(11月20日まで販売予定)。
ちなみに、なぜ福島かというと、リサーチ会社の調査で「全国で最もおにぎりを温めるかを聞かれる」からとのこと。要はコンビニのおにぎりを温めて食べる機会の多い県だからのようだ。
ローソンによると販売の大きな目的は「冷凍流通による将来的な物流の効率化」と「店舗での食品ロス削減効果」とのことだが、消費経済アナリストの渡辺広明氏はこう説明を加える。
「食料自給率が低い日本では、食品ロス削減は今後ますます重要になってきます。コンビニおにぎりは常温だと賞味期限が約1日ですが、冷凍だと4ヵ月近くとかなり長くなる。
また、オーナーの立場からも人件費が増えていく中で、収益を維持するために廃棄を減らす必要もあるので、注目を集めているのでしょう」
では、メインターゲットはどう考えられる? 答えてくれたのはコンビニジャーナリストの吉岡秀子氏。
「ふたつの客層がターゲットだと思います。ひとつは、珍しいもの好き(SNSにアップするため)やSDGs精神の強い若年層。もうひとつは、出歩くことが困難で、買い物の回数を減らしたいシニア層と考えられます」
というわけで、そのメインターゲットのひとつである若者が多く集う街、新宿・歌舞伎町近くにあるローソン新宿靖国通店(冷凍おにぎり実験販売店舗)に実際に行ってみると......。
冷凍食品が並ぶ、ドア型の冷凍庫の1段分に冷凍おにぎりのスペースが陣取られていたが、あったのは2個のみで、ほとんど品切れ状態! 店員に話を聞いてみると、
「カゴいっぱいに買っていくお客さまもいます。おそらくインバウンドと思われる海外の方が買っていくこともありますね」
とのことで、話題性と人気は上々のようだ。
さて、ここで最も気になる〝味〟はどうなのか?
今回の実験販売では6種類が用意された。おこわ系(赤飯おこわ、五目おこわ)、まぜご飯系(鶏五目、胡麻さけ、わかめごはん)、具系(焼さけ)だ。
価格は138円から268円で、加熱時間はコンビニの1500Wの電子レンジで35秒から45秒。家庭用の500Wの電子レンジで1分40秒から2分10秒といったところ。
これを試食してくれたのは、飲食店で新商品の開発に携わる飲食トレンドリサーチャーの山口えりこ氏。
「結論から言うと、店頭で手作りされたおにぎりとほぼ変わらないくらいおいしいです。お米も炊きたてのようにふっくらふわふわ。
ただ、規定時間レンジで加熱したおにぎりはちょっと熱すぎ感があるので、お皿に移してお箸で食べるのがオススメです。例えば、コンビニで加熱してもらい、5分くらいでオフィスに戻るとしたら、食べ頃の温度に落ち着きそう」
では、6種類で特においしかったものは?
「3位は赤飯おこわ。控えめで優しい味つけで、蒸されているかのようなモチモチ食感が味わえます。家の冷凍庫に入れておくと、食事だけでなく、空腹時の合間飯としても活躍しそうです。
2位は鶏五目。具がしっかり大きくて食べ応えのある一品。おしんこが欲しくなるくらいしっかり味がついていて満足感があります。こちらもモチッとした食感を楽しめます。
そして1位は断トツで焼さけ。268円で少し高いかなと思いましたが、ほぐし身ではなく、大判の切り身がドンと入っていて納得。
そして、冷凍なのにそのジューシーさにびっくりです。さけの脂がお米とばっちり合うことに加え、さけにも塩味がしっかりついていて、あっという間に食べ終わってしまいました」
さらに冷凍ならではのこんなメリットも。
「温めるというひと手間が加わる分〝ついでに〟アレンジが楽しめそう。器に移し替えて、とろけるチーズをのせて温めたり、少し短めに温めてアツアツのダシをかけてダシ茶漬けにしたりと、アレンジの幅は広そうです」
では今後、全国に普及していきそう? 前出の渡辺氏が答えてくれた。
「〝温めておいしく食べる〟おにぎりが開発され、新しいおにぎりの客層を開拓していくと考えられます。まずは、コンビニおにぎりの主力商品ツナマヨなどの冷凍対応での展開が予想されます」
吉岡氏が続ける。
「すぐに全国的大ヒット商品となるかは疑問ですが、もともとおにぎりを温める文化のある北海道や沖縄エリアなどでのポテンシャルは高いと思います。ゆくゆくは和食がウケる海外への輸出もありうると思います。今後のコンビニの主戦場は海外といわれていますので」
果たして、どんな広がりを見せるのか? 今後もコンビニおにぎりから目が離せない!