波動拳で吹っ飛ばされる市川 by おい波動拳で吹っ飛ばされる市川 by おい
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、「知らない間に消えたキャラクター」について語る。

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来日したおいっ子たちにちょっとでも好かれたい、という気弱な叔母ゴコロから、今年の夏は子供向けのコンテンツにたくさん触れました。自分の幼少期にはなかったスポットやエンタメがあることは覚悟してましたが、慣れ親しんでいたものの進化やリニューアルには地味に驚きました。

例えば、『きかんしゃトーマス』のキャラクターたちの人間感強めだった頬骨は今やツルンとしており、「無」だった目はキラキラ輝くように。動きもアクロバティックだし、もはや私が知っていた"ガチンコ人面列車"ではなく、愉快な鉄道キャラに進化していました。

ベビースターラーメンのあいつも、クラスでやたらとうるさかったタイプのチャラい男子に成長していたし(特技は歌とダンス、夏でもニット帽)、『ストリートファイター』の面々は一段とバキバキに。おいっ子たちが選んだリュウとダルシムは共にひげを生やしており(リュウは、なぜか胸毛はしっかりと処理済み)私が子供の頃に大好きだったキャミィももはや別人になっていたりと、しばらく触れてない間にリニューアルされたものがたくさんありました。

これをきっかけに、知らない間に消えたキャラクターたちを思い出しました。それは、マクドナルドのキャラたち。一番有名なピエロのロナルド(日本の表記はドナルド)を筆頭に、ボーダーのシャツに仮面の男や、昔のパイロットみたいな格好の鳥、紫のコロンとしたあいつなど、「そういえばいた!」なマスコットを一気に思い出しました。あの一味、どうしたのか。

結論から言うと、「子供への不健康な食生活をあおっている」という批判を受けて、2010年頃を最後にCMから姿を消したそうです。ロナルドだけは、ホラー映画や事件によってピエロのパブリックイメージが低下したことが原因で、店頭ではまだ元気に活動しているみたい。しかし今回調べてみて、キャラたちのフェードアウト以上に驚いたのは設定の細かさでした。

まずは紫のコロンとしたグリマス。彼には母、父、おばあちゃんのウィンキー、曽祖母ジェニー、ミリーおばさんとティリーおばさん、ひとりだけ緑色のオーグリマシーおじさんという親族がいます。アイルランド在住のオーグリマシー以外は、マクドナルドランドのどこかに住んでいますが、統治しているのはグリマスの兄で王様のキング・ゴンガ。この家族、なんだか闇深い。

グリマス本人もマックシェイクを盗む泥棒で、初期設定では4本の腕でシェイクを爆食いしていました。見た目も相まって、もはやファストフード版ジャバ・ザ・ハットです。めっきり見かけなくなった彼ですが、最近「グリマスシェイク」という商品が限定発売され、アメリカのSNSではグリマスシェイク殺人事件動画がはやったそうです。完全に悪ノリですが、興味ある方は#grimaceshakeで検索を。

ほかにも、ハンバーガーを盗むハンバーグラー、ポテトフライを盗むフライキッズ、フィレオフィッシュを盗むキャプテンクロックなど、懐かしいキャラがたくさんいます。なんだかマックランドの治安が心配になるメンバーですが、そのうちにみんな更生します。来回に続く。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。日本では「ロナルド」じゃなくて「ドナルド」だと忘れがち。
公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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