生石高原(和歌山県)生石高原(和歌山県)
秋分の日も過ぎて行楽シーズンがやって来た! 気温も下がり、「ふらっとひとり旅でもしたいなあ」と思う季節だ! そこで5ジャンルの旅のプロにそれぞれの楽しみ方を教えてもらった! 今回はひとりで行く絶景旅を紹介する。【この秋に必ず行っておきたい!男のふらっとひとり旅・絶景編】

■絶景は天気が重要、チェックは欠かさずに!

今、旅先として大人気なのが"絶景"スポットだ。大自然の素晴らしさを感じて、心をリフレッシュさせてくれるのがその理由だろう。

そこで『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』や『死ぬまでに行きたい!世界の絶景 日本編』(共に三才ブックス)などの著者で、絶景プロデューサーの詩歩(しほ)氏に絶景の楽しみ方やオススメの絶景スポットを教えてもらった。

「絶景というと、何時間も歩いてやっとたどり着くというイメージがあるかもしれませんが、電車やバスなどの公共交通機関で簡単に行ける場所もたくさんあります。例えば、山の上だったとしてもロープウエーが通っていたり、山奥だったとしてもバスを乗り継いで最後にタクシーを15分だけ乗るみたいな場所です。私は車の運転ができないので、ひとり旅で絶景スポットに行くときは公共交通機関で行ける場所が多くなるんです。メディア配信サイト『note』に『電車とバスで行く!日本の絶景ひとり旅』というコンテンツを投稿していますので、ぜひ、そちらを参考にしてみてください」

――絶景の楽しみ方は?

「絶景は屋外の風景であることが多いので、天気に左右されやすいんです。例えば、星空は快晴でなければ見られませんし、雲海は前日が雨で当日が晴れだと現れやすい。ですから、天気予報をチェックして、その日の天気に合わせて行く場所を選ぶといいと思います。

また、時間によって空の様子や光の当たり方も変わってくるので、絶景を見てすぐに帰るのもいいですが、その場所に長い時間いて景色の移り変わりを楽しむのもオススメです。私は、同じ場所でも季節を変えて複数回行ったりします。季節が変わると違う花が咲いていたり、星空が見えていたり、まったく違う風景になっているんです」

――絶景をきれいにカメラに収めるコツは?

「やはり絶景が一番いい瞬間にその場所にいることが大事だと思います。例えば、星空は空が暗いほうがきれいに見えるので、月明かりのない新月の日を狙っていきます。満月の日に星空を見に行って『あまり星が見えなかった』と言われても『それはそうだよな』と思っちゃいます。また、今の時季は天の川が見えますが、時間帯によって場所が変わるので、自分が写したい山や建物などのちょうど真上に来る時間を狙うなどの下調べが重要だと思います。

私は絶景を楽しんだり、いい写真を撮ったりする一番のコツは待つことだと思います。例えば、富士山を見に行ったら、2時間でも3時間でも同じ場所にいて、景色の移り変わりをボーッと眺める。時にはマイボトルに入れたコーヒーを飲んだり、本を読んだり。そんな時間が、私は最高の贅ぜい沢たくだと思っています」

栗駒山の紅葉(宮城県、秋田県、岩手県)栗駒山の紅葉(宮城県、秋田県、岩手県)
――では「死ぬまでに行きたい!日本の秋の絶景」を教えてください。まずは、北海道・東北地方では?

「秋といえば、やはり紅葉です。宮城県、秋田県、岩手県にまたがる『栗駒山(くりこまやま)』は、片道2時間くらいで、初心者でも比較的登りやすい山です。

高い木が少なく、私の背丈よりも低いくらいの木立がバーッと広がっていて、その葉が赤や黄色に色づいている。その中を山頂まで登っていくのは最高の気分です。また、山頂付近からは紅葉を見下ろすことができて、まるで紅葉の絨毯(じゅうたん)を見ているよう。そんな絶景が楽しめます」

――関東だと?

「群馬県の『渋峠(しぶとうげ)』です。渋峠から芳ヶ平(よしがだいら)湿原を見下ろす紅葉は、とても幻想的です。ここはぜひ、朝の光が当たっているときに行ってみてください。昼になると少し色みが変わってきます。ここはとても人気のスポットで、私が行ったときは朝の5時にもかかわらず200人くらい集まっていました。近くにある、渋峠ホテルから徒歩で5分くらいの場所なので、そこに泊まれば早朝でも行きやすいと思います」

渋峠の紅葉(群馬県)渋峠の紅葉(群馬県)
――関西地方はどうでしょう?

「和歌山県の『生石(おいし)高原』です。ここは紅葉ではなく、広大に広がるススキの草原が楽しめます。そして、そこには『火上(ひあげ)岩』と呼ばれる断崖絶壁の岩があって、岩の先端部に座って写真を撮るとちょっとドキドキした感じに写ります。でも、実は写真で見るほどの高さではないので、それほど頑張らなくても絶景写真が撮れるんです。夕日の時間帯に行くとススキがキラキラ輝いてとてもきれいです。ここはバスでは直接アクセスできないので、タクシーかレンタカーを借りる必要があるかもしれません」

――四国・九州地方は?

「愛媛県の『奥道後壱湯(おくどうごいちゆ)の守(もり)』です。ここは温泉宿なんですが、そのロビーに天井まで届く大きな窓があって、そこから見える紅葉がまるで絵画のようにきれいなんです。ひとりでふらっと温泉に入って、その後に浴衣姿で寒い思いもせずに絶景を楽しめる。温泉も絶景も楽しみたいという人にはオススメの場所です」

奥道後壱湯の守(愛媛県)奥道後壱湯の守(愛媛県)
――最後に絶景の旅で大事なことは?

「最近はマナーの悪いカメラマンが問題になっていたりします。自分の出したゴミは必ず持ち帰る。入ってはいけない場所には入らない。邪魔だからといって木の枝を折ったりしない。絶景はその地域の人がずっと守ってきた場所ですし、きちんと管理しているからこそ私たちは楽しめるので、そうした感謝の気持ちを持って楽しんでもらえたらと思います」

SNSなどで高評価が欲しいからといって、人に迷惑をかけるような行為は避けて、絶景を満喫しよう。

【絶景プロデューサー・詩歩氏オススメの日本の秋の絶景】
・栗駒山の紅葉(宮城県、秋田県、岩手県) 
背丈程度の低木の紅葉。「神の絨毯」と呼ばれることも

・渋峠の紅葉(群馬県) 
まるで絵画のような紅葉が見られる。早朝がオススメ

・生石高原(和歌山県) 
ススキが茂る高原を眼下に断崖絶壁に座る写真が撮れる

・奥道後壱湯の守(愛媛県) 
ホテルのロビーにある大窓から見える紅葉は迫力満点

(写真提供/詩歩氏、公式Instagramは【@shiho_zekkei】)