夏の終わり 夏の終わり
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、市川紗椰がR指定作品を原作としたアニメについて語る。

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前回は、R指定の映画『ランボー』が原作の迷作キッズアニメ、『RAMBO:THE FORCE OF FREEDOM』について語りました。なぜ子供向けに改変したのかは謎ですが、実は、大人向けのハリウッド映画を強引にアニメ化した作品はほかにもたくさんあります。子供番組の宣伝の規制が緩く、人気作にあやかって悪い大人たちが子供に玩具を売りまくっていた頃の遺産たちです。

まずは、アニメ版『ポリスアカデミー』。原作は『ランボー』と違ってコメディ映画ですが、こちらも第1作はR指定を受けていました。日本では『警察学校』というタイトルでアニメ版の吹き替えがテレビ東京で放送され、後にテレビ朝日でも放送されたそうです。局をまたいで放送するくらい需要があったようですが、私の調査では日本でリアルタイムで見た人はおろか、存在を覚えてる人も見つかりませんでした。情報求む。

私は再放送でアメリカ版をちょこちょこ見てました。下ネタだらけの原作映画に比べてかわいらしいドタバタ劇でしたが、「ゲスな人」という意味のスラング「scumbag」(直訳は「カス袋」)が頻出するので、小学生に見せたい内容かどうかは疑わしいです。

子供向けに改変された大きな要素は、人間の言葉を話す警察犬の部隊が追加されていること。武骨だけど頼れるリーダーのブルドッグ・サムスンや、ハイテンションなチワワ・チリペッパーなど、お仕事モノの作品にいそうなお決まりキャラを犬で表現してくれています。カオスなアニメですが、65話もあり、アラブ諸国やイタリアでは原作映画より有名だそうです。

続いてのR指定原作の子供向け作品は、アニメ版『ロボコップ』。原作のSFアクションシリーズは、1987年に1作目が公開されて以降カルト的な人気を誇る作品で、最初はR指定より厳しいX指定だったほどバイオレント。R指定になるように公開前に変更が施されたそうですが、それでも残酷な社会を表現するために、グロい惨殺シーンなど暴力的な描写が続きます。

そんな原作ですが、2回もキッズアニメ化されています。1回目は88年から12話、2回目(『Robocop: Alpha Commando』)は98年から40話が放送。いずれも土曜日の朝など、子供向けの枠でやっていました。

アニメ版の設定は映画と同じ。殉職した警察官マーフィーが機械の体に改造され、サイボーグとして復活。ロボコップとなったマーフィーが、近未来のデトロイトで犯罪者を取り締まりながら復讐(ふくしゅう)に燃える姿を描いてます。

映画では黒幕ふたりは殺されますが、アニメでは何もなかったようにふたりとも元気に悪行に励みます。ロボコップは笑えるほど速く動けて、署長は空気を読めずにやたらとアメフトのダジャレを言う。オススメの回は、ロボコップがハッキングされる初期シリーズの2話。ネタバレで申し訳ないですが、パスワードを変えてあっさり解決します。

年齢制限のある邦画が原作のキッズアニメがあるかわからないですが、やるなら学園青春モノに改変されたアニメ版『バトル・ロワイアル』や、ほのぼの家族モノのアニメ版『万引き家族』とかいかがでしょう。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。アニメ版のロボコップ役の声優さんは、『美少女戦士セーラームーン』のイケメン敵役、プリンス・デマンドさまの英語吹き替えも担当しているのを知って、その振り幅に脱帽。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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