ズッキーニボートのタコス風 ズッキーニボートのタコス風
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、市川紗椰が脇役だと思われがちな夏野菜「ズッキーニ」について語る。

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残暑に甘えて、夏の終わりを認めなかった今年の9月と10月。素足+サンダルの足元へ向けられる視線には動じずに過ごしてきましたが、金木犀(きんもくせい)の香りとサンマの煙にこれ以上見て見ぬふりをできず、市川はいいかげんに秋の到来を受け入れました。

しかし、ここで最後の悪あがき! 夏野菜のズッキーニをたたえて、夏にお別れを告げます。「脇役だ」と言うなかれ、ズッキーニは立派な主役です。

キュウリに似てることから勘違いしがちですが、ズッキーニはキュウリ属ではなくカボチャの仲間。焼くとホクホクするし、肉質は油との相性良し。ほのかな苦みがあるけどクセが少なくみずみずしいので、なんにでも合います。栄養価も高く優秀。ビタミンB2やビタミンCをはじめ、デトックス効果のあるカリウムも豊富です。

旬は7月と8月ですが最近は一年中買えるので、わが家では冷蔵庫に常備しています。今年は家庭菜園が趣味の友人から、できすぎたズッキーニを大量にいただき、中には野球のバットみたいな化け物ズッキーニも。ズッキーニ側から「添え物ではなくメインにしろ!」と言われている気がしました。

とはいえ、まずは副菜として。輪切りにしたズッキーニに岩塩とオリーブオイルを少しかけ、オーブントースターで焦げ目がつくまで焼いたら、シンプルイズベストで間違いない。ステーキを焼いた後に、そのままステーキの脂で焼いたズッキーニにレモンをかけても最高。みずみずしさと甘さが際立ちます。ごま油との相性もいいので、ナムルやチヂミにするのも捨てがたい。

私の中の定番は、スペインで食べて大好きになったズッキーニの酢漬け。皮をむき、ピーラーでリボン状に薄く切ったズッキーニを水とビネガーの液にひと晩浸します。液が染み込んだら余った汁を捨て、オリーブオイル、塩、ニンニク、たっぷりの刻んだパセリと和えて出来上がり。程よくシャキッとした食感も残っていて、そのままサラダとしても、サンドイッチやポテサラに入れてもいい感じです。

同じく海外で出合ったのは、正式な名前はわからない中東の朝ごはん、名づけて「ズッキーニと卵のぐちゃぐちゃ」。まず、みじん切りしたタマネギとダイスカットしたズッキーニを炒めます。軟らかくなったら塩コショウと溶き卵を足してぐちゃぐちゃに炒め、最後にパクチーやパセリ、バジルなどのハーブをどさっと入れて火から下ろします。パンにつけて食べますが、完全にズッキーニが主役です。

ズッキーニボートも100%主役です。縦半分に切ったズッキーニの身をくりぬき、みじん切りにした身にチーズやベーコンなどを混ぜてから本体に詰め直します(身入りのミートソースを詰めるのも最高)。オーブントースターで焼けば、ズッキーニが容器でズッキーニが中身の自作自演(ズ作ズ演?)ミニグラタンの出来上がり。ダイエットにもオススメです。

最後の主役メニューは、アメリカ南部のズッキーニパイ。パイ生地の中にチーズ、スライスしたタマネギとズッキーニを層にして重ねたもので、親戚の家でよく食べてました。南部はなんでもパイにする癖がありますが、ズッキーニパイは外せません。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。『月刊コロコロコミック』の漫画『コロッケ!』が原作のゲームのオリジナルキャラ、「ズッキーニ」は苦手。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!