若いうちから気をつけたい、高血圧の基礎知識とは? 若いうちから気をつけたい、高血圧の基礎知識とは?

人気ロックバンドBUCK-TICKの櫻井敦司氏がステージ上で脳幹出血のため倒れて帰らぬ人となったが、この脳出血の主な原因は高血圧らしい。そして、高血圧の怖いところは無自覚・無症状なこと。若いうちから気をつけたい、高血圧の基礎知識をあらためて聞いてみました。

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■後悔しないために早めの対策を!

「高血圧は無自覚・無症状ゆえに恐ろしい」と、荏原病院循環器内科医長の冠木敬之(かぶき・たかゆき)先生は忠告する。

「40代以上の日本人の4割が高血圧といわれています。そのうち、ちゃんと治療しているのは4分の1くらい。残りの4分の3は自分が高血圧という自覚がありません。そして、知らず知らずのうちに動脈硬化が進んでしまうんです」

必要なのは早めの対策! というわけで、高血圧にまつわるさまざまな疑問を冠木先生に聞いてみた。

――そもそも血圧とは?

「簡単に言えば、心臓から出てくる血液が、体の血管(動脈)にかける圧の強さです。心臓がぎゅっと収縮すると、血液がドバッと出て、それによって血管内に血液が流れる。その、ドバッと出たときにかかった最も強い圧が最高血圧(収縮期血圧)。血液が送り込まれていないときの圧がかかっていない状態を最低血圧(拡張期血圧)といいます」

――気をつけないといけない数値は?

「正常血圧は120(最高)/80(最低)以下。病院内測定での高血圧の基準は140/90以上。自宅だと135/85。〝白衣高血圧〟といって、病院に来た緊張で数値が高くなってしまうので、院内で測る基準と自宅で測る基準に差があります」

――血圧が高いと何がどう悪くなるんでしょう?

「高血圧が長く続くことで、血管に圧力がかかって細かいヒビができます。そこにコレステロールなどの脂が入り込んでくる。入り込んだ脂は時間がたつと固くなり、ゴムのように柔らかかった血管が固い物質に変わってしまいます。これを石灰化といい、動脈硬化につながります。

固くなった血管は圧に弱くなってこぶを作ったり、コレステロールが蓄積し、血管の壁が厚くなっていく。血液の通り道が狭くなり、流れが悪くなります」

――結果、引き起こされる病気は?

「死につながる病気の引き金になります。日本人の死因の1位はがんですが、2位は動脈硬化の病気。動脈硬化の病気とは、心臓の病気(心筋梗塞、心不全など)や脳の病気(脳出血、脳梗塞など)。特に脳血管の病気の原因は、ほぼ高血圧です」

――最近、人気ロックバンドBUCK-TICKのボーカル櫻井敦司氏も脳出血で亡くなられました。

「先ほども言いましたが、高血圧が長く続いていると、常に血管は圧に対抗し続けている状態になっている。そうするとだんだんボロボロになってしまったり、小さな血管のこぶができて、破れやすくなってしまうんです。

脳には血管が多く、特に脳の奥のほうの細い血管はもろくなりやすく、破れやすい。細い血管は0.2㎜くらいしかないですが、脳はそういった少しの出血でも命に関わります。

脳の真ん中のほうが出血すると、2、3割の方は亡くなってしまう。生き延びられても、8割の人に後遺症が残る。自分の足で歩ければいいほうで、だいたいは寝たきりになってしまいます」

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――怖いです。具体的な血圧の下げ方を教えてください。

「一番いいのは塩分を控えること。1日に1、2gの塩分があれば生きていけるのですが、日本人の食生活だと、何も考えないと12~15gくらい取ってしまう。

対策として、例えば味噌汁を飲まないとか、ラーメンは汁まで飲むと10g程度の塩分を取ることになるので、そういう麺類の汁は飲まないとか。意識的に3、4g減らせたら薬1錠分くらいの効果があります」

――そもそもの疑問なのですが、塩分を取ると、なぜ血圧が上がるのでしょう?

「塩分を取りすぎると、体に水がたまります。血管の中の水分量が多いとパンパンになり、かかる圧が大きくなる。また、体の中のナトリウム(塩など)が多すぎると、それを管理するためのホルモンや交感神経が活性化してしまい、血圧が上がるんです」

――なるほど。話を戻しまして、そのほか、血圧を下げる方法があれば教えてください。

「①速足で歩いてみるなど、1日合計30分程度の軽い有酸素運動をする。

②横になると血圧が上がるので、椅子に座って背もたれにもたれかかり、クラシックなどを聴きながら白湯(さゆ)を飲む。首に温めた布を巻く。など、とにかく自分が一番リラックスできる状態を見つける。

③深呼吸も血圧を下げるのに効果はあります。大きく吸って吐く(肺の中に圧力をかける)という行為自体にリラックス効果があります。

④適温のお風呂にゆっくり入って体を温める。足湯、岩盤浴などを10~15分、じんわり汗をかく程度で楽しむのもいいです。ただし、高温のサウナのように、ダラダラ汗をかくのは良くありません。

⑤0.5合以内のアルコールをゆっくり飲む。

⑥たばこを控える、暴飲暴食をやめる、夜更かししないなどの生活習慣を整えてみるのもいいです」

――アルコールは血圧を上げると思ってました。

「少ない量(0.5合以下)だと体がリラックスするので、むしろ血圧は下がる傾向があります。ですが、1合を超えてくるとストレスになり、交感神経が活性化してくるため血圧が上がるので、注意」

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――一度高血圧になっても、治るものなのでしょうか?

「高血圧はしっかり治せます。まず生活習慣を見直して、それでも下がらなければ治療薬はいくつもあるので、きちんと通院して自分に合う薬をもらう。

最近はスマートウオッチなどもあるので、そういったものを活用するのもいいですね。自分の健康をしっかり把握すれば、血管の病気はかなりの確率で防げます」

――ちなみに、年齢とともに血圧は絶対に上がるものですか?

「体や関節が固くなるように、年とともに血管も劣化し固くはなります。ただ、若いうちから生活習慣に気をつけていれば高血圧が引き起こす病気のリスクはかなり違ってきます」

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――では、動脈硬化になってしまったら治りますか?

「動脈硬化自体は治りません。一度固くなった血管はずっとそのままです。ただし、動脈硬化ができてからでも、きちんと管理をすれば、病気を発症させないようにすることはできます。

また、脳梗塞になりそうな狭い血管が見つかったとか、脳動脈瘤(こぶ)が破裂する前に見つかれば治療はできます。心臓も、心筋梗塞を起こしそうな血管が先に見つかれば治すことはできます」

――また話が戻りますが、櫻井敦司さんはステージ上で倒れられましたが、血管はちょっとした運動や興奮など、一瞬のきっかけで破れてしまうものなのでしょうか?

「普段の血圧や生活習慣に問題がなく動脈硬化の進行のない人であれば起こりません。健康な血管に高い圧がかかっても、通常破れることはありません。

常に血圧が高いとか、動脈硬化が進んでいるもろい血管に強い圧やストレスがかかると、ある日急に破れてしまうことがあります。おそらく、櫻井さんの場合はギリギリの状態だったのではないかと察することができます」

――そうしたギリギリの状態を自分で判断できないのでしょうか?

「高血圧自体に症状はないので、日頃から自分の血圧を測っておく。それに尽きます。高血圧を気にして病院に通院していたり、日頃の生活に気をつけているような方が、ある日突然亡くなるというのは、ほとんどないと思います。

血圧がある程度高くても、そこからちゃんと予防策を講じれば、脳出血などの発症は十分抑えられますので、早めの対策をぜひオススメします」

――ちなみに高血圧だと判明すると、若くても薬を飲まないとだめですか?

「医学的には、服薬は40代からで大丈夫。でも30代から生活習慣は見直したほうがいいでしょう。特に若くて血圧が高い人は食生活などが影響している可能性が高いので、意識してください。日常生活の中で血圧を上げている要因はたくさん存在すると思うので、まずは自分の生活を見直してみましょう」