『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、今年買って良かった「市川的ベストバイ」について語る。
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気づけばもう12月ということで、今年買って良かった「市川的ベストバイ」をいくつかご紹介します。
まずは、ジャパニーズクラフトジン。焼酎やワイン派の私ですが、今年は和素材のジンの魅力に目覚めました。全国各地、多様な植物が育つ日本。日本ならではの薬草や果物、スパイスやハーブなどの自然素材が織り成す味わいと、焼酎などで培った蒸留の技術に魅了されて、ジャパニーズクラフトジンの深い世界に一歩を踏み入れました。
きっかけは、お世話になっているヘアメイクさんからの贈り物。私のサンショウに対する偏愛を知っていて、野沢温泉蒸留所の「クラシックドライジン」をくださりました。これが、も~絶品で。森の中にいるかのような香りに、かんきつのアクセント、そして最後にサンショウのピリピリ。
少しパンチの利いている味わいだけど、バランスが絶妙。あまりストレートでは飲まない私でも、このスッキリとした味のピュアさにはうっとりです。食事とも合うんですが、食中酒にするのがもったいなくも感じて、酒を「舐める」の意味を初めて知りました。来日していた父も兄も気に入り、一瞬でなくなりました。長野県の野沢温泉の湧水を使っており、お店では見かけたことないのでインターネットで買ってます。ぜひ。
広く流通しているものだと、サントリーのジャパニーズクラフトジン「ROKU(六)」も優秀。ソーダ割りの缶がコンビニ発売されている同社の「翠(SUI)」と同じく、和素材を使ったクラフトジンです。「翠」はユズとショウガの香りが印象的で、緑茶のような風味も感じられてかなり爽やかですが、「ROKU」はキレがあってボタニカル。桜の甘さの中にユズと煎茶が香っていて、サンショウもほのかに感じられる。より繊細で華やかでロックもおいしいですが、お茶割りやトマトジュース割りもオススメです。
面白いところだと、新潟のYASOのノンアルコールクラフトジン。「森の中にあるラベンダー畑」「朝霧に佇たたずむ魚沼杉」など、ハーブ好きにはたまらないラインナップです。ノンアルカクテルにしてもいいですが、炭酸で割ってボタニカルソーダにすれば運動後に良さそう。アルコール入りのクラフトジンだと、ヤマニンジン葉やジンセンベリーなどを抽出した「YASO103 GIN」が印象的。酒蔵ではなく「越後薬草」という薬草酵素の老舗だから造れるブレンドだし、名前が今年をにぎわせた熊のOSO18に似ているのも◎。
大人気「季の美」シリーズの「季のTEA 京都ドライジン」もおいしかったです。日本初のクラフトジン蒸留所である京都蒸溜所と老舗茶舗「堀井七茗園(しちめいえん)」のコラボで、開けたときの香りがまるでお茶室。優しい甘さの後の、緑茶の渋い余韻が特徴的でした。
ほかにも信州の「香かの雫しずく」は日本固有の香木クロモジを主役にしていたり、泡盛「まさひろ」の蔵元から出ている「まさひろオキナワジン」はシークワーサー、ゴーヤー、ピィパーズを使用していたりと、その土地ならではのジャパニーズジンから目が離せません。スピリッツを飲み慣れてない方にもオススメです。
今週はジンだけで終わってしまいました。来週に続く!
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。結局、サンショウが好き。公式Instagram【@sayaichikawa.official】