『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、今年の干支である辰(たつ)年にちなんで、「辰」がつく駅に注目する。
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新年あけましておめでとうございます! いわゆる「コロナ禍」が始まった2020年から、なんと4年。恐怖さえ感じる早さですが、ここは「時がたつ(辰)のが早いね!」と新年らしく軽やかに昇華させてください。
縁起物をあまり意識しない私ですが、辰年にちなんで、「辰」がつく駅に注目してみます。開運スポットならぬ、鉄運スポットということで(「鉄運」って書くと貨物列車の会社みたいだけど)。
日本に「辰」がつく駅はふたつあります。長野県にあるJR中央本線・JR飯田線の辰野(たつの)駅、そして東京メトロ有楽町線の辰巳(たつみ)駅。「龍」がつく駅は長野県の龍岡城(たつおかじょう)駅、栃木県の龍王峡(りゅうおうきょう)駅、京都府の龍安寺(りょうあんじ)駅など6つ。
「竜」まで広げると、鹿児島県の竜ケ水(りゅうがみず)駅や福井県の九頭竜湖(くずりゅうこ)駅など17駅存在している上、天竜浜名湖鉄道の天竜浜名湖線や関東鉄道の竜ヶ崎線など、「竜」系な路線もあります。
私のオススメは、「ドラゴンレール大船渡線」の愛称で知られるJR大船渡線。地図で路線を見ると、まるで辰が飛翔しているように曲がりくねっていることから、この愛称がつけられました。辰の背中に乗って旅する気分で、新春鉄旅もいいかもしれません。
ちなみに、大船渡線の気仙沼駅(宮城県)~盛(さかり)駅(岩手県)間は東日本大震災の影響で廃止となってしまい、現在BRT(バス高速輸送システム)で運行されています。列車がバスに代わっても三陸の風景は変わらず素晴らしいので、訪ねてみてください。
首都圏の干支(えと)の駅でオススメは、先ほども挙げた有楽町線辰巳駅です。東京都江東区にあるこの駅の近辺を、先日初めてぶらぶらしてみました。倉庫や団地のイメージが強かった辰巳ですが、実際は緑もたくさん。「辰巳の森海浜公園」や「辰巳の森緑道公園」といった大きな公園が駅周辺の大部分を占めています。
中でも、辰巳の森緑道公園はなかなかパンチが利いていました。駅の脇の細道を抜けて公園に入ると、まずは気持ち良さそうな自転車コースがあります。さらに奥に進むと、パンダの遊具が見えてきます。1匹、2匹、3匹......近づくと、座って乗る遊具のパンダが12匹もいるのがわかります。しかも微妙な距離で、整然と並んでいる。
マスゲームのように、きれいな間隔で大量のパンダたちが同じ方向を向いてたたずんでいる光景は、とてもシュール。意図がわからなすぎてびっくりしましたが、間違いなくかわいいです。1匹だけ赤いパンダがいて、モノクロの中で輝く紅白パンダは妙にめでたく感じました。現にそいつは人気者で、公園の常連らしき少女は紅白パンダに一直線でした。
パンダに紛れて、鉄製っぽいゴリラも一頭います。偉い人の像みたく立っていますが、説明文などが見当たらなかったので正体は不明。あいつはなんでしょう。別の一角には、すべり台や砂場を兼ねた巨大なタコの遊具も。確かめてはいないけど、地元では「タコ公園」と呼ばれていることでしょう。さらに奥には、辰のオブジェもあります。辰らしからぬ、ずんぐりとした体形ですが、"ヘボかわいい"です。
2024年もこのようなぬる~い感じで頑張りますので、『ライクの森』をよろしくお願いします。
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。2024年の抱負は「腹八分目」。公式Instagram【@sayaichikawa.official】