『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、前回に引き続き、海外での相撲の盛り上がりについて語る。
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前回に続いて、市川が(勝手に)感じている英語圏の相撲の盛り上がりについてのお話です。アメリカで大相撲を追っているファンによるYouTubeチャンネルの増加や、ネットコミュニティの活気をはじめ、日本相撲協会が始めた公式の英語チャンネルなども取り上げました。
今では、国技館チケット売り場に外国人用の発券機「Will Call」が設置されたり、本場所の開催に合わせて行なわれる「相撲観戦ツアー」もあっという間に売り切れ。相撲部屋の見学ツアーも人気で、私が見た英語の旅行サイトでは「WW」に続いて2位の人気でした。
同じくインバウンド×相撲で欠かせない存在は、「横綱とんかつ どすこい田中」。こちらは土俵で相撲ショーが見られるとんかつ屋さん。2022年11月に両国近くの墨田区立川(たてかわ)にオープンして以来、海外の友達からよく耳にします。
「ショー」といっても、出演するのは元力士たちなので、立ち合いなどの迫力は両国国技館さながら。さらに、土俵は専門の業者さんが公認規定にのっとって作ったもの。土も国技館と同じ「荒木田土」を使用しており、正真正銘本物の土俵です。本物のお相撲さんが本物の土俵で目と鼻の先で相撲を取る硬派なスリルに加え、英語でのアナウンスやルール説明、力士の着ぐるみを着て元力士と相撲"体験"できるという、観光客に寄り添うポップなサービスもあるようです。
ちなみに、オーナーも元力士・魁道(かいどう)。相撲の魅力を世界に広げるだけでなく、引退した力士のセカンドキャリアの受け皿をつくることも店の狙いだそう。
ほかに、元力士で相撲の世界発信に挑んでる人だとYAMA(元幕内の山本山)が思い浮かびます。日本人力士の最重量記録を更新した超大型力士として人気だった山本山でしたが、2011年に大相撲八百長問題に関与したとされ引退。その後はハリウッドでタレント業をスタート。
『ジョン・ウィック』シリーズや、エド・シーランの『Shape Of You』のPVのような世界的ヒット作品に出てたのは知ってましたが、最近は国際相撲連盟(ISF)の傘下にある組織USA SUMO(USSF)の下で指導をしているそうです。『サンクチュアリ -聖域-』の静内(しずうち)役の住 洋樹(すみ・ひろき)さん(元十両・飛翔富士)もUSSFのサイトに名前がありました。
最近引退した元関脇・逸ノ城(いちのじょう)が、USSFが主催するアマチュア相撲大会「米国相撲オープン(US Sumo Open)」に登場したことでも注目を集めました。ちなみに、土俵はプラスチックのシーツを広げたもの、まわしの下にはタイツをはくスタイルで取組を行なっています。
USSF以外に、米国には別団体「ワールド・チャンピオンシップ・スモウ(WCS)」もあります。こちらは3本勝負で勝敗を決めるようにアレンジされ、一部では「コンバット相撲」と呼ばれています。4月にはなんとニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開催し、約5000枚のチケットが完売。こちらにも元大砂嵐、千代大龍ら幕内経験者も出場したそう。私は観戦したことはありませんが、どのように進化していくのか注視していこうと思います。
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。小錦さんがプロデュースする、相撲をテーマにしたレストランも気になる。公式Instagram【@sayaichikawa.official】