パリッコぱりっこ
1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家、イラストレーター。
著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。2022年には、長崎県にある波佐見焼の窯元「中善」のブランド「zen to」から、オリジナルの磁器製酒器「#mixcup」も発売した。
公式X【@paricco】
ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。
それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才？」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。
そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。
＊ ＊ ＊
ハンバーガーが大好きだ。あの料理は、どう考えたってうまい。そしてまた、ハンバーガーの横には、できればビールがあってほしい。好きだからといったって、そう頻繁に食べるわけではないからこそ。
ところが、僕的にもっとも身近な「マクドナルド」にはアルコールメニューがない。「モスバーガー」は、一部扱いのある店舗もあるらしいが、残念ながら僕の生活圏内にアルコール提供店はない。おのずと、テイクアウトしてきたものを家でつまみにすることになる。それはそれで嬉しいけれど、もっと気軽に、店内でできたてのハンバーガーをつまみにビールが飲めたらな......という思いは、常にある。
チェーンではない高級バーガー系の店ならば話は別になってくるけれど、そういう店こそ、僕にとっては日常的に行ける場所ではないし。 と、ついめんどくさいことを長々書いてしまったが、実は僕は知っている。数年前に気がついてしまったのだ。運良く自分の生活圏内にあって、その欲望を気軽に叶えてくれる店が「フレッシュネスバーガー」であることを。
夕方近くに仕事が終わり、本屋に用事があって、地元駅のひとつである大泉学園駅前まで出てきたある日。フレッシュネスバーガーの前を通ると、ものすごく目を引くのぼりを発見した。「ソフトシェルクラブ」というカニを丸々1匹バンズに挟み込んだメニューが、期間限定で発売中らしい。
すごいインパクト
正式名称「シンガポールチリクラブバーガー ～スイートトマトチリソース～ 」。どんな味なんだろうか。昼食を食べそびれていたこともあり、ものすごく魅力的だ。よし、寄っていくか。 と、さっそくレジにて、目当てのバーガーとビール、ポテトSを注文。しばらく待っていると、できたて熱々のそれらが到着。
いきなり最高
もうちょっと詳しく説明すると、チリクラブバーガーは、シンガポールで「カニ料理の王様」と呼ばれる人気グルメ「チリクラブ」をハンバーガーにアレンジしたものらしい。
殻が柔らかく、丸ごと揚げることでそのまま食べられてしまうカニ、ソフトシェルクラブ。そこに、スクランブルエッグやしょうが、にんにくが香るスイートトマトチリソースを合わせて、チリクラブの美味しさを表現したのだとか。これが単品で税込み780円は、かなりリーズナブルだと思う。
そう。フレッシュネスバーガーって、以前の僕は勝手に高級なイメージを抱いていたが、実はかなり手頃な価格帯の店なのだ。この日に頼んだポテトだって290円だし、夕方4時から閉店までという太っ腹な設定の「ハッピーアワービール」も、まさかの290円。つまり、僕が頼んだ今日のセットで、トータル1380円。この内容からすると、破格とすら言えるだろう。
ハンバーガー、こんなにちゃんとしてるのに
ポテトもSでしっかり量がある
ビールも嬉しいサイズ感
それではいただきます。まずはずっしりとした重みが嬉しいビールをごくりとやって、のどを湿らせる。そしたらいよいよ、チリクラブバーガー。
こんな感じ
食べる前にバンズを持ち上げて見てみると、確かに、通常のパティではなく、丸々1匹のカニがそこにいる。パプリカの素揚げやスクランブルエッグがたっぷりなのも嬉しい。 いざ、がぶり。ザク、ザク、ザク。おぉ、揚げたソフトシェルクラブの食感が、ものすごく軽快だ。その他の野菜や、ふわふわで香ばしいパンともあいまって、ものすごいごちそう感。もちろん、カニの身をたっぷりとほおばったような快感とはベクトルが違うけど、柔らかい身から、カニの風味や、時にみその旨味なども感じられ、ひと口食べるごとに楽しい。いかにもエスニック風な甘めのソースもよく合っている。
ポテトはよくある細長い「フレンチフライポテト」ではなく、皮つきの「北海道産フライドポテト」を選んだが（どちらも価格は同じ）、これまたきちんとうまい。ビールと合わせて、完全に黄金の三角形を描いてしまっている。 さらに、フレッシュネスの嬉しいポイントはまだまだある。そのひとつが、無料で使えて8種類も取り揃えられた「ワールドスパイス」の存在。店内にコーナーがあって、いつでも自由に使うことができるのだ。
「ワールドスパイス」
ハンバーガーやポテトを半分くらい食べたところで、味変好きの僕は当然、このコーナーへ向かう。
ハンバーガーは、味のベースが甘めだったので、酸味や辛味がありそうな「チョルーラ ホットソース」「シラチャーソース」を左右に半々ずつ足してみた。一瞬にして、シンガポール、メキシコ、タイが合体した多国籍バーガーの誕生だ。
ポテトには僕のお気に入り「イタリアンウェイ 白トリュフ」というスプレーオイルを吹きかける。普通のポテトが、これまた一瞬で高級料理に変身。
多国籍バーガーに
トリュフ風味ポテト
最後までザクザク感がキープされ続けるのもすごいチリクラブバーガーには、予想どおりどちらのソースも合う。個人的には、酸味と辛味に加え、複雑なスパイス感もあるチョルーラソースがより気に入った。こんど輸入食品店で探してみようかな。ポテトも当然のことながらビールに合いすぎる。
というわけで、こうして記事を書きながら思い出しているだけで、楽しさと満足感がよみがえってくるフレッシュネスバーガーは、やっぱりありがたい店だなぁ。
ここで最後に、もうひとつだけ衝撃の事実をお伝えしておこう。実は今、僕の住む東京都練馬区では、PayPayで支払うとポイントが20%戻ってくるキャンペーンが開催中。当然僕はそれを利用したので、つまり今日のトータル金額は、実質1104円だったというわけだ。期間限定のことだし、多くの人にとっては関係のないかもしれないけど、いやぁ、なんともおそろしい......。
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