『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、2022年に日本の店舗が無くなってしまった「アンナミラーズ」について語る。
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惜しまれながら2022年に閉店した老舗ファミリーレストラン、アンナミラーズ高輪店。当時、このコラムでも驚きとショックをつづりましたが、週2でお世話になるほどの常連だった私は、いまだに"アンミラロス"に陥っています。定期的にパイのみを販売するポップアップストアが各地で出店されていますが、高輪店の閉店によって、日本からアンナミラーズの店舗は消滅したままです。
でもそれは日本の話。世界に目を向けると、アンミラはまだある! あの古き良きアメリカンカントリーな雰囲気、あの白ブラウスにミニスカートのかわいい制服、あの絶品なパイはまだ健在。ということで、今や世界で唯一のアンナミラーズになった、ハワイのアイエア店に行ってまいりました!
場所はワイキキから車で25分ほどのパールリッジセンター内。アロハスタジアムからも歩ける距離で、以前ご紹介した新しい鉄道、ハワイスカイラインのカラウアオ(パールリッジ)駅も目の前です。車窓から見える「Anna Miller's Restaurant」のウッディな看板に大興奮間違いなし! アピールも兼ねて「アンミラ前駅」に改名を願いたいです。
ここのアンミラは1973年から営業する地元に愛されるレストラン。コーヒーとパイをいただきながらおしゃべりするおばあちゃんグループや、パンケーキにガッツく親子、ひとりでポットパイを食べる仕事の合間らしき女性、ホールのパイに誕生日のメッセージを書いてもらってる人もいて、地域に根差していることが感じられました。感謝祭やクリスマスなどの祝日の時期には、パイを買い求める人で大混雑するそう。
名物のパイ以外には、ハンバーガー、ステーキ、ポットパイ、サンドイッチ、スパゲティなど、日本と似たメニューが。高輪店で市川のお気に入りだったパティメルトサンド(ひき肉、チーズ、オニオンのホットサンド)もあったし、ターキーのお肉を使った日本では見かけないアメリカンなホットサンドも多数。アメリカ的「甘い×しょっぱい」の代名詞、チキンワッフルやハワイらしいメニューもたくさんありました。ロコモコやマヒマヒ、スパムを使った料理やサイミン(ハワイ発祥の麺料理)には、「ハワイアンミラだ~」とワクワクしました。
驚いたのは、24時間営業だったこと。なんてアグレシッブ。コロナ禍以降、常にそうとは限らないみたいですが、「24時間いつでもブレックファストメニューが頼める」というアメリカ人が異様に好きな営業形態を目指しているそう。
さてアンミラといえば、あの制服。高輪店と同じミニスカート版やロングスカート版、ゆったりブラウスやメイドっぽいブラウスなど、何種類かありました。日本で人気を博したアンミラの制服ですが(あれが着たくてバイトの面接を受けた友人もいた)、あれは「萌え」を狙ったものではなく、ドイツの民族衣装のディアンドルをモチーフにしたものだそうです。実在したアンナ・ミラーさんは、ドイツ系移民が多い米ペンシルベニア東部の人だったとか......。いまさらながら、今回初めて由来を知りました。
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。この号の発売日には終わってるけど、横浜の髙島屋に期間限定で出店するアンミラのポップアップストアも絶対に行く。公式Instagram【@sayaichikawa.official】