ウーバーイーツで家カプリ ウーバーイーツで家カプリ
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、「カプリチョーザ」の名品「トマトとニンニクのスパゲティ」を語る。

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日本が誇るイタリアンチェーン「カプリチョーザ」の名品「トマトとニンニクのスパゲティ」。トマトの甘み、ニンニクのコク、つるんとした中太のスパゲティは、私にとって青春の背伸びの象徴であり、食欲がなくてもバクバク食べられるスーパーフード。

ミシュランの星付きのお店や行列のできる隠れ家まで、おいしいとされているパスタはそれなりに食べてきたつもりだけど、「やっぱりめちゃくちゃクオリティ高い!」と立ち返る名品です。

初めて食べたのは、アメリカから日本に遊びに来ていた中学2年の夏に、母とカプリチョーザ横浜元町店に立ち寄ったとき。メニューも豊富で具だくさんなパスタにしようか迷いましたが、大人ぶったのか、シンプルなトマトとニンニクのスパゲティをチョイス。これが大大大当たりで(看板メニューだから「大当たり」と思うのもおかしいけど。予想を超える味に感動した少女さやでした)。

濃厚な甘みが絶妙なトマトソースがたっぷり絡まったスパゲティの喉越し、厚めにスライスされたニンニクの香ばしさ。許されるものならお皿を舐めて最後の一滴まで食べたかった。

カプリチョーザと再会したのはその数年後、高校で日本に引っ越してきてから。学校では、イケてる女子がとあるイタリアンの話題で盛り上がってました。彼氏とそのお店に行った、と報告したコに対して、「あそこに連れてってくれたの!? 彼に大切にされてるね」「ニンニクすごいけどいいの?」「おいしいからいいよー」と、なんだか大人びた会話をしていました。

それを聞いた私と食いしん坊仲間のT奈氏は興味津々で、「普段行くところよりちょっといいお店だけど行ってみよう」と少しおしゃれな服を着て挑みました。

教えてもらった吉祥寺の路地を曲がると、そこには目に焼きつくような真っ赤な看板。殴り書きのようなワイルドなカタカナで書かれていたのは「カプリチョーザ」。感動の再会でした。その日は「シチリア風ライスコロッケ、ミートソースがけ」も知りました。

拳くらいの真ん丸なコロッケからチーズがトローンと流れ出したときは歓声を上げましたね。トマトとニンニクのスパゲティは、思い出を裏切らない味。すでに本場のポモドーロも経験していた私でしたが、カプリチョーザの"トマニン"には南イタリアに負けない強い甘みとコクを感じました。パスタもモチモチに逃げてないのがいい。

後に知ったことですが、実際にカプリチョーザは、南イタリア産のトマトにこだわっているそうです。プーリア州フォッジアで栽培されたトマトを毎年8月の収穫後に輸入し、その年の水分量や糖度に合わせて加工をしているとのこと。

調理研修も徹底しており、創業当時の味を守ってます。ちなみに創業者の本多征昭氏は、1960年代にイタリアで修業を積み、ヨーロッパで多数の賞を受けて、イタリア政府にも評価されたそうです。70年の大阪万博ではイタリア館のシェフに選ばれました。かなり本格的です。詳しくは公式のサイトをぜひ。

そしてトマニンをまだ経験してない方、ぜひとも! すでにカプリファンの方は、トマトの陰に隠れがちなクリーム系もぜひ。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。「カプリチョーソ(カプリチョーザ)」は音楽用語でも、パスタでも同じ「気まぐれ」の意味。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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