近年の筋トレブームもあってか、その鍛えあげた肉体を披露する場であるボディコンテストが盛り上がりをみせている。
フィットネスクラブのゴールドジムが主催するコンテスト「マッスルゲート」の昨年の累計エントリー数は8357人と、前年比でなんと135%もアップ。
今年8月に初めてボディコンテストに出場した官公庁の男性職員(50代)は、「近場のマッスルゲートの大会はいずれも定員に達していてエントリーできず、他団体の大会に出場しました。残念ながら予選敗退でしたが、すごく楽しかったです」と、日に焼けた肌とは対照的な白い歯を見せて笑う。
人気の背景には、芸能人がコンテストに参加したことがニュースになるなどが挙げられるだろう。昨年7月、カーリング女子日本代表の藤澤五月選手がFWJ(Fitness World Japan)主催の「MOLA CUP」に出場して披露した、その変貌ぶりは大きな話題になった。
また今年6月には、お笑いコンビ・東京ホテイソンのショーゴがフィットネスジムのゴールドジムが主催する「マッスルゲート」栃木大会のメンズフィジーク一般の部(168センチ以下級)で優勝したことも大々的に取り上げられた。
だが、芸能人の大会出場に関して声を潜めるのは某フィットネス系ライターだ。
「いくらコンテストブームだからといって、東京に比べれば地方大会の参加者はそこまで多くないし、そのなかでカテゴリや体重、年齢などでクラスが細かく分かれている。『誰それがコンテストで優勝した』なんてニュースになっても、実はそのクラスの出場者がその人しかいなかった......なんて例も少なくありません」
なるほど。とはいえ、筋肉界隈はなじみのない専門用語が多すぎて素人には何がなんだかわからない。
そこで登場してもらったのは、お笑いグループ・超新塾の元メンバーで現在は登録者数27万人以上を抱える人気筋トレ系YouTuberのコアラ小嵐氏だ。コアラさん、ボディビルについていろいろ教えてください!
コアラ小嵐 ビタミン、ミネラル、マッチョ......足りてますか? あなたのサプリメント、コアラ小嵐です。もちろんお教えしましょう! ですが、まず一般の方は筋肉を競う大会を「ボディビル」とひとくくりにしますが、ボディビルはあくまでカテゴリのひとつ。男性カテゴリは他に代表的なものに「メンズフィジーク」や「クラシックフィジーク」がありますし、団体によって求められる体も異なってくるんですよ。
ーーいきなり難しそうだ......。でもフィジークは最近よく耳にします。ボディビルとフィジークの違いってなんですか?
コアラ小嵐 筋肉の量と絞り・バランスを競うという意味ではどちらも同じですが、ボディビルは脚の付け根から露出するブーメラン状のポージングパンツ、比較的新しいカテゴリであるメンズフィジークはサーフパンツを穿いてステージに上がる。つまり、メンズフィジークはボディビルと違って巨大な脚が必要がなく、"海が似合う"ような筋肉のバランスと美しさも求められると言われています。クラシックフィジークはざっくりメンズフィジーク的なプロポーションとボディビル的な力強さを合わせたようなカテゴリですね。
ーーなるほど。ボディビルダー......じゃなくて、フィットネスアスリートの皆さんはすごく日に焼けて出場しますが、あれはどうしてですか?
コアラ小嵐 ステージ上では強烈なライトを浴びせられます。もし肌が白いとライトの明かりで筋肉の凹凸による影、いわゆる"カット"が飛んでしまって絞りをアピールできない。だから「いや、さすがに黒すぎでしょ!」ってくらいがステージ上ではちょうどいいんです。そのためにみんな大会前は肌をこんがり焼くんですよ!。
ーーたしかに氷上では美白だった藤澤選手が、カットばりばりのこんがりボディになっていたのは驚きました! いったいどのような大会があるのか、それぞれの特徴を教えてください!
コアラ小嵐 マイナーなものを含めると本当にたくさんの団体がありますが、現在、国内で代表的な団体というと「JBBF」(Japan Bodybuilding & Fitness Federation)と「FWJ」(Fitness World Japan)になります。
JBBFはJOC(日本オリンピック委員会)に加盟する唯一のボディビル団体であり、厳格なドーピング検査を行なっています。一方、IFBBプロリーグの傘下にあるFWJはステージ演出が華やかで、国内でも頻繁にプロ大会が行なわれています。
ーーこの2団体主催の大会が人気と?
コアラ小嵐 JBBFとFWJは二大巨頭感があります。他にもじわじわと人気が出てきた大会として「マッスルゲート」や、10年ほど前に発足し筋肉ブームの追い風にもなった「ベストボディジャパン」「サマースタイルアワード」なども人気です。
ーーコアラさんは2015年にベストボディジャパンでコンテストデビューを飾った後に、JBBF主催の大会へと出場するようになっていますね。
コアラ小嵐 僕が出始めた頃のベスボ(ベストボディジャパン)は登竜門的な位置づけだったように思います。審査傾向としてはモデル的な美しさに重きが置かれているようで、他団体とかぶらないようにフィジークとは別の価値観を打ち出している印象です。
そして、ベスボが出場者にどこか優等生の雰囲気がある大会だとすれば、サマスタ(元俳優の金子賢がプロデュースするサマースタイルアワード)の出場者は男女ともにワイルドな陽キャでギラついてる人たちが多い。
マッスルゲートは初心者向けの大会と思われがちだけど、上位入賞者はレベルが高い。ただ、露出が少ないカテゴリ用意されています。
ーーレベルが一番高いのは、いったいどの団体の大会なんですか?
コアラ小嵐 う~ん、各団体さまざまなレベルの大会を行なっており、審査基準や条件も異なるため比べるのが難しい。というか、団体どころか、数年前とトレンドが違って審査傾向も微妙に変わってたりしますから(笑)。
ーーでは、筋肉芸人の中で誰が一番スゴイ?
コアラ小嵐 TBBF(JBBF東京連盟)主催の東京ノービス(第29回東京ノービスボディビル選手権大会男子75キロ超級)で優勝した(なかやま)きんに君さんでしょうか。ノービスは入り口的な大会でまだまだ上があるけど、芸人という枠ならむちゃくちゃスゴい。余談ですが、僕も同じ大会の75キロ以下級で優勝してますけどね!。
ーーめっちゃスゴいじゃないですか! ちなみに、コアラさんが注目する若手の筋肉芸人はいますか?
コアラ小嵐 青木マッチョくんですかね。純粋に筋肉の大きさだけでいったら芸人イチ。まぁ彼は筋肉芸人なのに上裸になるのがイヤみたいだから、大会には出ないでしょうが(笑)。
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コアラさん、ありがとうございました!
たかが筋肉、されど筋肉。いろいろ知識をつけておくと筋肉に人生を捧げた人たちの見方も変わるかも。今年は誰がコンテストをにぎわすのか、注目だ。