『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、駅名に偽りあり?な「トラップ駅」たちを紹介。
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最寄り駅と聞いたら、どのくらいの距離を想像しますか? もちろん駅から遠い=悪ではないけど、「この駅名なのに!?」という駅ってありますよね。今回は、駅名に偽りあり?な「トラップ駅」集!
まずは、東武東上線の「森林公園駅」。森林公園は首都圏に存在する3つの国営公園のうちのひとつで、正式名称は「国営武蔵丘陵(むさしきゅうりょう)森林公園」。この森林公園と森林公園駅、なんと約3㎞離れているんです。森林公園のサイトには徒歩約40分と記されています。丁寧かつ絶望的な案内。ただ、便利なバスが運行していますのでご安心あれ。
続いてのトラップ駅は、富士急行の「富士山駅」。富士山からの直線距離が一番近い駅なので、最寄り駅とはいえるでしょう。実際に、壮大な富士山が一望できるオススメの駅です。しかし、一望できるってことは、かなり離れているということ。ルートにもよりますが、富士山駅から徒歩で富士山を目指す人は少なく......。
ほかの人気の登山口には東海道新幹線の三島駅か新富士駅、JR東海道線の富士駅、JR身延(みのぶ)線の富士宮駅などからバスに乗ることが多いそう。富士山駅からもバスは出てますが、5合目までの直通になります。ちょっとワープしてもいいならアリ。ちなみに私はアリ。
同じく「大きく出たなぁ」と思うのは、西武多摩川線の「多磨駅」。多摩地域は、東京の西側に位置する30市町村からなる巨大エリアです。車に多摩ナンバーがあるほど幅を利かせてますが、堂々と「多磨駅」と名乗っているこの駅は、2020年まで構内踏切があったような小さな小さな駅。
私の出身高校の最寄り駅でもありますが、2000年代に入っても自動改札がありませんでした。そもそも、駅名の由来は多磨墓地(今の多磨霊園)なんですが、「摩」を「磨」と表記してるところに謙虚さ(?)を感じます。
私もわなにハマったことがあるのは、「花巻空港駅」。〇〇空港駅は、全国にあります。その名称から、駅と空港が直結していたり隣接していると想像しますよね。ですが、花巻空港駅はなんと空港ビルから約3.8㎞離れています。グーグルマップでは徒歩50分。
パワーワード。もともとはもう少し空港に近かったけど、ターミナルの新設によってこんなにも離れたそうです。かわいそうに。近いといっても元から2㎞離れてたけど......。ご利用の際は、バスも運行してるのでご安心を。駅舎も木造の素朴な駅で、いい感じです。
「〇〇大学駅」という名称ながら、その大学がもうない駅も全国にちょこちょこありますね(東急東横線の都立大学駅など)。そんな中でも際立っているのは、千葉・佐倉の山万ユーカリが丘線の「女子大駅」。
「公園駅」や「中学校駅」などシンプルすぎる駅名が特徴の山万ですが、「女子大駅」は完全なるトラップ! 女子大駅には女子大はないし、そもそも女子大があったこともない! その経緯は、以前このコラムで山万を語ったときに紹介したので、興味ある方はご覧ください。
でも、一番偽りがあるのはJR水戸線! 水戸線なのに「水戸駅」を通らない! 水戸市も通らない! トラップを超えて、落とし穴です。
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。北品川駅は品川駅の南にある。公式Instagram【@sayaichikawa.official】