直井裕太なおい・ゆうた
ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。
「丸亀製麺」が一強といわれるうどんチェーン業界。そんな中、SNSでトレンド入りしたり、ヤフトピをにぎやかすことも多いのが北九州発祥のうどんチェーン「資(すけ)さんうどん」だ。
すかいらーくHDに大型買収され、全国展開することを発表した資さんの魅力を、専門家や地元民たちに語ってもらいます!
9月6日、「ガスト」や「から好し」などを手がける大手外食チェーンのすかいらーくHDは、九州を中心に展開するうどんチェーン「資さんうどん」を買収したことを発表。
その総額は240億円というローカル外食チェーンとしては異例の超高額買収が話題になる一方、すかいらーくHDは資さんうどんの世界進出も視野に入れた全国展開も決定。SNS上には資さんうどんの熱狂的なファンが多く、彼らに後押しされトレンド入りし、さらに関連ニュースがヤフトピになることも!
そんな、資さんうどんの魅力とは? ローカルフードの専門家、地元民、そして九州出身で資さんの東京・全国への進出を待ち望んでいた方々などに語っていただきます。
まずは、交通系・ご当地グルメライターの宮武和多哉さんにお聞きします。資さんうどんは九州では圧倒的な知名度を誇る超有名チェーンですが、関東での知名度はまだまだSNSでの限定感があります。どういった特徴のあるうどんチェーン店なのでしょうか?
「1976年に、福岡県北九州市戸畑区に1号店を出店。創業者の大西章資さんの名前から一文字を取って『資さん』と命名されています。看板メニューは、甘辛く煮つけた肉と、ゴボウの天ぷらがトッピングされた肉ごぼ天うどん。
創業地の近隣には製鉄所などが多く、そこの労働者たちのリクエストに応えるうちに、100種類以上のメニューを提供するようになりました。
さらに名物となっているぼた餅は年間450万個以上も販売されるほどです。現在では九州地区を中心に、利益率の高い800円台のセットメニューをメインとした72店舗が出店されています」
お店の雰囲気は?
「スタッフが少数精鋭で、効率良くお客さんをさばけるのが特徴です。働くおばちゃんの仕切りや接客への目配りが素晴らしい! おばちゃんたちが活気のある店の雰囲気をつくり、誰もが気軽に食事を楽しめます。これは、既存の飲食チェーンにはない、資さんならではの環境でしょう」
やはり気になるのが、うどんの味。これはどうでしょうか?
「だしは、さば節の風味が強く利いてパンチがあります。甘みもありますが、雑味はありません。麺に関しては、外側はやわいけど、芯は噛み応えのある独特のモチモチ感を楽しめる。それにだしをしっかり絡めて食べます。
キッチンカーで各地に限定出店したときも『出汁・意外と甘くない』『麺・意外とコシある』というキャッチフレーズで、言うほど"やわ甘"じゃないことをアピールしていますが、一般的にイメージするうどんや、人気の讃岐うどんとは別世界の食べ物といえるでしょう」
では、ご当地の北九州民にとってはどのようなチェーン店なのでしょうか?
「子供の頃は家族と行って、学生時代は友人と、そして社会人になったら普通に食事だけでなく、飲み会の2次会や3次会でも利用します。そして、ぼた餅とおでんでシメるのが地元の人間です」(ニュースサイト編集者・36歳)
え!? うどんは食べないんですか?
「飲んだ翌日の朝食や昼食で、資さんに行って食べます。で、仕事終わりに飲んだらまた資さんでシメる。正直、北九州で『シメはラーメン!』と言っているのは観光客。地元民は資さんです!」
これは、とんでもないリピート率! この高リピート率の理由とは?
「資さんの月内リピート率は8割を超えており、外食チェーンとしては驚異的な数字です。ほとんどの店舗が24時間営業かつメニュー数は100種類以上。通常の食事はもちろん、シングルで飲み、家族でも利用できる環境が整っているのがリピーターを生み出す大きな理由のひとつ。
製鉄所などの労働者のリクエストに応えていたら、どんな世代でも気軽に利用できる外食チェーンになってしまったのです」(前出・宮武さん)
では、ファミリーではどのように利用されているのでしょうか?
「小学生の子供をふたり連れて、4人で食べに行っても5000円以内に収まる(超重要!)。誰もが満腹になるので夕食は簡単なものでOK。正直、主婦目線だと思いっきり手抜きができますが、家族は誰も手抜きだとは思いません。むしろ、資さんに行けて喜んでいます。なので、週2回は通いますし、コスパはサイゼ以上です!」(主婦・43歳)
サイゼを超えるコスパって、そもそも資さんうどんのライバルは、丸亀製麺などのうどんチェーンなのでは?
「確かに、九州地区では同じうどんチェーンの『ウエスト』や『福岡 釜揚げ牧のうどん』がライバルです。しかし、全国展開となると、うどん以外のメニューも豊富であることから直接のライバルとなるのはファミレス。そして、飲み需要だと吉野家、日高屋あたりもライバルとなるでしょう。
ただ、吉野家には"牛皿+ビール"、日高屋には"ギョーザ+ビール"といった、わかりやすい飲みメニューが全国的に浸透していますが、資さんにはまだそれがありません。全国展開ではまず定番となるおつまみとお酒類のセットをお客さんにアピールすることも重要でしょう。
私としては、まずは"単品ごぼ天+ビール"をオススメします。無料で食べられる、つぼ漬けも十分につまみになります!」(前出・宮武さん)
では、在京の九州民たちは資さんの全国展開にどう反応しているのだろう。秋葉原でジャンクパーツショップ「秋葉原最終処分場。」を営む中川店長が語る。
「資さんの関東1号店は千葉県八千代市にオープンすることが決定しました。ここにはすでにウエストが出店していますので、今からハシゴするのが楽しみです。現在、秋葉原では丸亀製麺にインバウンドの方々が大行列しています。資さんには秋葉原にも出店して、ここから世界進出できると信じています!」
都内でカメラマンとして活躍する榊智朗さんも、「家族で行った初めての外食は資さんやったなぁ」と語る熱心なファンのひとり。そんな榊さんには、全国進出での懸念点があるという。
「福岡のラーメン店が、全国展開すると微妙に味や風味が変わるんです。なので、資さんのパンチの強いだしが全国で受け入れられないと、調整されちゃうかも!?ってことも考えてしまうんですよね。
実家での思い出の味だし、これからは自分の家族にとっても思い出の味にしたい。それを変えられるのは寂しいなぁ。
資さんの魅力って味だけでなく、いつ誰と行っても楽しいという安心感なんです。それに貢献しているのが、店を仕切るおばちゃん。これも全国展開したらなくなってしまうかもと心配しています」
確かに、東京で食べられるようになっても悪い意味で味変したら残念すぎますよね。
「資さんは公式SNSから頻繁に情報発信を行ないつつ、佐藤崇史社長自らアンケート募集をしたり、リポストで資さん投稿を拡散するなど、SNSをうまく活用しています。それもあってトレンド入りすることも多く、ヤフトピにも取り上げられています。
そんな企業だからこそ、味を変えたらSNSでどう炎上するかは理解しているでしょう。そして、おばちゃんに関しても、彼女たちを訓練する"プロおばちゃん"が存在していますから、こちらも安心です」(前出・宮武さん)
今回、資さんうどんは240億円という巨額買収ですが、これは安い、高い?
「正直、リスクは高いです。資さんうどんは良くも悪くも熱狂的なファンに支えられている飲食チェーンですので、実際に味が落ちてなくても、逆張り的に落ちたと投稿する人もいますから。そういった面では240億円はリスクが高いなと思いました」
現在、キッチンカーなどで各地に出店され、いずれも大行列の資さんうどん。これは全国制覇する日も近いかもです!
ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。